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映画『シコふんじゃった!』この作品は○○をオマージュしていた!

#映画レビュー  #シコふんじゃった! #周防正行  
#本木雅弘 #竹中直人 #柄本明  

この映画、初めて観たのは封切り後、そうとう後になってからだ。ただあまり面白いので、DVDを買ってまで鑑賞している。友人数人にも勧めたくらい…。私にとっての評価はかなり高い。

映画が上映されたのは1992年。この年は、時代の「変わり目」とも言うべきときだった。元号は、昭和から平成へ…。経済も、バブルで湧きあがったものから一転する。政治にも変化がでてきた。海外に目を向ければ、ソビエトの崩壊があり、その周辺諸国は独立をはたす。ウクライナもこのときに独立している。

一方、スポーツの世界では大相撲の人気が高まっていた。若貴ブームである。若乃花と貴乃花兄弟が1990年に揃って入幕をはたし、弟の貴乃花はこの1991年夏場所で、あの名横綱千代の富士を破り、初金星をあげた。この負けで、千代の富士は引退となる。

社会には暗い影が迫ってくる。そんな時代に、人々はお笑いを求めた。今でも活躍する「とんねるず」 「ダウンタウン」 「ウッチャンナンチャン」は、このとき売れ出した漫才コンビだ。大衆の多くは、不安を打ち消すものにスガッたと言っていい。そしてこの映画が誕生する。

この『シコふんじゃった!』は、スポーツ・コメディー作品。1988年映画『ファンシーダンス』でデビューした周防政行監督は、俳優本木雅弘に再度オファーしてつくったのが、この作品だった。本木は、アイドルから脱皮して、俳優の道にすすみ、成功した作品と言える。

*あらすじ
大学の相撲部顧問だった穴山教授(柄本明)。部員が1名しかおらず、廃部の危機に立たされていた。一方で、来年卒業予定の秋平(本木雅弘)は親のコネで就職も決めていたが、穴山の科目の単位がとれなくては卒業できない状況だった。

そんな秋平にたいし、穴山教授が一つの提案する。「次の相撲部の大会に出ないか!」 出てくれれば単位をあげる!…と。いや嫌ながらも、この誘いにのる秋平。相撲部の建物にいくと大学8年生の青木富夫(竹中直人)がいた。

相撲大会にでるには、少なくともあと2人揃えなければいけない。そこで、秋平たちは部員集めに奔走する。どうにか集めることには成功するが、あまり頼りにはならない連中ばかりだった。

そんななかで大会は始まる。応援には相撲部OBも駆けつけた。しかし、なんと全戦全敗だった。夜の慰労会の席、OBの一人(六平直政)が、穴山教授に文句をつける。その言葉をきいた秋平。とっさに反応して、啖呵を切ってしまう!次は絶対勝ってやると…。

勝つためには練習あるのみ。夏休みには、穴山教授の実家で合宿することに…。しかし穴山は「何もしなくていい!」と告げる。トコトンだらけた毎日で何もすることはなく、退屈になってくる部員たち。そこへ穴山が「子供たちと相撲を取ってみるか?」 「練習相手になってくれないか!」。その話しにのる部員たち。しかし、相手が子供でも、そう簡単には勝たせてはもらえなかった。
この子供たちとの相撲でコツを覚えた部員たち。本大会では、なんと勝ち進んでいくのだが…。

*映画『七人の侍』、そのオマージュ。
『シコふんじゃった!』を初めて観たとき『七人の侍』からかなりの影響があることを感じさせられた。困り事がまずあって、次にどのように人を集め、乗り越えていくか!そして、どう対策を立てていくか!だ。

相撲部顧問の穴山教授。これはまさに勘兵衛(志村喬)である。いかに関係者の心をつかむか!このあたりが見事というしかない。志村喬は、百姓の気持ちをよくつかんでいたし、穴山教授もいまの学生の考えはこんなもの!と、そんな割り方をしていた。

主人公の秋平(本木雅弘)は、『七人の侍』でいったら菊千代(三船敏郎)といったところ。破天荒なところが何とも言えない。大会後の慰労会で、OBの言葉に即反応。卒業単位をただもらうためだけだったが…。「つぎは必ず勝つ」とまで言い切ってしまう。

村娘と恋仲になる勝四郎。これは秋平の弟、春雄だ。大学院生の夏子(清水美砂)に一目惚れ。一方で、女子マネージャーとなった正子は春雄のことばかりに目がゆく。

結末は、『七人の侍』が野武士を打ち負かし、村に平和な日常がもどってくる。『シコふんじゃった!』では、部員それぞれが次の道へ歩んでいく。そんな流れになっている。

まとめ
周防監督の『七人の侍』愛は、かなりのものがあるようだ。社会の世相もうまくつかんでいた。集めた部員のキャラも際だち、話しに花を添えている。見事というしかない。

第16回日本アカデミー賞の6部門に輝いた『シコふんじゃった!』。この年の対抗馬は、伊丹十三監督の『ミンボーの女』だった。こちらは各部門にノミネートされたものの、最優秀とまではいかなかった。しかし、世相をよくつかんだ名作と言っていい。

周防監督、この5年後に『Shall weダンス?』で、またまた日本アカデミー賞を独占している。この作品も、世相をとらえたコメディー。私たちに笑いにとどまらず、時代の空気をも送ってくれた名監督だといえよう。

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