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セレベスト織田信長:そこにはヒーローがいる

 ジェントルメン中村氏が描く、セレベスト織田信長という漫画をご存知だろうか。
 セレブの上をいくセレブ、セレブの最上級”セレベスト”たちが、己の威信をかけた決闘”おもてなし”を通して相手を贅の坩堝に沈めてゆく、モスト・ラグジュアリー・バトル漫画である。
 Pixivコミックではこう書かれている。

今最も熱く、最も「織田信長」に関係が無いラグジュアリー・バトル・アクション!!

 言い得て妙である。


 WEBマンガ総選挙2018において、燦然と輝いている暑苦しい表紙の作品。それこそセレベスト織田信長である。

 見るからにダークホース。10m先からでもわかる
 しかし中間発表の時点で、並み居る強豪を掻き分けて第5位にランクインするという上等(ハイクラス)なプレイをかまし、ファンを驚かせている。

 その汚い(褒めてる)画風・絵面や、トンデモ贅沢描写などもあり、イロモノ枠としてバズっているところが多分にあるのは否めない。
 しかしながら、私はセレベスト織田信長は正当かつ王道なヒーローものだと思っているし、ストーリー的にもイロモノ一発屋ではない強さを持っていると感じている。
 セレベスト織田信長は単なるイロモノではない。そこにはヒーローがいるのだ。

織田信長という男

 財団法人「第六天魔」会長。セレベスト生活50年。自社ビルの最上階から立ちションをしたり、昼寝をするために山手線(作中では山毛線)を借り切ったり、寒い日に焚き屋敷(たきび)をしたりととにかく豪快なセレベストであり、そして全てのセレベストを破り頂点に立つことを夢見る、この作品の主人公だ。


 この作品は、彼が様々なセレベストたちからの”おもてなし”を受ける様を見ながら、その”おもてなし”のトンチキさに笑い、それを打ち破る信長に笑い、汚い絵面に笑い、そして最後にほっこりする漫画である。

 さて、前述した通り、この作品にはヒーローがいる。それこそがこの織田信長だ。

 私は、ヒーローは以下の3点が重要だと思っている。
 ・どんなに追い込まれても必ず勝つという信頼がある
 ・戦うことで人々を奮い立たせる力がある
 ・戦いを通して人々を救ってみせる

 セレベスト織田信長という作品の主人公、第六天魔王・織田信長にもその要素があると私は思う。
 というか、彼ほどバッチリ条件を満たしたヒーローはコブラかバーフバリくらいだと思う。
 信じてほしい。そこには間違いなくヒーローがいる。

絶対、余裕で勝つヒーロー

 信長は、プロレスラーが全ての技を受けて耐えてみせるのと同じように、全ての”おもてなし”をまずは味わい、楽しむ。
 ”おもてなし”を「受ける」のではなく、前向きに「楽しむ」。それは信長が「本気を出せばいつでも勝てる」という自信に溢れているが故だ。
 彼は相手の”おもてなし”を受け入れ、楽しんだのち、それよりも上等(ハイクラス)な代物を出し、勝利する。
 ここでいう上等(ハイクラス)とは価格だとか希少価値だとかそういうものではない。ちょっとした発想の転換、切り口の違い、そして時には類稀なる幸運を以って勝利する。
 それは『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドバトルのようでもあり、『バーフバリ』や『コブラ』のような絶対強者のようでもある。
読む者は「さぁ次はどうやって勝つんだ?」という、”勝つ”前提のワクワクを与えられ、そして信長の叩き出すスケールの違う”答え”に度肝を抜かれ、感服する。
 彼は絶対的なヒーローなのだ。

負けた者を奮い立たせるヒーロー

 信長は敵の鼻っ柱を折るだけではなく、窮地に追い込まれた味方を鼓舞する。
「こいつのおもてなしは確かにすげぇ。だが、俺のほうがもっとすげぇ。だろぉ〜?」と言わんばかりのその様に、一度敵に破れた味方も勇気を取り戻す。
 そうして勝利を掴み取り、最後は必ず心強い笑顔を見せてくれる。
 さらに、打ち破った敵に対しても、「だがお前のおもてなし、よかったぜ!」などと最高の笑顔を向けるのだ。
 人々は自然と彼を慕い、その背中にラグジュアリーを見出す。
 その背はヒーローそのものである。

人々を救うヒーロー

 基本的に”敵”として出てくるセレベストは多かれ少なかれ人を人と思わぬ手段でおもてなしを仕掛けてくる。


 脇から生えたキノコを食わせようとしてくるやつとか。
 港から都心までの国道の権利を買い占めて運河に変えたりとか。
 甲子園決勝を翌日に控えた高校球児を誘拐してボルダリングの石にしてみたりとか。
 グレゴール・ヨハン・メンデルにそっくりの人々を誘拐しメンデルと同様の生活を強要してメンデルのそっくりさんを量産するだとか。
 なんかもうネタバレになる上に情報量が多すぎて文字にできる気が微塵もしないのでこれ以上は省くが、金にものをいわせて非セレベストの人々を”おもてなし”の踏み台にするセレベストが多数登場する。

 逆に信長の行う”おもてなし”は、作中では数は少ないもののどれも誰も不幸にならないものだ。竜巻の遠心力で作ったわたあめ食べてハッピーとか、生肉スーツを身に纏って追いかけられるのが趣味な人を獲物として狩り体験をさせたりとか。彼は人を傷つけずに人を”おもてなし”し、マウンティングする方法を熟知している。

 信長はそれでも、そんな敵の非人道的な”おもてなし”を否定しない。まずは全てを真っ向から受け止め、楽しんだ上で、敵を叩き潰し、さらに踏み台となった被害者たちをも救うのだ。

 そして、救うだけではない。
「俺がパトロンになる。お前たちよ! 舞うのだ!」「よし! 俺が後援してやる!」とかさらっと言ってのけ、”おもてなし”の踏み台にされた人々のその後の人生すらも保証するのだ。
 ここまでの芸当は普通にヒーローやってる人でもなかなか難しい。しかし、彼はやってのける。なぜか。それは彼が織田信長だからである。
 彼は”おもてなし”で敵に勝つだけではない。
 彼が勝つことで、たくさんの人を救う、ヒーローなのである。

そこにはヒーローがいる

 Webマンガ総選挙の始まる少し前。セレベスト織田信長を読みながら、私は冗談めかしてこんなことを言っていた。
 でも冗談めかしてるだけで結構本気でそう思っていたし、今もそう思っている。
 そこにはヒーローがいる。
 そして、ヒーローに勇気づけられ、前に進む人たちがいる。

 セレベスト織田信長はヒーローものである。
 絵面はアレだけど、ヒーローものなのだ。

Webマンガ総選挙にて投票受付中!

 8月6日まで投票受付中でございます。興味を持った方はぜひポチッとお願いします。
 ちなみに1位になると新宿にどでかい看板が立つそうです。見たくないですかその光景。新宿が信長るの見たくないですか?

セレベスト織田信長
作者:ジェントルメン中村(@gentlemennkmr
連載URL:http://leedcafe.com/webcomicinfo/selebest-odanobunaga/
Pixivコミック(期間限定で無料!):https://comic.pixiv.net/works/4861

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