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LIVE備忘録 vol.13 【春】

『カネコアヤノ Zepp Tour 2023 “タオルケットは穏やかな”』 at Zepp Haneda


2023年2月28日。

昨年末に発表されたZeppツアー。

新AL『タオルケットは穏やかな』のリリース後、初のツアーの千秋楽だったこの日。

うっすらと寝不足で、ライブ直前に少し嫌なこともあったりしてなんだか不安が大きかった。

18:30頃に入ったこともありスタンドはかなり埋まっていて、なんとか上手側の壁沿いに落ち着く。

過去のカネコアヤノのライブでは上手側から見たことがなく、初めての位置。





19:00

会場が暗転し、4人が下手側から登場する。
このツアーのドラムは‘ひかりさん’こと、坂下ひかり。
マイクスタンドの前に現れたカネコアヤノは黒い衣装。

同様に黒い衣装を身に纏う本村拓磨(Ba.)とは対照的に、林宏敏(Gt.)はエレキギターに合わせた白い衣装で包まれていた。




軽いセッションから爆音ドラムに繋げると、1曲目は“わたしたちへ”。
2022年4月に発表されたBobドラムの“わたしたちへ”に対し、最新アルバム『タオルケットは穏やかな』に収録された“わたしたちへ”は坂下ひかりドラム。
昨年9月の中野サンプラザワンマンと同様に1曲目に演奏されたこの曲は、相変わらず心臓をふるわせ、アウトロではアルバムverに特徴的な潰れたエレキギターの音色が響く。


一瞬で会場の空気を掌握した4人は、続いて“カウボーイ”を歌う。
会場の中央で楽しそうに揺れるカネコアヤノはエメラルドブルーのギターをかきならす。
間奏では、真っ白なロン毛のギタリストが楽しそうに、気持ちよさそうにギターソロを弾く。YouTubeで観たライブ映像のままの表情でギターソロを弾き終えてピックを客席に投げれば、大きな歓声が会場全体から湧き上がっていた。





3曲目は新ALから“季節の果物”。

優しくいたい
海にはなりたくない
全てへ捧ぐ愛はない
あなたと季節の果物をわけあう愛から

季節の果物


‘なにもかもを包む愛’ではなく、‘目の前のあなたを包む愛’について、ゆらゆらと揺れながら歌うカネコアヤノ。


アルバムを通して聴く癖がついていると、その次に脳内を流れるのは“眠れない”のイントロなのだが、続いて歌ったのは“予感”。
ベースが気持ちよすぎるんだよな、この曲。



ワウワウと響くバッキングギターの音色から始まれば、“やさしいギター” 。
カネコアヤノが取り替える様子を全く見ていなかったのだが、先日の武道館と同様にこの曲だけはエメラルドブルーのSGではない別の赤いギターを使っていた。
自分は絶妙にエレキギターの知識が無い&遠かったためわからなかったが、ジャズマスターだったような気がする。
ツマミの位置と形がストラトキャスターではなかったと思います。有識者の方教えてください。




新ALから続けて3曲を披露すると、落ち着いた照明の中で林さんと本村さんが向き合って落ち着いたフレーズを奏で始め、次の曲が始まる。
ゆったりと昼下がりの街を散歩しているような音の中で、カネコアヤノがマイクに向かい合うと“春”。

弾き語りでしか聴いたことのなかったこの曲をバンドでやること自体がかなりのサプライズで、そのアレンジがとてつもなく素敵で、もう心を奪われた。
音源よりもサビが1度多く、徐々に現れる春の景色にじんわりと気付くような、そんなアレンジだった。
この素敵なアレンジにアウトロでは観客が思い思いにその感情を表現し、それを見た少し手持ち無沙汰なカネコアヤノは、イカした顔でガッツポーズをしていた。
カネコアヤノが後ろで腕を組んでゆらゆらしていた曲があったんだけど、たしかこの曲だったかな。


新ALの中でも特に好きな“眠れない”が寝不足のカツヲに届くと、次は最高のイントロ。
明らかに観客が浮き足立ち、「目線は〜」と聴こえると一気に鳥肌が。
やっとライブで聴くことの出来た“天使とスーパーカー”はもう、最高。


次の曲のアレンジもとてつもなく良かった。
ゆっくりと確かめるように弾くギターの音色に、“わかりやすい愛 丈夫なからだ”や“朝になって夢からさめて”だと勘違いしながら迎えたAメロで、“愛のままを”であることに気付く。
しん、としながらもさまざまな生きものたちの寝息が聞こえてくるような夜明け前の景色から始まった“愛のままを”は、2番にかけて太陽が静かに地平線から現れるように音数が増えていく。
そして静かに弾けるような朝焼けの後、生きものたちの呼吸が響く清々しい快晴の朝に変わっていく、そんなアレンジだった。



同じく『燦々』から“りぼんのてほどき”を歌い、のどの調子を整え、大きく息を吐いて歌ったのは“こんな日に限って”。
1曲の中で緩急がついたこの曲を、揺れながら歌うカネコアヤノ。



プツプツ、という音が会場に響き、かわいいネコの鳴き声が聴こえてくると“月明かり”。

―その次の「月明かり」の頭に入ってるのは晩ちゃん(猫)の声?

カネコ:そうなんです!

本村:武道館でも流したもんね。


―あれは一瞬何事かと思いました(笑)。「月明かり」は晩ちゃんが曲のモチーフになってるんですか?

カネコ:いや、単純に面白いから入れました。

本村:林くんが晩ちゃんの声をギターのピックアップで拾って、入れたりしてて。

カネコ:それを逆再生したら、「なんか怖いかも」ってなって、イントロだけ普通の声のままで、バンドインしてからは逆再生が入ってます。声がちょっと悲しげというか、儚いんですよ。全部に「?」がついてる感じがして、それが面白くて入れました。

「変わることと変わらずにいること」を見つめながら、新たなるフェイズへ──カネコアヤノ『タオルケットは穏やかな』インタビュー

美しい歌声と、音源よりも長く演奏された巡る間奏に‘救われてく 僕のpsykhe’。



続く“気分”では、カネコアヤノの美しいファルセットが響く。
あやしげなテンションで歌われる“もしも”は、じんわりと繰り返しながらフェードアウトしていく「ほら夢見た頃のお前が ほら小さな頃のお前が」に催眠をかけられているようだった。



落ち着いた曲が続き、次に歌われた“車窓より”もある程度落ち着いた曲ではあるが、今回は赤い照明も相まって、いつもよりも‘爆発’している印象だった。



“車窓より”の余韻が残る観客の目を覚ましたのは、突然始まった‘坂下ひかり’によるドラムソロ。

ちょっと意味わからなかったです。圧倒も圧倒。

ひとつの大きな軸となるリズムの上で、さまざまな音が乱れ飛びながら踊っているような。
ドラム未経験の自分ですら「やべぇ」ことがわかるほどの、わけわからないドラムソロ。
ドラムって楽器の中でも特に離散的で、連続的な音は奏でられないはずなのに、全ての音が区切れて独立して存在しているのではなく幾重にも繋がっているようで、もう、わけわからなかった。
とんでもねぇパフォーマンスに大歓声が上がり‘本村拓磨’にバトンタッチすると、流れるようなベースソロを弾く。
聴こえてくるフレーズに“Moon River”であることに気付く。

そのまま余韻を残さずに跳ねるようなベースが響けば“花ひらくまで”。
ライブではいつも
「今日も一歩 踏み出すには‘こし’が足りない」
のように聴こえるこの曲は、最後のロングトーンがいつも以上に響いていて心地よかった。



そして歌った“明け方”は、同じくひかりさんドラムの中野サンプラザの時は非常にテンポが早かったのだが、今回はそんなに早くなかったような気がする。



“グレープフルーツ”、“退屈な日々にさようなら”と続いたときにはもうクライマックスを感じさせる。
比較的初期からあり、カネコアヤノ自身にとっても、ファンにとっても大切な2曲。


そしてツアーを締めくくる最後の曲は“タオルケットは穏やかな”。

めちゃめちゃ良いな。

いいんだよ 分からないまま
曖昧な愛
家々の窓にはそれぞれが迷い
シャツの襟は立ったまま

タオルケットは穏やかな


途方もなく路頭に迷う人々を、タオルケットで優しく包むような力強い歌声。



あっという間にライブが終わり、アンコールは無し。
チラシを受け取ってまだ少し肌寒い外へ出れば、どこからともなく自分を呼ぶネコちゃんの声が聞こえ、全く買う予定の無かった「ネコ蓄光キーホルダー」をゲット。 


にゃーごろごろ



家に帰れば、ライブでたくさんのエネルギーを蓄えたカツヲは、身体を仄かに発光させながら眠った。




Twitterで見つけて、たしかに、と思ったのだが、今回のセトリは「春」を意識したものだったように思う。
“春”は言うまでもないが、“花ひらくまで”や“天使とスーパーカー”、“カウボーイ”や“りぼんのてほどき”など。
そして新ALから全曲やったわけだが、既存の曲のアレンジが素晴らしく、この新ALの曲がこれからどう変わっていくのか楽しみになったライブだった。



P.S)
素敵やん。



[セットリスト]
1. わたしたちへ
2. カウボーイ
3. 季節の果物
4. 予感
5.やさしいギター
6. 春
7. 眠れない
8. 天使とスーパーカー
9. 愛のままを
10. りぼんのてほどき
11.こんな日に限って
12. 月明かり
13. 気分
14. もしも
15. 車窓より
16. 花ひらくまで
17. 明け方
18. グレープフルーツ
19. 退屈な日々にさようならを
20. タオルケットは穏やかな

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