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漫画『クレヨンしんちゃん』から1990年の日本社会と経済を振りかえる!

#クレヨンしんちゃん  #臼井儀人
#ちびまる子ちゃん  
#さくらももこ

日本社会を見るとき、漫画を通してみるとわかりやすい。そこで今回、人気漫画『クレヨンしんちゃん』から、日本の社会を探っていこうと思う。

*クレヨンしんちゃんの背景
1990年に漫画家、臼井儀人によって書かれたナンセンス・ギャグマンガ。初めは大人向けに描かれたものだった。双葉社『漫画アクション』に連載。いつしか、それが女性や子供にもウケていく。主人公は野原しんのすけ、5歳の幼稚園児。この子が、子供感覚で大人たちをドギマギさせる設定だ。

家族構成は父親がひろし、母がみさえ、妹ひまわり、飼い犬がシロと呼ばれていた。埼玉県の春日部市に住んでいる。父ひろしは都心にある双葉商事という商社に勤務。役職は課長で、歳は35歳だった。妻のみさえは、29歳の専業主婦。ローンは残っていただろうが、持ち家で暮らしていたから、やや裕福な家庭だったようだ。

春日部は、都心から電車で1時間圏内の中都市。人口は23万人といわれている。そこに一軒家を持っていたことから推定して、年収は650万円くらいだったようだ。この物語の設定が1990年ころとなる。バブル経済がハジけるちょっと前。まだまだ多くの日本人にとっては気分が浮かれ、良い時代だったと言える。

*『ちびまる子ちゃん』との比較
この『ちびまる子』、1974年の設定となっている。主人公は9歳の「さくらまる子」。静岡市に住んでいた。家族は祖父母と両親、そして姉の6人。父の名は「さくらひろし」、親の友蔵(まる子の祖父)の代からの八百屋を引き継いだ。平屋の一軒家に6人で住んでいるところからみて、年収は1000万円を少しかけるくらいか?

『クレヨンしんちゃん』が核家族なのに対し、『ちびまる子』は2世帯同居である。父の名前は同じ「ひろし」だが、さくらひろしは長男のようだ。日本社会ではキホン長男が後をつぐ。兄弟がいるのかはよくわからないが、多分いるのではないか。漫画ではこの父親、いつも何をやっているかわからない設定になっていて、なぜか謎めいている。

日本では核家族が50%越したのは、1920年ころ。そしてそれが一気に進んだのが、1960年代といわれている。『クレヨンしんちゃん』の設定が1990年とすると、その親の代も核家族だった可能性はおおきい。また、都心から30キロ圏に、この時代の土地をもとめる人が多かった。30キロ圏には国道16号線があり、ひとつの目安となっている。都心の地価高騰により、この地に多くの人が移り住んだ。

*専業主婦が減り、共稼ぎに!
『クレヨンしんちゃん』の野原家、妻のみさえは専業主婦だった。時代からみると、日本では共稼ぎの家庭が右肩上がりで増え続けた。しかしちょうど1990年頃、その比率が半々となる。そしてそこから10年ほどは横ばいだった。共働きが再度増え始めたのは、2000年になってからのことだ。

2020年代の現在に至っては、専業主婦と共働きの比率は、1対2となっている。これはまさに日本経済、失われた30年につながると言えるだろう。夫の収入が減り、税金や各種社会保険は増えていく。これでは老後が苦しくなると見越しての行動とも言えるようだ。『クレヨンしんちゃん』の母みさえ、その10年後には働いていたかもしれない。

*ドーナツ化現象から都心回帰へ
いま国道16号線沿いにある団地は、大変なことになっている。若者が減り、高齢者ばかりとなった。近隣のスーパーや商店も減り続けている。というのも都心の地価が下がったからだった。そこに住む住人の息子や娘、仕事場に近いところに住まいを求めたことによる。

急な人口移動は、様々な問題を引き起こす。ドーナツ化現象が起きれば、都心部はゴースト化し、逆ドーナツ化現象(都心回帰)ではインフラが追いつかないという「スプロール現象」になってしまう。急激な人口の流出入は、行政にとっては頭の痛いところとも言えるようだ。

ただここ数年のコロナ禍で、在宅勤務が増えたことは、都市計画においては好都合だった。これにより通勤の負担は少なくなり、住む場所はどこでも良くなったわけだ。ただ、人口減少社会に突入した日本、その意味ではこれから行政も様々な施策を考えていかなければならないだろう。

まとめ
『クレヨンしんちゃん』の元となった作品は『だらくやストアー物語』。これは、男バージョンの『おしん』、それをアレンジしたもの。『おしん』と言えば、山形の田舎から肌一貫でて、大手スーパーを築きあげた物語である。そのパロディーともいうべきストーリー。軽快な洒落があり、ナンセンス風の作りとなっている。

この原作に目をつけたのが、当時の編集者・林克之だった。破天荒な子供だけを引っ張り出してきて、新たな設定をつくり、物語を作りあげた。『だらくやストアー』の主人公が二階堂信之介。そこから「野原しんのすけ」と名付けたと言う。1990年、当時の時代を背景に、この「しんちゃん」を縦横無尽に暴れさせている。この時代、このような漫画がなかっただけに、多くの人にアピールしたと思う。日本社会の時代のひとつの断面をあらわした作品となったようだ。

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