見出し画像

東京で何に浮かれていたんだろう

リモートワークも半年以上になるともうだいぶ慣れていた。
今年に入ってからは引き継ぎがあるので1ヶ月ほど毎日出社していた。
あ、1月の末で仕事辞めたんですよ(最終出社が1月末ね)
最初のうちは満員電車を合法的に回避できるし
通勤時間を創作に費やせるので快適だったが、リモートに快適な環境を作りすぎて弛んできたところだった。毎日出社はもう辛いけど、たまにの出社は良き刺激になっていた。

渋谷の駅で降りて駅ビル内から外の世界に出る時に初めて外の世界に触れたように錯覚する。冷たい空気にハッとして「ああ、この感じ久しぶりだな」って思いだす。正確には「あの時」の気持ちは思い出せないけどこの冬の風の匂いが似ているなって。

このご時世五感が死んでいる人もまぁまぁいると思うけど、私の鈍くなっていた五感のうちで研ぎ澄まされているものがあるとしたら嗅覚かもしれない。記憶と匂いがしっかりと結びついている。付き合っていた男性の香水を多分きっと覚えているタイプ。
似た香りだと感じるけどそれでもやっぱり違うのである。うん、実に今を生きているっぽくていい。色記憶も記憶のほうが鮮明に残るそうだ。
好きだった香り、嗅ぐと切なくなる香りも今だったら同じではなく「似ている、けど違うもの」だと思う。


冬の匂いに私は思う。

東京で私は何に浮かれていたんだろう。

今日は誰と私は出会うのか
そんなことをいちいち頭の中に文字を浮かべて思っていた訳ではないけど、そんなことで色めきだっていた時があったな、そしてそれはそんなに昔の話ではないと体が感じていた。
イルミネーションの季節には特に街が異世界になる。
ありもしない恋が今日始まるような始めたくなるような、これは私の気質によるものかもしれない。

もう少し若い頃に夢を見ていたみたいな
スーツ姿の彼と会社帰りにデートとかは割と最初の方にしてみた。
まぁ悪くはないけど私はスーツを着て働かないような人に惚れてしまうことも多かった。学生の頃とかに漫画で読んだりした恋愛のイメージであれが大人の「普通」だと思いこんでいたから、OLになんてなりたくない!もっと変わったことしたい!とか言いながらOLになり、サラリーマンに恋して「まいちゃんは普通じゃない!どうして普通にできないの?」と人格否定され
「どうして友達みたいに普通の会社勤めの人と普通に恋愛出来ないんだ」と悩み自分を攻撃し、自身を失っていく様は私の人生そういう筋書きだってだけだけど狂ってた。

才能のある人が好きだし、そんな人の目にとまりたい欲が強い。
そうすることで自分は素晴らしい人だとか思いたかった寂しいやつ。
本当に好きで、身を焦がしてボロボロにもなったと思うけど人生を大きな視点で見ると傷ついてみて、本当に欲しかったものを見つけるための遊びに過ぎなかったのかもしれない。
そう思えるくらいの穏やかさを今は手に入れた。今までの時間が無駄だったかのようにも思えるけど、あの時確かに心は踊っていて、確かに何かに恋をしていて、いつの日も幸せな瞬間はあった。
懐かしんで、ほんの少し寂しい気がするのは
私がもうそこを飛び出して前に進んでいる証拠だろう。
すべての出来事に基づいた感情を手放して、経験として私の中に生きている。

最近20代の女の子と話をする機会があった。
とても美しくて太陽のような明るい女性。これからこの子は沢山恋をするんだろうな、って思ったら正直「いいな」って思った。
恋していたときのウキウキした気持ちを思い出して、またあれを味わいたいというような気持ちがあることに気がついたのだ。
こんな邪な気持ちが出てくるなんて、と思ったりもしたのだけど、私がそういう人間なのは承知の事実(笑)
なのでこの気持を見ることにした。
その子はこれから恋をする、そしてその恋がやぶれることもある。
話していてそこまでくっきり見えた。自分に正直で酸いも甘いも人生で味わい尽くすことを決めている彼女の魂は、無難な恋なんて許さない。
きっとボロボロになることもあると思う。
自分は?
私はそれをもう一度やりたいのか?
そう考えて出た答えはNOだ。

恋したときの高揚感は気持ちがいい。いい面だけ取ると。
私は不安な恋愛を多くしてきてひとつの答えを出したから
その不安な部分はもう味わいたくない。それが本音だった。
その答えはまた別の機会に書くことにしよう。

私は何度かあの気持ちよさと寂しさのジェットコースター、
あの切ないような心ときめく匂いや少し息苦しくなる苦しい空気を感じて遊んでいたんだな。本気で。
だって満たされている今もこんなに懐かしがっている。恋ってやつを。
何浮かれてたんだろうってなるよ。それぐらいに刺激的だったのさ。
とはいえ、恋なんてものはするものではなく落ちるものだと誰かがうまいこと言ってるけどそれはその通りだと思うのだけどね。
だけどできればもう、二度とあんな思いはごめんだな(笑)



白檀、夜の街のなんとも言えない息苦しさ、東京の街で溺れる体。
シャネルの香水の香り。

「似ている」って、ふふふって笑って後ろ髪惹かれたふりをしているのかな。こうして言葉にするために。

私も随分大人になったもんだ。




よろしければサポートお願いします。 素敵な作品やサービス、文章を届けできるよう頑張っていきます!