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LIVE備忘録 vol.7 【ファンファンと熱狂】

『OYAMADA SOHEI BAND TOUR 2022』at 人見記念講堂


6月28日。

いつもなら何食わぬ顔で7月中旬まで滞在している梅雨は、今年は異例の速さで去っていった。
もうかれこれ5日近く続く猛暑日。大学以外のとある用事のため珍しく6時に起きて見た空は、とんでもなく青く、太陽はギラギラと輝いていた。

インドのムンバイよりも暑い東京の空


カツヲが小山田壮平のライブに行くのは、昨年の弾き語りツアー横浜公演以来の約1年ぶりで、期待感満点レストランだった。


なによりも3月23日配信リリースの“スライディングギター”、“アルティッチョの夜”は小山田壮平ソロとしての魅力が溢れまくっていて、この2曲が聴けると思うとさらに期待感満点。




大学の授業を終え降り立った三軒茶屋駅では、早速小山田壮平ツアー2021のキャップ(ブルゴーニュ)を被った人を目撃した。
この日のカツヲも同じくツアーキャップ(ネイビー)を身につけており、ここ最近の灼熱の日差しからの防御アイテムとして欠かせないものになっていた。


Googleマップを頼りに向かった昭和女子大学周辺はもう完全に女子大生のテリトリーで、明らかに野郎大学生のカツヲが侵入していい空間ではなく、ソワソワとすごい速さで人見記念講堂を目指した。
Googleマップの導きによってやっとこさたどり着いた昭和女子大学西門は明らかに部外者お断りの雰囲気で、この道50年の板前の如く警備員さんが入校者を捌く。
その西門の看板には「学生証の提示をお願いします」と書かれていて、あいにく女子大の学生証は持ち合わせていなかったカツヲは、Googleマップに翻弄されていたことに気づく。

「憎いぜGoogle」と呟き、向かった正門を抜けると、そこには人見記念講堂が。
ひと足先にたどり着いていた親友のKと、そのバイト仲間で初対面のIさんと合流し、8月みたいな外から逃げるように入場した。

小山田壮平が飛び入り参加した昨日の下北沢 440でのライブに行っていたらしいIさんから、とにかく色々凄かった話を聞いたりしながら、18:50に各自の座席へ向かった。



席は1階14列41番。
青を基調とした幻想的なステージに溶け込むように、先日のツイキャスで歌っていたスピッツの“流れ星”が開演前SEとして流れていた。


SEが止まりブザーが鳴り響く舞台袖から出てきた、小山田壮平、藤原寛、濱野夏椰、久富奈良は各自の配置につく。
2ヶ月かけて全国12公演回ってきたこのツアーも、今日この場所で千秋楽。
マイクの前でギターを準備するツアーTシャツ(ポスト)を身にまとった小山田壮平は、明らかにエネルギーが溢れていて、いつも以上にぴょんぴょんしていた。



印象的なギターのフレーズから始まる1曲目は“Sunrise & Sunset”。
andymori時代にはなかった濱野夏椰によるラップスチールギターの音色が、ポップなこの曲に幻想的な雰囲気を感じさせる。
完成され尽くした4人のグルーブに圧倒。圧倒。圧倒。 


怪しい雰囲気から始まり、音圧で心臓を揺さぶってくる“旅に出るならどこまでも”は、やはり曲後半で指弾きに変わり、心地よいファルセットを響かせる。


「今日は千秋楽です。ありがとう」
といったMCとメンバー紹介を終え、アコギで歌ったのは“16”。
夏椰君のフェルウェイと言う名のスチールギターが、楽曲に更にノスタルジーを増幅させる。
なんだか最近、あまりにも世界観が今の自分の状況とマッチしてしまい苦しい気持ちになってしまうこの歌は、ぼんやりしていたら終わってしまった。

どこにも行けない彼女たち  駅の改札を出たり入ったり
変われない明日を許しながら  なんとなく嘘をつくのさ

“16”  andymori


続いて歌った“OH MY GOD”では、途中でがなるように歌い叫び、有り余るエネルギーを伝えてきていた。
そんでヒロシの左手が動く動く。
何気に初めて見た気がする水色のベースで楽曲を支え、まるで超高速シャトルランをしているかのように動く左手に釘付け。


5曲目の“Kapachino”では、白い照明によって後ろから照らされて影になった4人がなんともかっこよく、疾走感のあるロックナンバーに痺れた。


完成されまくった5曲を披露した4人は、ここでなんだか気の抜けたMCをしていた。

「みなさんありがとうございます。全国13ヶ所回ってきて、金沢から始まり、、、ね(壮平)」

「さっきステージ裏で、色々な美味しいものを食べたね、って話をしていたんですよ(壮平)」

「何がいちばん美味しかったかな。岩牡蠣とか食べたね(壮平)」

「美味しいお刺身食べに行ったね。そうそう、なんかそこのお店で“じゃあこれください”って頼んだら、薄く切られたものではなく、柵のまままるまる出てきて(壮平)」

「なんか、アニサキスがどうのこうのでこういう提供の仕方しか出来ないらしい(ヒロシ)」

「それで、アニサキスがいる魚といない魚で分けて、アナフィラキシーショック云々で危険な自分がアニサキスがいない魚を持って帰ったんだけど、、(ヒロシ)」

「そうだそうだ(壮平&夏椰)」

「でもその持って帰った魚がアニサキスがいる方で、食べたあとすぐに薬飲んでビクビクしてました(ヒロシ)」

「ってことは今ステージにいるのは2人目のヒロシってこと?(夏椰)」 

「クローンってことか(壮平)」

「前澤さんが作っている養殖の魚はアニサキスがいないらしいよ(ヒロシ)」

「前澤友作さんね。すごい(壮平)」

「・・・・・・・・・・・・」

「3階席!!!声は出せないけど気持ちは伝わってるぜ!(壮平)」


全国を回ってきた彼らの素敵(?)なエピソード、存在しない3階席への呼びかけからヌルッと始まった“雨の散歩道”、“スランプは底なし”は、夏椰君のギターソロがなんともかっこよく、andymoriにはなかったもう一本のギターの音が‘小山田壮平バンド’としての魅力を奏でていた。


続いて披露された曲は、全く知らないイントロで新曲を思わせたが、「夜の闇に浮かんだ〜」という歌詞から“月光荘”であることに気づく。
昨年のバンドツアー(at USEN STUDIO COAST)で初披露され、弾き語りツアーでも歌っていたが、どちらも弾き語りによるものであったため、バンドアレンジされた“月光荘”を聴くのは初めてだった。

率直な感想だが、とんでもなかった。
なんかもう、とんでもなかった。
力強いバスドラムの音を中心に、タムドラムやスネアドラムの音が時折混ざる奈良君のドラムは和太鼓を思わせ、三軒茶屋に浮かぶ人見記念講堂が、あっという間に沖縄の祭会場へと変貌していた。
落ち着いた照明の中で4人に順々にスポットライトが当たる演出はまさに‘夜の闇に浮かんだお月様の光’で、‘マジカルな宴’を彩る4つの楽器と歌声に圧殺された。


その次の“ローヌの岸辺”もバンドバージョンとしては初めて聴いた曲で、ゆっくりと時を刻むようなドラムが素晴らしかった。
自然に知らないはずのローヌ川の情景が浮かんでいて、落ち着いた水面には朝日が映り、そこに存在する全ての物質が軽やかに、しかし少しずつ時を刻んでいた。
(↓全く同じ感想を抱いていた方が居て嬉しくなりました)


相変わらずえげつなくかっこいい“彼女のジャズマスター”は、先日のTime Slip Rendezvousとのツーマンで印象的だった「恐らく音源化に向けて構成し直したであろうリードギターのフレーズ」がイマイチきこえなくて少し残念だった(ツーマンのやつは配信ライブとして観たものだったから良く聴こえただけかも)。

また先日のツーマンでは、リードギターのフレーズが数小節続いてからの歌い出しだったが、今回はイントロ無しのスタート。
それでも、喉が潰れてしまうんじゃないかと言うほど熱を込めて歌い叫ぶ小山田壮平は圧巻だった。



多分ここら辺のタイミングでMCがあり、沖縄での思い出を話していた。

「奈良君のふるさとの沖縄にも行ったね(壮平)」

「沖縄から帰ってきた東京は凄く暑くてびっくりした(ヒロシ)」

「梅雨は落ち着いて、、というかもう明けたのか(壮平)」

「ヒロシは沖縄で水族館に行ってたね(壮平)」

「そうそう、美ら海。ウミガメをずっと眺めてた(ヒロシ)」

「ウミガメと泳いだことあるよ。○○の○○(忘れました)ってところで(壮平)」

「ウミガメはなんか言ってた?(ヒロシor夏椰)」

「“いい感じ”って言ってた。水温が(壮平)」

「で、そこの海は‘おじい’から“サメは出ない”って言われてたのに、おじいの家にはサメの歯が置いてあって、、、(壮平)」

「○○(忘れました。多分寿司屋)とかの上に置いてあるやつね(夏椰)」

ライブのエンディングを感じさせる“夕暮れのハイ”、“投げKISSをあげるよ”に続いて披露したのは“恋はマーブルの海へ”。
割と新しい(とは言っても1年半前に発表された)この曲では、ステージ後ろの照明がカラフルに彩られていて曲の雰囲気にピッタリ。



3ピースのandymoriのライブでは聴けないリードギターの音色は、“空は藍色”のようなandymori時代の曲に目新しさを感じさせる。
煌びやかなアコギの音色と歪んだリードギターの音色に小山田壮平の伸びやかな歌声がのせられる。


濱野夏椰がスチールギターの前に立ち、小山田壮平がギターのボディ付近でのAコードの音を確かめると、ついに待ち望んだ“スライディングギター”。
いつも以上にゆらゆら揺れて、ぴょんぴょんと飛び跳ねる小山田壮平に頬が緩む。
この歌マジで歌ってて楽しいよね。
自分もゆらゆらぴょんぴょんしてしまう自信があります。


ギター2人が向かい合って奏でるイントロから始まる“HIGH WAY”、疾走感溢れる“ゆうちゃん”に続いて歌ったのは“君の愛する歌”。
綺麗なファルセットと、大きなストロークでかき鳴らすギターからは、もうライブが終盤であることを感じさせた。(たしかこの曲のイントロで夏椰君がギターをワウワウさせていて、なんの曲か全く予想出来なかった)



「最後の曲です」
と言って歌った“サイン”では、カツヲの魂はからだを抜け出しどこかへ飛んでいっていた。
小山田壮平の地声と裏声が混ざり合うサビでは藤原寛、濱野夏椰によるコーラスが重なり、もう、もう、、、、。
ちょっと言語化不可能です。
なにこれ、やばすぎる、なにこれ、やばすぎる、途轍もねぇよ。
コーラスの深みがえげつなくて、もう、途轍もなかった(語彙力消失)。
もう1回観たい。いや、もう1000回観たい。



4人が去っていった真っ暗なステージの上では、何やら下手側でマイクの準備が進められていた。その様子をぼんやり眺める魂の抜けたカツヲは、周りのアンコールに合わせて、心ここに在らずのぐちゃぐちゃな手拍子をしていたと思う。



大きな拍手に迎えられてステージに現れた小山田壮平は、2ヶ月かけて全国を回ったこのツアーへの感謝を述べる。

「コロナによるパンデミックとか、戦争か起きていたりの状況だけれど、こうして歌えていることはとても幸せです。全国を回ってきて無事千秋楽を迎えられて、スタッフの皆さん、ライブを観に来てくれた全国の皆さん、ありがとうございました」

アンコール1曲目は“時をかけるメロディー”。流れるようなアルペジオにのせた美しい歌声で「瞳に映るあの人  歌っていて欲しい」と、カツヲの瞳に映るあの人は歌う。



そして小山田壮平がバンドメンバーを呼び、最後尾でふらりと現れたその姿に、カツヲは今年1の2度見をした。やっとからだに帰ってきた魂が「おぉ!!」と声を漏らす。(どうやら開演前の夏椰君のインスタのストーリーに登場しており、知ってた人は知ってたみたい。カツヲは通信制限勢のために見れていませんでした)


ファンファンじゃん!!!
元くるりのファンファンじゃん!!!
トランペットのファンファンじゃん!!!
FUN ! FUN ! FUN !のファンファンじゃん!!!


とぼけた様子で
「あら、ファンファンじゃないですか」
と問いかける小山田壮平に対して、ファンファンはニコニコ笑顔で
「来ちゃいました」
と返す。
観客もニコニコで「ファンファンだ!!」とどよめく。


そして小山田壮平は「子どもを授かりました」と報告。
鳴り止まない拍手を『笑っていいとも!』のタモリさんのように鳴り止ませる。
何公演もこの‘タモリさんムーブ’をやってきたためか、はたまた色んな人のライブレポから多くの観客が知っていたからなのか、観客の手拍子は比較的綺麗に揃う。

「流石東京!いいともの街!」
とはしゃぐ小山田壮平は「実は夏椰君も、、、」と話を振り、濱野夏椰は「子どもを授かりました」と返す。
これまた鳴り止まぬ拍手を、‘タモリさんムーブ’でさっきよりも完璧に鳴り止ませる。

「何回もやってるんですけど、やっぱり夏椰君のほうが上手くいくんですよね、、」
と悔しそうな表情を見せる小山田壮平は
「実はヒロシも、、、」
「素敵な髭を授かりました」
と話を振る。
これまた大きな鳴り止まぬ拍手を、なんだか参ったように照れる藤原寛は‘タモリさんムーブ’で鳴り止ませる。

少々おいてけぼりになっているファンファンに、小山田壮平が
「お母さんの先輩として、、、どうですか?」
と尋ねると、ファンファンはニコニコ笑顔で
「大変だけど楽しいよ」
と返す。何だこの幸せな空間は。



そんなMCから、ファンファンを迎えた1曲目はは“1984”。
イントロのメロディーを安定感のあるトランペットで鳴らすファンファンは、すっかりこの4人に溶け込んでいて感動。
ファンファンのトランペットを聴けるなんて。
そして、その“1984”を聴けるなんて。



続いて歌ったのは、ファンファンが音源のレコーディングでもトランペットとして参加している“アルティッチョの夜”。
待ち望んでいたものの、今日はやらないとさえ思ってしまっていたが、ファンファンが出てきたこのタイミングに妙に納得。

タンバリンとトランペットを器用に持ち替えてノリノリのファンファン。
メリハリのついたドラムを鳴らす久富奈良。
キレッキレのバッキングを魅せる濱野夏椰。
安定感抜群のベースで全体を支える藤原寛。
ゆらゆらと揺れながら力強い歌声で歌う小山田壮平。

クソかっけぇよ、、、クソかっけぇよ!!!おい〜!!!


最後の曲は、ヒロシのベースから始まる“グロリアス軽トラ”。
なにこれ、最高じゃん。
今日はなんと歌うのかしら。「東京の空の下」かな。と思っていると、小山田壮平は「三茶の空の下」と歌う。
なにこれ、最高じゃん。



23曲を駆け抜けた4人とファンファンはステージ前方に出てくると、マイクを通さずに「ありがとうございました」と13公演に及ぶバンドツアーを締めくくった。


観客の鳴り止まぬ拍手に微笑んだ小山田壮平は、全身の筋肉をフル稼働させて、‘ヒーローの変身シーン’のような‘タモリさんムーブ’で完璧に拍手を鳴り止ませた。
満足気な表情で‘くるり’とターンをした小山田壮平は、ステージ上のスピーカーにつまづいて、マイクに「恥ずかしい!」と残して去っていった。

夜の闇に浮かんだ人見記念講堂



 [セットリスト]
1. Sunrise & Sunset
2. 旅に出るならどこまでも
3. 16
4. OH MY GOD
5. Kapachino
6. 雨の散歩道
7. スランプは底なし
8. 月光荘
9. ローヌの岸辺
10. 彼女のジャズマスター
11. 夕暮れのハイ
12. 投げKISSをあげるよ
13. 恋はマーブルの海へ
14. 空は藍色
15. スライディングギター
16. HIGH WAY
17. ゆうちゃん
18. 君の愛する歌
19. サイン

~アンコール~
20. 時をかけるメロディー (弾き語り)
21. 1984  (With ファンファン)
22. アルティッチョの夜  (With ファンファン)
23. グロリアス軽トラ  (With ファンファン)

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