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『月の兎はヴァーチュアルの夢をみる』再考 〜2021年月ノ美兎まとめ 音楽編〜

さて、本当は時間的に書く余裕はないんだけど何だか書きたい気分になったので、前回書いた2021年月ノ美兎まとめの続きで、音楽編を特出しで書きます。
以下のマガジンの記事の2本目です。

委員長は2021年、本当に歌とライブに明け暮れたと言ってもいい1年でした。主だったイベント・トピックだけでも書き出すと、

  • 1/30 「VTuberFes」DAY1 出演(2曲)

  • 2/28 「にじさんじ 2nd Anniversary Festival」出演(8曲)

  • 4/3 「V-Carnival」 DAY1 出演 (2曲+MC)

  • 7/17 「YouTube Music Weekend スペシャルライブ」出演(5曲)

  • 8/1 ARライブ「Light Up Tones」DAY2 出演(5曲)

  • 8/11 1stアルバム「月の兎はヴァーチュアルの夢をみる」発売

  • 9/11 静凛ソロイベント「Recollection」出演(2曲)

  • 9/27 月ノ美兎誕生日ライブ 出演(11曲)

  • 10/31 1期生ライブ「Initial Step in Nijisanji」出演(8曲)

  • 11/16 1stワンマンライブ「月ノ美兎は箱の中」出演(16曲)

  • 12/31 「NJU歌謡祭2021」出演(2曲)

ということで、とんでもないペースでイベントに出演して歌っています。
委員長のこれまでの外部イベント出演はトークが中心で、歌での出演はそれに比べれば多くはなかったんですが、2021年は自身の1stワンマンライブ含め、突出して多かった印象です。
しかも、ARライブ以降にじさんじ全体がダンスに力を入れ始め、委員長も今年はダンスにハマって急激に上達するなど、ライブパフォーマンスのクオリティも急上昇した年でもありました。
(なお1ファンとしては、キレキレのダンスを踊る委員長には解釈違いがないわけでもない)

こういったライブの中でもし初見の人にオススメするとしたら、9/27にあった誕生日ライブでしょうか。他のライバーとのデュエット曲中心ながら念入りに準備されたものばかりで、また半数が彼女のウクレレ弾き語りで、委員長の歌の良さが存分に味わえます。
そして、なんせ無料だし。

また、最近無料公開された「ray」(「Light Up Tones」より)もやはり書いておくべきでしょう。
BUMP OF CHICKENが初音ミクと――初めて生身の人間のバンドがボカロとコラボしたこの曲をvtuberがカバーした、という意味でも記念碑的なパフォーマンスです。
AR技術を駆使しているステージで、技術的にも凄いものを観せてもらえます。

あと、早くソロライブの円盤を出してくれ。

さて、2021年も終盤に差し掛かって、ちょっとした変化が起きました。
委員長のアルバム「月の兎はヴァーチュアルの夢をみる」がvtuber界隈の外で話題になるようになりました。「月ノ美兎知らないけど」とか「vtuber知らないけど」っていう人達の間で委員長のアルバムがちょっとバズってるっぽいです。
vtuberを知らない父親がV好きの娘に委員長のアルバムを薦めてくる、なんて逆流現象も何度か自分の周囲で見聞きしました。

震源地はどうやら、ミュージシャン兼UUUM所属YouTuberのみの氏のようでした。
最初はこの動画。サムネにも委員長のアルバムのジャケットが写ってます。

海外の音楽レビューサイト「Rate Your Music」に邦楽のアルバムが多数ランクインしている、という話題の中で委員長のアルバムも取り上げられました。

このときはみの氏も「現象を面白がっている」といった感じでしたが、本当に年末の12/29に上がった動画では、みの氏自身が委員長のアルバムにハマってしまった模様。
2021年のベストアルバムとして取り上げた中でも特出しで最後に紹介し、激賞しています。

この動画内でのアルバム評で個人的に嬉しかったのは、委員長のヴォーカルを高く評価してることです。

何より月ノ美兎の声がいいですね。
俺このアルバムの魅力って何なんだろうってずっと聴きまくってて思ったんだけど、サウンドプロダクションのドープさとか制作部分の裏方と歌手がこう、ちょっと離れてるっていうメタ的な楽しみ方とか、そういうのももちろんあるんだけど、やっぱシンプルに声がいいんですよね。

https://youtu.be/hKFJmOfbhXM?t=878

このアルバムは作家陣が豪華っていうので発売前から話題にはなってたし、実際出てみると本当に名盤なんでオタク界隈での評価はそこそこあったんだけど、たまに聴こえてきたのが「これでボーカルが〇〇だったらなぁ(〇〇には適当な歌うま系vtuberや声優が入る)」みたいなこと言うオタクの声で、そういうの耳にする度にげんなりしてました。いやいや、このアルバムの完成度は月ノ美兎のヴォーカルあってこそだろうがよ、ってツッコみたい気分でいっぱいでした。
例えば「浮遊感UFO」のあの浮遊感はトラックの音作りもそうだけど、委員長のあのフワフワした歌声もあってこそ成り立っているので、技巧派の歌うま系を連れてきたからってあの味は出ないわけです。
オーケンもTwitterやら色んな所で彼女のヴォーカルを褒めてるけど、決してリップサービスだけじゃないと思います。

自分のその評価は月ノ美兎のファンである前に1人の音楽好きとしての評価だったんだけど、でも「それはファンとしての欲目でしょ」と言われたら自分の立場では返す言葉がなかったんで、音楽批評家としても評価の高いみの氏が客観的な立場できちんとヴォーカルを褒めてくれたのは本当に嬉しかったです。
みの氏が動画の中で「神輿」という言葉を何度か使っているけど、神輿たるにも神輿としての器が必要で、彼女はその器を持ち得たんだってことですね。

一方で、みの氏の評価にも100%同意できる、って感じでもなかったりします。
それは「制作の裏方と歌手が離れてる」って言うところで、一見それはそうなんだけど、そう言い切ってしまうと語弊があるというか(みの氏はわかっていたとしても)視聴者の誤解を招きそうだな、と言う気がしています。
というのも、

  1. 最近のアニソンのプロダクションはドープなものも多い

  2. 作家陣のチョイスにはかなり月ノ美兎の影響が大きい

といったことが言えるからです。

1つめに関しては……こういったら失礼にあたるのかもしれないんだけど、もしかしてやっぱりみの氏はあんまりアニソン詳しくない? のかな、って思ったりしました。
以前ちらほらとアニソンの歴史とか、一昔前のアニソンの名作を動画で紹介したりはしていたけど、ここ10年くらいのクラブミュージックがどどっと流れ込んできてるトレンドとか、そのおかげで尖ったトラックメイカーが多数アニソン界隈で暴れてることとかまではあんま把握してなさそう。いや、わかんないですが。
(余談ですが、みの氏は同じvtuberの樋口楓さんに以前楽曲提供しているけど、樋口楓と月ノ美兎の関係もあまり知らなさそうな雰囲気でしたね)

2つめも、制作陣のクレジットだけ見たら、あの豪華な制作陣は「プロデューサーが勝手に連れてきたんだろうな」という印象を受けるのは当然だし、プロデューサーの力量が大きかったのは間違いなくそうなんですが。
でもプロデューサーは単に良い作家を連れてきたのではなく、「月ノ美兎の趣味」を参照していた可能性が非常に高いです。
(今手元にないけど、2020年の「にじさんじアーカイブス」でのインタビュー記事でそんな話が書いてあった気がする)

実際、アルバムの各楽曲の作家陣と委員長との関係は以下のような感じ。

  1. 「月の兎はヴァーチュアルの夢をみる」 … 委員長は作詞作曲・ASA-CHANG&巡礼がEDテーマを提供したアニメ「悪の華」が好きで、そのテーマ曲「花 -a last flower-」を何度かカバー(?)している

  2. 「それゆけ!学級委員長」… 恐らく委員長自身のオファー(委員長が作詞作曲のササキトモコを崇拝している)

  3. 「ウラノミト」… 作詞・只野菜摘は、委員長が大好きなアニメ「さよなら絶望先生」シリーズにキャラソンの歌詞を多数提供しており、委員長は「絶望先生の曲で良いと思った歌詞はだいたい只野さん作詞」でファンになった、と過去の配信で表明している
    & 作曲・広川恵一はゲーム「アイドルマスター」シリーズへの曲提供で好きになった作曲家であることを以前noteで表明している

  4. 「光る地図」 … 作詞作曲・長谷川白紙へは委員長自身が過去にオリジナル曲を依頼したことがある(大人の事情でボツになった)

  5. 「浮遊感UFO」… 作詞・大槻ケンヂ、作曲・NARASAKIのコンビは「さよなら絶望先生」シリーズにテーマ曲を何曲も提供している。委員長は同アニメの大ファンで、ライブで何度か彼らの曲をカバーしている

  6. 「みとらじギャラクティカ」… 作詞作曲のIOSYSへは委員長自身がオファー

  7. 「部屋とジャングル」 … 作詞作曲・堀込泰行が昔所属していたキリンジのファンだったことを委員長が過去に配信で何度か表明している

  8. 「ウエルカムトゥザ現世」… 不明

  9. 「NOWを」… 不明

  10. 「Moon!!」… 元々ファンメイドの曲&編曲のAvec Avecへは委員長自身がオファー

ということで、ここに名を連ねる多くの作家陣が元々アニソンに関わっていて、また元々委員長のお気に入りだった、ということが見て取れます。
僕が知る限り委員長との関連が不明だったのは8と9だけです。4の長谷川白紙もオファーが被ったのは実際には偶然らしいんだけど、ただ委員長自身がオファーしたことがある事から伺えるように、委員長のプロデュースを考えたら真っ先に思いつく人選の1つではあるかな、と思わなくもないです。曲の方向性的にも、最近アニソン界隈やvtuber界隈で活躍するトラックメイカーの人達とも近しい距離にいるようにも思えるし(実際にそのへんの人達と親しそう)。

じゃあ何故、アルバム「月の兎は〜」がそんなに評価される方向に行ったかと言えば、ポテンシャルを持った実力派の作家陣を揃えたこと以上に、そういった作家に自由に作らせたことだと思います。みの氏もこの辺で言及しているけど、敢えて落ち着く方向にまとめようとせず、尖った作家陣に尖ったまま作らせて、個性のごった煮みたいな方向でアルバムを制作したのが成功したんだろうな、と思います。
で、提供された個性溢れる楽曲を、いずれも難曲ばかりだったと思うんだけど、それらを委員長がきっちり歌いこなした(しかも曲ごとに表現を変えて歌い分けた)のも成功の大きな要因だったのではないかと。
そういう意味ではやっぱりプロデューサーが有能だったんだろうな……既に彼女の担当からは外れたらしいですが。

ということで、なんか「2021年のまとめ」という趣旨から若干脱線した気がしなくもないんだけど、いずれにせよ僕としては委員長のアルバムがこれだけ評価されたのは1ファンとしても本当に嬉しいし、そもそも推しのアルバムがこれだけクオリティの高い、何年も聴き続けられるレベルの名盤に仕上がったのは本当に嬉しい出来事でした。

正直言うと、委員長は元々歌をウリにしたvtuberではなかったし、ソニーからメジャーデビューする、と公表されたときも僕は「まぁ、活動の場がちょっと増えた程度かな」くらいに思っていて、そこまで興味を持ってはいませんでした。
でも今は普通に音楽方面でも委員長のファンになっています。彼女のヴォーカルは、元々音感が良くてピッチは安定していたけど、この4年で発声もみるみると良くなって、最近は普通に聴かせる歌を歌うようになったなぁ、と思っています。
変なクセがついていない分表現が巧みで、曲に応じて気持ちを乗せた「刺さる」歌が歌えるようになり、いわゆる「歌うま」ではないけど味のある、とても個性的なヴォーカリストになったように思います。

2022年はもしかしたら委員長にとって配信・動画への回帰の年になるのかな、とも思わなくもないですが、音楽活動もぜひ続けて欲しいです。2ndアルバム待ってる。

最後に、「月の兎は〜」のリスト置いときますね。


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