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私は如何にして神椿の観測者になったか

 東京は中目黒、駅から歩いて……、多分迷うと思うので……15分~20分以上の所に『Walts』というお店があります。音楽を売っているのですが、ここが特異なのは、主にカセットテープを扱っている、という点です。

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 『Walts』の成り立ちは、検索すれば優れた記事が別にあると思いますので省きます。ただ、入ってみると、ヴィンテージ品に混じって、意外に新譜のカセットテープが世に出回っているものなんだなと思わされます。
 殆どはアンビエントな……形容しがたい抽象的な楽曲が多いんですけど、テープを求めるのはそういうコアな層なのかもしれません。外歩き用というか、いま見ている景色に色付けをするような音楽……といったイメージです。と言いつつ、屋内で瞑想するようなスタイルの品かもしれませんので、本当のところよく分かりません。
 揺らすと音の鳴る緩い立て付けで、細いテープがカラカラと回り、つい20~30年前とはいえ、現代の機械と比べるといかにも不安定そうなカセットが、一見して分かりやすそうな仕掛けで動いて音を出すのが、なんだか不思議で……。インターネット配信でも同じ物が手に入る筈なのに、気になるのです。実際、新譜のカセットはかなりデザインが凝っており、中に入っている曲が分からなくても、店へ行けば少なからず欲しくなります。特別な体験を探している身にとり、カセットテープはファンタジーなのです。
 自分は、ゲームクリエイター飯野賢治の著書『ゲーム』で、「YMOのカセットをウォークマンで聴いたときに、世界が違って見えた」という文章を読んだ記憶があり、そのような体験が出来るものを探していました。カセットテープの山からも、いずれ見つけるつもりですが、それとは別に、最近の音楽から見出すことができました。

それが……花譜『I SCREAM LIVE』です!

この作品を、旅行中の電車の窓から、青空の雲を眺めながら聴いたとき。
一曲目の『さよならミッドナイト』が流れ、確かに世界が変わりました。
決定的でした。前から花譜を追っていましたが、この時が、完全なファン……観測者……に落っこちる瞬間だったと言えるでしょう。
名盤です。売り切れでなければ、今すぐ買ってくれ。

ここまで全部前置きなんですけど、自分もそれなりに変遷があってバーチャルシンガーに辿り着きました。花譜『I SCREAM LIVE』はひとつの終着点でした。というわけで、そこまでどうやって辿り着いたか語ることにします。


音楽的知識があるわけでもなく、さらに大抵がゲーム音楽の話になるんですが、自分は小学校に入るまでは親がビデオゲームに否定的で、ゲーム機を買ってもらえませんでした。ただ、毎年旅行することが多く、旅館にあるアーケードゲームだけは例外だったので、物心ついたときの初遭遇はアーケードゲームです。周りの子供が多分マリオやドラクエをやっている時に、自分は『エクスターミネーション』にハマっていました(もちろん1面で死にます)。

単純な繰り返しのBGMが印象的なんですけど、これは後述するOGRこと小倉久佳さんが作曲されています。この頃から個性的な作風です。

他にも下記のようなゲームの曲が印象的でしたね。

……さて、初めて買ったCDに話が飛ぶんですが、『ダライアスII G.S.M.タイトー 4 / ZUNTATA』です。『ダライアスII』と『ナイトストライカー』という二つの作品を収録したCDになりますが、目当ては前者だったのに、圧倒的にカッコ良かったのは後者の『ナイトストライカー』でした。とにかく今聴いてもカッコイイです。好き。

株式会社タイトーの音楽制作チームはバンドのような名前を持っており、『ZUNTATA』と言います。というか、当時ゲームメーカーの音楽部門がバンドをやるのが流行っていたみたいで、コナミは『矩形波倶楽部』、セガは『S.S.T BAND』など、様々な名前があります。それぞれライブをやったり、御洒落なアレンジのCDを出したりしておりました。

『ZUNTATA』に携わった方は沢山おられますが、個人的に二大巨頭(……渡部恭久さんも、あの人もこの人も……、入れるべきだと思いますが)だったのがOGRこと小倉久佳さん、TAMAYOこと河本圭代さんでした。

OGRさんは『ダライアス』シリーズが代表作です。特に『ダライアス外伝』はCDのライナーが完全に精神世界へ足を突っ込んでいて、何が書いてあるのか、よく考えないとよく分かりません。いや、やっぱり分からないかもしれないです。

次回作の『Gダライアス』では「キメラ音楽」という新しい作曲に取り組まれました。毎回テーマが違いますが、「娘が二十歳になったら聴いて欲しいと思って作った(うろ覚え)」ダライアスIIの『say PaPa』がエピソード的に好きです(曲の最後に娘さん(1~2歳児?)の「パパ」と喋る声が録音されている)。これをラストステージの曲にぶち込むセンスも凄いですが。
現在はタイトーから独立して『小倉久佳音画制作所』を名乗られています。「音楽」でなく「音画」なのがセンスです。

TAMAYOさんは『レイフォース』シリーズ三部作が有名です。繊細で美しいメロディ(分かりませんが、多分メロディだろう)が特徴です。コインを入れた際の「Push Start Button」というメッセージが出る、合間に過ぎない所に、下記のような曲を入れてしまうのがまた凄いです。引き込まれます。

そしてレイシリーズ三部作、ストーリーも哀しい。曲と融合してます。人類を敵視するAIと一体化した、既に手遅れな地球の中心部になぜか無人の市街が作られていて、その上空を通過する際の曲が下記です。どういうことだ。

これらの楽曲が流れていた90年代ゲームセンターで、自分としては衝撃的だったのがセガの『電脳戦機バーチャロン』です。微妙に歌詞が乗らない、でもどこかロボットアニメの主題歌を思わせる曲……独特でした。ゲーム自体の細かすぎる設定や、現代であればeSportsになりそうな、求められる反応速度と対戦の駆け引きバランスも衝撃でしたが。


話は変わって、ゲーム以外もちゃんと、いや、それなりに聴いていました。90年代後半から2000年ぐらいまで……ですけど。

ずっと追っている……とまで呼べなくなってしまったけれど、ファンクラブには今でも入っているのが『Every Little Thing』です。ボーカル持田香織さんが学生時代、すごく好きだったのです。2ndシングル『Future World』がCMで使われた際、その数秒の歌声で誰! この曲! と追いかけたのも懐かしいです。ライブの時、持田さんもギター伊藤さんも、一人一人を見てくれる感じなんですけど、目を合わせるのが苦手で申し訳ないです。

2000年代中盤、ボカロが現れてきたあたりから音楽知識があやふやになってきます。ちょうど仕事を始めた頃ですね。自由な時間が限られてきたというか、テレビもあんまり見なくなりましたし。そういうわけで、ボカロ全盛期はスルーしてしまいました。後から『メカクシティデイズ』を手に入れてCD音質の良さに震えたりしていましたが。


そんな中、たまたま出会った『東方project』だけは追いかけました。タイトーの2Dシューティングに見られた、音楽とゲーム展開の融合……ジャンルが2Dシューティングであること、作者がやはり株式会社タイトー出身であること(『東方project』の作者、ZUNというハンドルネームも、本名であると同時に名言はされていませんが、サウンドチーム『ZUNTATA』から取っていると考えられます)……共通点は多く、何年ものめり込みました。


最近よく買っているのはインストゥルメンタル・バンド『fox capture plan』です。ジャズピアノトリオ編成のようですが現代的な(いやジャズも現代か、なんというかポストロック、ジャズロック?)曲を弾く三人組です。アニメっぽいとも言われるようですが、実際にアニメの劇伴を担当されたこともあります。個人的にSF小説『スワロウテイル人工少女販売処』の映画化などがされたら、彼等に一任して欲しいと勝手に思っています。

……と、こんな感じで聴いてきました、という超ざっくり遍歴でした。洋楽が全然なのもこれでバレてしまいます。神椿スタジオの観測者で、こんなのを聴いてきたという自身の音楽歴を覚えている方は是非noteに書いて頂きたいです。後で新しい曲探しついでに、読みに行きます。

というわけで、バーチャルシンガーにハマっている者の音楽嗜好歴でした。

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