装震拳士グラライザー_設定集

阿吽昇天 Part3 #グラライザー

第1話
「阿吽昇天:装震拳士グラライザー(68)」

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前回のあらすじ
 装震拳士グラライザーこと千寿菊之助(68歳)は、50年前に倒した悪の総統・人造人間リュウに「一緒に天国にきておやっさんを助けてくれ」などと頼まれて困惑していた。
 そんな時、30年前に壊滅させたはずの別の組織ハイドロ帝国の四大怪人が現れ、菊之助とリュウを襲撃する。二人は応戦し、一時は圧倒していたが──?

「ゲェッシャアアア!!!」

 イカオーガのその身から、膨大なエネルギーが放出された。周囲の民家の窓が割れ、電信柱が傾き、アスファルトが抉れる。相当な破壊力だ。爆心地にいたら流石にヤバかった。

 放出の余波に揺さぶられ、道端でノビていたシャチデビルが目を覚まして起き上がる。

 2対1に逆戻りだ。俺はひとまず退避とばかりにバックステップして、そいつらから距離をとった。と──

「よぉ、苦労してんじゃねぇかグラライザー。歳のせいか?」

 そう言ったのは、同じく間合いを取ってきたリュウだった。あちらも多少苦戦しているらしい。

「……そっちこそ、天国で鈍ったんじゃねーだろな?」

 煽り返し、俺はリュウと背中合わせで拳を構えた。そして敵を睨み──そこでふと、気付く。

 怪人たちの体から、血色の煙めいたものが立ち上っている。

「ゲソゲソゲソ……気付いたかグラライザー! だがもう遅いッ!」

 俺が眉を顰めたのに目ざとく気付き、イカオーガが哄笑した。立ち上る血色の煙は見る間にその量を増し、怪人たちの身体を赤く染めてゆく。

「見せてやろう……我々の新たな力を!」

 イカオーガの宣言と共に、四体の怪人は雄叫びを上げる。吹き荒れる暴風。立ち込める血の匂い──不意に現れた地獄の嵐の中で、四体の怪人は目をカッと開くと、同時に叫んだ。

「「ヨモツ・ヘンゲ!!」」

 直後、怪人の身体が赤き光を放つ。光は血色の粒子へと姿を変え、怪人たちの全身に群がるように旋回、その速度を上げてゆく。

 イカオーガの身体にはのっぺりとした金属鎧がまとわりつき、その10本脚全てを余すことなくアームカバーが覆いつくす。

 シャチデビルの流線型の身体には甲殻類を思わせる装甲が装着され、手にした銛は棘を備えてより殺意の篭った形状に変質した。

 カジキヤイバは西洋甲冑めいた鎧を纏い、両手と鼻先の刃はノコギリめいて真紅の細かな刃を備え、禍々しさを増す。

 ウィッチアコヤの身体は二枚貝を思わせる流線型の装甲に隠れ、その背から二丁の砲塔が生え出でた。

「……こいつは……」

 俺は目を細める。怪人たちのパワーアップはこれまで何度も目にしてきた。しかし今回のヨモツ・ヘンゲとやらは、これまで俺が見てきた怪人のパワーアップとは毛色が違った。

 まるで全身が機械化するような──否、違う。これは……

「……ヒーローの、変身か?」

「ゲーッソゲソゲソ! これがヨモツの力! 我々を破ったヒーローをもとに作られた強化鎧! 人呼んでヨモツアーマーだ!」

 イカオーガは全身の装甲をガシャガシャ言わせながら高笑いし、俺たちを指差して言い放った。

「さぁグラライザー、そしてそっちの人造人間! 刮目せよ!

 その言葉に合わせるように、渦巻いていた負エネルギーが爆発! それを背景に、四体は声を揃えて宣言した。

「「ヨモツの導きにより、貴様らを排除する!」」

「……そこはジオセイバーのパクりなのか」

 半目で言った俺のツッコミは、爆発音に流され届くことはなかった。ちなみにジオセイバーの決め台詞は「大地の導きにより〜」だ。

「ゲッソゲソゲソ〜〜〜! 言っちゃった言っちゃった!」「大地の導きでぶっ殺ーす!」「これ結構気持ちいいわね!?」「ウム、悪くない」

 口々に言い合う海産物四天王。なんともまぁ余裕なことだが……確かに先ほどまでとは段違いのエネルギーを感じる。その自信は伊達ではなさそうだ。

 と……その時、俺の背後でリュウが訝しげに呟いた。

「ヨモツ……黄泉国(よもつくに)のヨモツか?」

「恐らくな。おやっさんの件と無関係じゃあるめぇ」

 リュウに答え、俺は肩をぐるりとひと回しする。はしゃぎ終えた海産物四天王が戦闘態勢を取るのを睨みつけ、リュウに声を投げた。

「さてと……リュウ。お前まだ変身できるのか?」

「当たり前だ。そっちこそ70歳でやれんのか?」

「まだ68だ」

「誤差だっつの」

 言い合いながら、俺は装震拳グランナックルの甲にあるボタンに、リュウは装震剣グランセイバーの柄頭に手を添え、押し込む。

>>Ground-Rise,Ready.
>>Dragon-Rise,Ready.

 ドシュンッと響く音の後、装震の武器たちが淡々と言葉を発するのを聞きながら──俺たちは怪人たちに言い放った。

「そっちがそうくるなら、こっちも変身だ」

 俺は右拳を、左の手のひらに打ちつけて。

「地獄に叩き返してやる」

 リュウはその剣を、大地に強く突き立てた。

「魂を、震わせろ──」
「怖れ、震えよ──」

 そうして背中合わせのまま──同時に、叫ぶ。


「「グラライズ!」」


 瞬間、世界が震えた。

 大地が、大気が、大空が震撼し、発生したエネルギーが光の粒子となって俺たちの身体を取り巻いてゆく。定着した光は超震動と共に強く輝き、装震装甲へと姿を変える。

>>GRAND-RISER......QUAKE UP

 グランナックルの宣言に応じ、革に近い質感の鎧が俺の身体を包み込んだ。次いで、金色の兜、胸当て、肩当て、そして重厚なグリーブブーツが顕現する。

 ウエストクロスがバサリと伸びて、光の粒子が宙を舞う中──俺は大地を踏みしめて、両腕の重厚なガントレットを打ち合わせた。

「拳・震・入・魂! 装震拳士、グラライザー!」

>>BRACK-DRAGON......QUAKE UP

 一方、グランセイバーの宣言と共にリュウの全身を覆ったのは、漆黒の重鎧だ。複雑な細工が施されたフルプレート・アーマー。その左右の肩口に顕現するは獰猛なる龍の意匠。黒一色のその身体で、同じく龍を模した兜の目元だけが赤く輝きを放つ。

 仁王立ちで地を踏みしめ、漆黒のマントをはためかせ──三つ首龍の騎士は、手にした剣を打ち振るった。

「龍・震・当・千……装震覇王、コクリュウ」

 余剰エネルギーが巻き起こす爆風の中、装震の武器たちが打ち震える。

 金色の拳士と黒き覇王は、背中合わせのまま得物を構え──そして同時に、言い放った。

「「震えて、眠れ」」

 戦いの幕が開く。

(つづく)


◆宣◆
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