見出し画像

酒と雨と男と女

「酒が飲める女の子はいいよなぁ」
なんてセリフは飲みの席でなら良く出ると思う。わたし自身がそんなに強い方ではないので(強くなりたかったり、タバコだってカッコよく吸いたかったと思ったものだけどこればかりは)過剰に反応してしまうだけだから多分思ったほどは聞かないかもしれない。
別に私と比べられた訳ではなく飲みっぷりがいい女の子への賛辞ってだけなんだけど、たたみかけるように「飲めない子はだめだよ」なんて指差して言ってくるやつは心の中で処刑したい。
なんだかしっとりしたタイトルだけどお酒の話です。

そんな私も人生でお酒を飲んでいた時期というのがある。お酒が飲めるようになって味もわからず量だけ飲んでいた頃と、ほんの数年前のこと。
当時は訳あってガールズバーに夜な夜な通ったりしていて、多少のお酒と縁ができていたころだった。お店だとお酒が好きで強い人しか来ないのでご馳走してもらうこともあったからちょっと頑張って飲んでいたところがあって、義務感だった。


会社の催し事が桜の時期に目黒の雅叙園で行われるので懇親会の途中で抜け出しては目黒川の夜桜見物するのが楽しみだった。
今年はもう散ってしまったけどちょうど今頃の時期。
その日は趣味で意気投合した男性と珍しく夜に飲みましょうと約束をしていて中目黒の方まで2人で桜を見ながら歩いていた。今では考えられないけど花見で出店が沢山出ていて川沿いの地べたにに座ってみんなぎゅうぎゅうで花見(酒を飲む)をしている。お祭りのワイワイした感じが大好きな私は気分が良くなって桜色のシャンパンなど飲みだした。その日は雰囲気が明るくて楽しくて全然憂鬱じゃなかった。周辺のお店は予約でいっぱいだったので酔いが覚めるくらいには歩いて中目黒の1人じゃ絶対入れないやろ、なガチのバーに流れ着く。女性のお一人様から訳ありそうな男女、そしてマスターはそこそこの年齢だけどまだまだそうなグッドルッキングガイ。名前は忘れたけど本当に雰囲気がいいお店なので機会があったらまた行きたい。

一緒にいたその人は毎晩晩酌を欠かせない感じのいわゆる飲める人。あんまりお酒が得意じゃないことを伝えると飲みやすいですよとカクテル的なものを勧めて注文してくれた。一方でその人は強いお酒飲んでたなぁ。私は赤くなるけど全く飲めない訳ではないので度数の高すぎるものでなければ潰れて座り込むなんてこともない。飲めないと言っても酔って頭痛がしてくるあの感じが苦手なのであって、上手に飲めた日は瓶ビールならグラスに7杯くらいはいけるのだ。小さいグラスだけど。私にとっての飲酒は体調も関係するある意味ギャンブルなのである。

一杯目のカクテルは名前は忘れたけどとても飲みやすくて全身真っ赤になっていたけど楽しく飲める範囲だった。ニコニコして私飲める!と二杯目に勧められたレッドアイを飲んでいると
「飲ませがいがあります」と言われた。
ん?なんだか色っぽい言い方だな。
この時に私のMセンサーの方が「ん?」と反応したかもしれないけどそれよりも、酒が弱い飲めない=面白くないと思われると思っていたけど、面白がってくれている?となった。ここで一つ概念が崩れたのですよ。強い人弱い人とで「師弟」とか「指南する」みたいなそういう風な関係性もあるのか、と。

そうなってくると元来面白い人間になりたい私は美味しく飲めるお酒探しが楽しくなる訳です(単純)
その後は結局ワインバーもはしごして最終的にはコンビニでお酒を買って街を練り歩きながらいい大人が深夜まで飲んでおりました。雨の中。ありえない。
お酒云々よりもお酒が強くない私を面白いと思ってくれたことに有頂天だったのでしょう。
かわいいじゃないですか。
そもそも相手はそんなつもりじゃなかったんでしょうとは心の隅では思いつつ。

その後も度々美味しい料理屋さんを見つけては美味しいお酒を飲んで、たまにふざけてすごい強いお酒を勧めてきてこれは強すぎるわ!となったりしながら少しずつ私のレベルは上がり、1週間に2回は飲んでいるという弱めの常人レベルに昇格。

お蕎麦屋さんで日本酒飲み比べとかもしたけど割と日本酒は好きな方でお料理に合わせると少しずつなら普通に飲める。生ビールや炭酸はお腹いっぱいになるから少し苦手。ワインとシャンパンは少量にしておこう。
テキーラはライブハウスで一杯飲む分には雰囲気でOK。ウイスキーはまだよくわからない。
そんな風に適量が分かってきたのだ。

お酒が弱いと強い人に対して申し訳ないって気持ちになる。一緒に楽しめなくてごめんなさい、たくさん飲めなくてペース合わせられなくてごめんなさいって。お酒が強い人も自分だけお酒が進んでて楽しくないのかな?って気になるからお酒が強い同士だと気を遣わないでいい、そんな人がいいって言いたいだけだろうからお互い様なんだろうけど。
自分のペースでいいよって言ってもやっぱり飲める人とがいいかもしれない。それを飲めないけど気にしないで欲しいなんてのはこちらのわがままなのだ。分かってる。
うーん相容れない。どう考えても相容れない。飲めない私を受け入れてくれというのはお前も訓練して飲めるようになれよと言っていることと変わらない気もする。
性格や気質と一緒でお互いに努力ではどうにもならない部分もあるのだから。


私はその人の話が面白くて好きだった。そこにお酒が付いていたみたいなもんだ。たまたま私の飲めなさと未開拓さを面白がってくれたから
その場に出たカードを考えると相性が良かったし、私も変な遠慮や罪悪感がなかった分楽しかった。飲めても飲めなくても飲んでいて楽しい人と飲むのがいいというのが私の結論だ。
その後私に彼氏が出来たので飲みに行く回数は減っていってそれに比例するようにあまりお酒は飲まなくなった。
飲まなくてもいい人達と居ることが多くなったからかもしれないし、お酒を飲むと身体的なパフォーマンスは落ちるなと感じるので落ちてしまっても問題ない場面じゃないと飲めない、と保守的になったのもある。現実にもどってきたのだ。男女の恋などにおいてお酒は多少の後押しになるのだろうけど私の場合は2人で一緒にお酒飲んだらダメね。ダメ(笑)
それでも人生で1番楽しくお酒を飲んでいたあの頃はあの日花見をしていた目黒川沿いのお祭りのようにふわふわキラキラとしていて実に楽しかったという記憶。恋していたのかな。大人になったみたいで浮かれていたんだな。だいぶ大人だけどな。
お酒が好きな人は味もそうだけどあのふわふわした気分や高揚感みたいなものが好きなのかな。
多分お酒がなくても充分に楽しかったと思うけど人によって色々あるんだろう。私の頭で考えてもきっと分かりはしない。

最近は咳喘息だった事が発覚してお酒はあまり喉によろしくない、という理由を免罪符にお茶やジュースで乾杯している。
私とお酒はただそれを飲みたいから飲むというわけにはいかない間柄。好きな人たちとその美味しさを共有できないことは悲しい。
大阪で美味しいたこ焼きを食べながら飲んだレモンサワーは最高に美味しかった。だから本当にわからない。好きなのか嫌いなのかも。
誰と飲むか、何と飲むかが大事なのは人生と同じだなと無理矢理まとめに入る。

冒頭の話に戻り私を捕まえて「ダメだ」と言った大変無礼な酔っ払いは「お前みたいに自分は余裕だと思ってる奴ほど結婚できないんだよ」と今の時代なら多少訴えられるセリフを吐いた後(別に余裕とは思っていなかったけど余裕で結婚はしていない)
「俺飲んでて箸割ったことないんだよね(食べさせてもらってたから)」と言って甘えていたので私は死んだ目をしてそっと、割っていない箸を差し出したのでした。

この記事が参加している募集

よろしければサポートお願いします。 素敵な作品やサービス、文章を届けできるよう頑張っていきます!