「呪いならいいのに」終演のご挨拶(中田)

久しぶりのnote更新となります。たすいち劇団員の中田暁良です。

集合写真

たすいち第38回公演「呪いならいいのに」無事に終演いたしました。
たすいち初の上野ストアハウス、自分が過去に出演した作品の再演も(中止となった魔族会議を除いて)初めての経験でした。
初演時は一家の父親である辰雄役だったのが、今回は呪われお兄さんこと川俣礼役を演じました。
6年の時を経て若返りを果たしているのが不思議ですね。

舞台写真

キャスティングを考えていた時に、「お父さん役は是非年齢が(比較的)高い役者さんに演じてもらいたい」という想いがありました。当時20代後半だった自分が父親役を演じていたことに決して負い目があった訳ではなく、ただ、年齢によって醸し出される深みは絶対に存在していて、そんな辰雄が見てみたいという希いがあったからです。

辰雄役・村山新

村山新さん演じる辰雄は想像を遥かに上回る狂気と愛に満ちていて、特に唯太とバチバチにやり合うシーンでは唯太の前に大きく立ちはだかる壁になっていて役としての強度を感じました。また、「幸せ」な描写が多い立川家の父親として、「よくいる普通のお父さん」なのに「ちょっと身体の動き方が尋常じゃない」というエッセンスが加わることで「漫画から飛び出して来られました?」と錯覚するほどのコミカルお父さんが出来上がっていて、「万雷の拍手を送ろう」という気持ちで登場シーンを見守っておりました。(何様)

川俣役・中田暁良

私が演じた川俣くんについてですが、実は劇中で描かれていない背景が多い役だと思っています。
とある方が仰っていた「主人公症候群」という言葉が非常にしっくり来るので拝借するのですが、自分が誰かを救う主人公でありたいが為に周囲の人々を次から次へとトラブルの渦に巻き込んでいく困った体質の持ち主です。自作自演君とも言えますね。
半年前に失踪した姉(原因・川俣)を探しに来たことや、過去に何かしらの繋がりがある昼鳥が生霊となってまで彼について回って丑の刻参りで呪いをかけている(原因・川俣)ということは劇中で語られるのですが、肝心の川俣と昼鳥の関係性について多くは語られておりません。

昼鳥役・川勾みち

その2人の関係性をポップに埋めて見応えのあるものにしてくれたのが、昼鳥役を演じた川勾みちさんです。
実は彼女、初演からの続投キャストの1人で、初演時には飼い猫のれとら役を演じておりました。
川俣と昼鳥の関係性を、友情でも恋心でもなく(多少は含まれていたのかもしれませんが、)「推し活」というエネルギーに振り切って演じ切ったのは本当に見事でしたね。
生霊である彼女の声は川俣くんには一切届いていないのですが、役者としては川俣の一挙手一投足に彼女が全力で応えてくれるのでとても力強く背中を押されていました。
彼女にもまた万雷の拍手を送りたいです。(だから何様)

斑鳩役・星澤美緒

川俣という人物を語る上でもう1人外せないのは、斑鳩役を演じられた星澤美緒さんでしょう。
怪しい隣人、何かありそうで何もない人、それなのに挙動が不審すぎてお客様からの笑いを沢山カッさられておられました。
正直、斑鳩と川俣のシーンでは、このお方単体で充分シーンとしては面白くなる確信があったので、心地よいテンポ、リズム感でシーンが泳いでいくように整えるのが私の仕事、と思っていた部分もありました。
勿論、関係性としては川俣が斑鳩を巻き込んでいく、というのがあるので、振り回されながらも引き込んでいくイメージは常に持っていましたが。
とは言え斑鳩をあそこまで面白い役どころに引き上げたのは美緒さん独自の身体性、台詞回しに因るものですので、美緒さんにも万雷の拍手を(略)

伊予役・細田こはる

他にも川俣と関係の深い役として挙げられるのは、やはり立川家最年少の次女でありながら川俣の実の姉である伊予役の細田こはるでしょう。
あんたほんといくつになったん?と声を大にして言いたくなるほどの子どもっぷり。しかも同じような役どころだった「キズツクキカイ」(再演)と比べると、似たような年齢設計なのに表現の仕方がまた全然違っているんですよね。この違いが分かるようになったらあなたも立派なこはるおじさんです。
川俣の姉であることが発覚してから年相応の落ち着きを見せるかと思いきやちょいちょい子どもっぽい顔を覗かせてくるあたり、元々姉弟の力関係もどっちが上とかあってないようなものだったのかもしれんなぁ…とか想像したりしていました。
ただ、最後に家族(偽)の元に残る伊予に見送られるシーンでは、滅茶苦茶アンニュイな表情をしているので、細田こはるの役の振れ幅にも万雷の(略)

舞台写真

一人一人についてもっと語りたいことは沢山あるのですが、一先ず今日はこの辺で。
なんだか川俣という役よりも、関わりの深い他の役について語ることが多かったですが、それは川俣礼という役が他者を巻き込んでいくという性質ゆえに、「他者が観測することで自分が在る」という側面が強い人物像だったからかもしれません。
「たすいち」という劇団名が「みんなの力を借りてお芝居を創る」ということに由来しているように、いつも以上にキャスト・スタッフという座組の力を強く感じた公演でした。

「呪いならいいのに」という作品が、観ていただいた方の記憶に強い爪痕を残せる作品となっていたことを切に祈ります。

2月1日からは配信公演も始まります。劇場で見逃した方も、もう一度観たい!という方も、是非配信にてお楽しみいただけましたら幸いです。
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ではでは今日はこの辺で。
引き続きたすいち「呪いならいいのに」をよろしくお願いいたします!

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