_装震拳士グラライザー_設定集

阿吽昇天 Part2 #グラライザー

第1話
「阿吽昇天:装震拳士グラライザー(68)」

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前回のあらすじ
 千寿菊之助は68歳のスーパーヒーローである。ある日、50年前に倒した悪の総統・リュウが復活し、「おやっさんを救うために一緒に天国に来てほしい」と言い出した。
 戸惑う菊之助。しかし考える間もなく、新たな刺客が現れる。
 ……それは、30年ほど前に壊滅させた組織の怪人たちであった。

 ハイドロ帝国。それが、イカオーガとシャチデビルの所属する組織の名だ。

 今から30年ほど前に地上支配を掲げて侵攻してきた連中で、その実態は「古代ムー帝国」の超テクノロジーで海洋生物と融合した古代人だ。

 同じくムー帝国の遺物を借りて変身する男、崎守大地こと大地守護士ジオセイバーが当時の主担当ヒーローで、日夜戦いを繰り広げていた。が──

 ……流石に、"帝国"を名乗るだけあって結構デカい組織だ。ダイチひとりでは限界があり、俺や他のヒーローも何度か戦いに参加し、最終決戦の手伝いに行ったりもしたわけだ。

「ゲソゲソゲソ……ここであったが百年目。グラライザーよ、今日こそ刺身にしてやる!」

「今度は、殺ーす!」

 特にイカオーガとシャチデビルは最後の戦いで俺が直接ボコボコにした連中だ。恨みひとしおと言ったところだろう。

 ……などと考える俺の横で、リュウが刺さった剣を引き抜き、担いだ。

「あの軍勢……天国襲撃のときにも居た奴らだ」

「なるほど。要はお前の邪魔をしにきたのか」

 会話と共に、俺は拳を、リュウは剣を構えた。10メートルほど向こうで進軍を止めたイカオーガはゲソゲソと笑い、その横でシャチデビルが雄叫びを上げる。

 その様子を見て、ふと俺を嫌な感覚が襲った。

 ──記憶違いでなければ、こいつらは四人組だったはずだ。

「おい、リュウ」

「あん?」

「跳べ」

 言うやいなや、俺は装震拳グランナックルを装着した右拳で地面を突いた。刹那──

 大地が、揺れる。

「「「ヌゥッ!?」」」

 装震拳によって引き起こされた、超局地的かつ瞬間的な地震。その震度は7を超える。怪人の軍勢が足を取られ膝をつく中、俺は目を瞑って意識を集中させ──

 ──見つけた。

「……リュウ。そこの自販機の裏と、3時方向の赤い屋根の上。任せるぞ」

「なるほど、任せろ」

 魔法で空中浮遊していたリュウは、その言葉を受けて宙を蹴った。

 砲弾のような速度で件の自販機に肉薄し、リュウの剣──装震剣グランセイバーが空を切り、自販機を真っ二つにしたが──ギンッと鋭い音と共に、その剣は止められた。

「ぬぅ、見つかったか……!」

「……天狗?」

「カジキだ!」

 人間めいた身体にカジキマグロの顔を据え付けたような怪人。鼻先は刀のように鋭く尖っている。

 両手に持ったサーベルでグランセイバーを受け止めたその怪人は、カジキヤイバ。イカオーガと同じハイドロ帝国の怪人である!

 ──その様子を横目に、俺はイカオーガとシャチデビルに向かって地を蹴った。

「こっちも行くぜ。今夜はイカとシャチのタタキだ」

「っ……か、かかれィッ!」

 イカオーガが手を挙げて、軍勢に指示を出す。藁人形の一団がわさわさと躍り出てきたが──

「薄いッ!」

 全速力からの、踏み込み。大地の反作用、慣性、全身の筋力、関節、バネ、全ての力を拳に集め、放出するイメージ。

 装震拳グランナックルが──吼える!

 次の瞬間、10体の藁人形は粉微塵に吹き飛んだ。余波でイカオーガが吹っ飛び、シャチデビルが雄叫びをあげる。

 藁人形ズの灰塵をかき分けて、シャチデビルの銛が迫る。拳を開き、銛先を手首の回転で受け流すと、俺は体制の崩れたシャチデビルに左拳を叩き込んだ。

「ずおりゃぁっ!」

「ウゴーッ!?」

 ──その頃、カジキヤイバと切り結んでいたリュウは、全身から黒い霧を発生させていた。黒霧はぞわぞわと蝙蝠めいた形を為し、「赤い屋根の家」へと飛び立つ。

「なっ……!?」

 声をあげたのは、そこにいた女怪人である。得物を振り回して応戦する彼女の周りを、黒霧の蝙蝠が旋回。しばしの混戦ののち、ついに屋根の上から放り出した。

 そいつは両肩と腰が二枚貝に置換された人間……といった様相の怪人であった。アコヤ貝の怪人、その名もウィッチアコヤだ。

「っ……ばかな、もう見つかっただと……!?」

 ウィッチアコヤが無様に着地したその隙を見逃すリュウではない。カジキヤイバに蹴りを入れて斬り合いを強制キャンセルすると、即座にそちらに飛びかかった。

「チィッ……!」

 慌てて地を転がったウィッチアコヤの真横に、グランセイバーが突き刺さる。女怪人は起きざまに真珠色の弾丸を射出、リュウを襲う!

「甘い」

 リュウはそのままグランセイバーを大きく振り上げ、風圧だけで真珠弾を無効化。さらに、振り抜かれた剣は後ろから斬りかかってきたカジキヤイバの喉元にビタリと当てられ、その動きを牽制した。

「……弱いなお前ら。三下か?」

「ッ……うるさい! 私はハイドロ帝国四天王の紅一点! ウィッチアコヤ様だ!」

 ヒステリックに叫んだウィッチアコヤは、両肩の貝から大量の真珠弾を射出。サブマシンガンめいて襲いかかるそれらを、リュウは身を翻して回避する。

 ──一方その頃、俺はイカオーガのトリッキーな8本足コンビネーション攻撃をいなし続けていた。ちなみにシャチデビルは道端でノビている。

 イカオーガの触手はその一本一本に毒がある。俺は傷つけられぬよう慎重に、しかし確実にそれらを叩き落としていく。

「ぐぬぬぬぬぬ! なぜだ! なぜ当たらん!」

「ハン。若造にゃ30年ばっかし──」

 痺れを切らしたイカオーガが8つの触手で一斉に攻撃してくる。俺はその懐にひと息で踏み込み、ガラ空きになった身体にショートフックを叩き込む。

「早えよっ!」

「オゴフォッ……!?」

 怪人の身体が軽く浮いた。すかさず右拳をひきしぼり、俺はトドメの一打を──否。

「……!」

 俺は直感で、その場から飛び退いた。刹那。

「ゲェッシャアアア!!!」

 イカオーガのその身から、膨大なエネルギーが放出された!

(つづく)

ハイドロ帝国の設定は無銘さんに考えていただきました。水棲生物、特撮、そしてパルプへの深い造詣が合わさってめちゃくちゃいい感じの胡乱さと強さを持った最高の敵が生まれました。ありがとう無銘おねーさん!

◆宣◆
制作本舗ていたらくでは、ていたらくヒーロータイムと銘打ってオリジナルヒーロー小説を多数お届けしております。他にもコラム書いたり記事紹介したり盛りだくさん。新鮮な記事を毎日お届け! しようフォロー!

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