装震拳士グラライザー_設定集__4_

阿吽昇天 Part9 #グラライザー

第1話
「阿吽昇天:装震拳士グラライザー(68)」

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前回のあらすじ
 千寿菊之助は68歳のヒーローである。彼はかつての宿敵・人造人間リュウと協力し、襲いきたハイドロ帝国の怪人たちと戦いを繰り広げていた。
 戦も佳境に差し掛かり、グラライザーとカジキヤイバが激戦を繰り広げる中、コクリュウに追い詰められたイカオーガが最後のカードを切る。ハイドロ帝国の怪人たちを吸収し強大な力を得た巨大イカオーガとの最後の戦いが始まる、が──?

「おいジジイ。天国に行く準備はいいか?」

「……なんだと?」

 ──頼む。俺と一緒に、天国にきてほしい。

 脳裏を過るのは、出会い頭に言われたその言葉。海産物四天王と戦うのに忙しくて忘れていたが、そういえば最初はそんな話だったな。

「時間がねーから説明はナシだ。本来の予定とは違った形になるが、とにかくこれから天国に行く。ただし、地獄経由でな」

「あん?」

 俺が訝しむ一方で、イカオーガの身体はさらに変異していった。もはや言語ではない咆哮をあげるそいつは、今や10メートルほどの高さまで巨大化。サーベルを持った四本の腕と六本の触手がうねる様は、端的に言って気持ち悪い。

「おいリュウ、そりゃ一体どういう──」

「いいから。とりあえず、あいつを搔っ捌けば良い。簡単だろ?」

 俺の疑問の声を遮り、コクリュウは一方的に説明を切り上げる。そして剣を構えて巨大イカオーガを睨み上げた。

「いやいや待て待て。そんな簡単に──……うおっ!?」

 俺は慌ててツッコむが、それは巨大イカオーガのカジキサーベルによって遮ぎられた。振り下ろされた大質量に、大地が割れて土砂が吹き上がる!

「ああもう……!」

 俺とコクリュウは、回避の勢いのままに駆け出した。コクリュウの”作戦”を実行するにせよ、まず反撃の糸口を探さないとどうしようもない。

 並行して走る俺たちを、イカオーガは目で追って──サーベルを握った四本腕を振り回す! ドドドドガガガガガと派手な音と共に、巻き添えを食った周囲の建物が倒壊していく。

「いやいやいやいや! おいリュウ! お前この状況放り出してく気かよ!? 町がズタボロだぞ!?」

「それはさっき言ったろうが! 考えがある!」

「ホントにあるんだろうな!? 嘘だったらぶっ殺すぞ!」

「るせぇ! やってみろ!」

 まき散らされる破壊から逃げ惑いつつ、俺たちは怒鳴り合う。その最中、巨大イカオーガのイカゲソがこちらを向き──毒弾が放たれる!

「やべっ……リュウ!」「任せろ!」

 こちらが声をあげたとき、コクリュウは既に剣を構えていた。目にも留まらぬ斬撃と共に、真空の刃が放たれる! パァンッと派手な音がして、毒弾はいとも簡単に爆ぜ散った! が──

 毒弾の中にはぎっしりと、真珠弾が詰まっていた。

「「──ッ!?」」

 瞠目する俺たちに向かい、真珠弾が散弾銃めいて降り注ぐ!

 俺は咄嗟に跳び退き回避、コクリュウはマントを翻して防御する。衝撃が俺たちを揺さぶる中、巨大イカオーガが次なる攻撃に出る。

 GZGZGZGZGZZZZZZZ!!!

 そいつは嗤うような咆哮をあげながら、背負った砲塔から──図体に合わせて元の5倍ほどまで巨大化したそれから、特大の真珠弾を連続射出!

「「うおおおおおあああ!?!?」」

 ひとつひとつが直径2メートルほどはあろう砲弾が襲いくる。アスファルトが噴き上がり、そこここにデカいクレーターが形成される。隕石が降り注ぐような地獄めいた光景。俺たちは必死で地を駆ける。

 GGGGGGGZGZGZGZZZZ!!!

 巨大イカオーガの攻撃は続く。隕石めいた砲撃はそのままに、俺たちの行く手を塞ぐかの如く、サーベル持ちの触手が振り下ろされる!

「くそっ!」「ッぶねぇっ!」

 俺たちはギリギリのところでスライディング回避。更に追い討ちとばかりに横薙ぎに振り回されるサーベルを跳躍して回避し、俺たちは再び駆け出した。

 ──足を止めたら、やられる!

 駆け、跳ね、滑り、俺たちは雨霰と降り注ぐ大質量を辛うじて回避する。家々をぶっ壊しながら降り注ぐ毒液、真珠弾。そして巨大サーベル──

 ……キリがねぇ。

「ええい、こんチクショウっ……!」

 俺は毒づき──覚悟を決め、急ブレーキをかけた。ずざぁっと立ち上る砂埃をぶち破り、特大真珠弾が突っ込んでくる。俺はそれを屈んで躱すと、両の拳を構えた。

 ──GZGZGZGZGZZZZ……

 巨大イカオーガの目が俺を見据え、砲塔がこちらを向く。俺は目を細めながら、距離を取ったコクリュウへと声を投げた。

「……おいリュウ、ホントにうまくいくんだろうな!?」

「そうだな! ここで死ななけりゃな!」

「失敗したらぶっ殺すからな!」

「おめーこそ、歳のせいで押し負けんなよ! 70歳!」

「68だ!」

 ──GZGZGZZZZZZ!!!

 俺たちの怒鳴り合いを、巨大イカオーガの咆哮が遮る。狙いを定めるダイオウイカを睨みあげ──俺は大地を踏み締めた。

「スゥッ──」

 鋭く息を吸い、装震拳の甲を5連打する。

>>qqquake,quake,quake...OVER QUAKE UP

 直後、装震拳が猛烈に震動を始めた。装甲の全エネルギーを拳に集結させる、一発限りの大技。めちゃくちゃに暴れる拳を、俺はぐっと握り締め──その時。

 イカオーガの砲塔が、火を吹いた。

 極限まで集中した俺の視界に映るは、特大の真珠弾、その周囲に浮かぶ毒液、背後から迫る散弾真珠弾、そして両サイドから襲いくるサーベル。

 ひとつひとつの致命の一撃を前に、俺は大地を踏みしめ──

>>OVER MAGNITUDE

「墳ッッ──」

 音速の特大真珠弾を、殴りつけた。

 突っ込んできた戦車をぶん殴ったような衝撃が全身を貫く。後脚を起点に、アスファルトに盛大なヒビが入った。

 ギャリギャリギャリと耳障りな音を聞きながら、俺は歯を食いしばり、全身全霊をかけて拳を──

「──ッッッぬおらァッ!」

 振り、抜く!

 真珠弾が、震えた。極大の衝撃と共に、砲弾は元きた軌跡をそのまま辿って跳ね返る。毒液も散弾もはじき飛ばし、サーベルを持った触手のうち二本を引き千切り、それでもなお──止まらない!

 ──GZZZ!?!?

 真珠弾は俺の拳の勢いそのままに、巨大イカオーガのボディにめり込んだ。ヨモツの鎧がバキバキと音を立てる中──俺は残心もそこそこに、振り返る。

「かませ!」「応!」

 言いながら、俺はバレーボールのレシーブめいて手を組み、腰を落とす。全速力で走ってきたコクリュウは、そこに足を乗せ──跳躍!

>>qqquake,quake,quake...OVER QUAKE UP

 次いで吼えるはコクリュウの剣! 装震エネルギーの最大解放。迸る黒き稲妻が、巨大な剣と成って天を衝く!

 ──GZGZGZGZGZZZZ!!!??

「地獄で、寝てろ!」

 咆哮をあげるイカオーガに怒鳴り返し、コクリュウはその力を解放した。

>>OVER MAGNITUDE

「装震剣・覇王一閃!」

 長さ10メートルはあろうかという大剣が、巨大イカオーガを──両断する!

 ──GZGZGZGZ……ゲソゲ……ソゲ……

 唸り声が、消えゆく。巨大怪人の体内で、装震エネルギーが暴れ回る。黒き稲妻を吹き上げながら、怪人の身体が傾ぎ──そこで、コクリュウが声をあげた。

「グラライザー! ビンゴだ! 開くぞ!

 ──直後。

 巨大イカオーガの身体が、ブラックホールと化した。

(つづく/次回で第1話完結です)


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