クラウゼヴィッツ『戦争論』。この古典とも言うべき書物、なぜ人々に読み継がれるのだろう?
#クラウゼヴィッツ #戦争論
大学時代に、A氏という友人がいた。そのA氏、会うとなにかとクラウゼヴィッツの話しをしていたと記憶している。この友人、なぜこんな話をしてきたのか?ようやくわかった。このA氏は民主青年同盟という共産党の団体にはいって活動していたのだ。共産党では、その教本としてレーニンの著作が使われている。レーニンはこのクラウゼウィッツを学び、いろいろなところに書き残しているのだ。なるほど、そういうことだったのか!今になってようやくわかった。
*クラウゼヴィッツどんな人物?
17世紀末に生まれ、18世紀の初めに亡くなっている。プロイセン国の軍人(将校)だった。士官学校を首席で卒業したというから、相当に頭がよかったと思われる。この頃のヨーロッパではフランスのナポレオンが勢いを増していた。プロイセンはあっけなく、このナポレオン軍に敗れてしまう。民兵がおおく、いわば雑軍ともいうべき軍隊に敗北したのだ。そこから、どうすれば勝てるのかの研究を重ねていく。そうして書いたのが『戦争論』だった。
クラウゼヴィッツは、51歳のとき、当時流行していたコレラにより死亡した。彼の書いていた著作は、その夫人マリーによって出版される。この夫人、財力もあった伯爵家の生まれだった。全く家柄もなく財力もないクラウゼヴィッツ。この著作が日の目をみたというのは、まさに夫人によるものと言える。
*戦争論は、未完の書!
クラウゼヴィッツの死後に刊行された戦争論、本人の考えの途中までをまとめたものだ。したがって生きていれば、さらに理論を深めていったことが考えられる。私の目から見ても不十分におもえた。諜報報情戦が抜けおちている。クラウゼヴィッツ自身「戦争では大半のことが不確定」としているが、そこを補うのが情報といえよう。それが無いのだ。
さらに、時代的な制約があるものの、科学技術の記述もない。たしかに近代兵器の開発は、あと半世紀を待たないと出てこないが、それでも改良あったはずだ。近代になると、戦争も兵器の質に左右されるようになってくる。当時といえども、改良はかなり行われていた。となると、やはりそこは抜けたといって良いのではないか?
クラウゼヴィッツの戦争論によると、各国の軍隊にはそれほど差がないと言う。したがって、最後に大事なのは精神論だとされる。たしかに将兵の士気は必要不可欠といえよう。しかし、そこに頼りすぎたのでは、かなり不確定となるではないだろうか。実際に太平洋戦争での日本軍の士気は異常なほど高かった。だが、やはり物量と近代兵器の前で多くの将兵が死んでいったことは事実だ。精神力だけでは太刀打ちはできない。
*クラウゼウィッツの考え方?
❶戦争とは何か?❷戦争を3つに分けて考察?❸戦略において考えるべきこと?❹戦闘のポイントとは?❺防御と攻撃について!❻戦争計画の重要性!。それぞれ見ていこう。
❶戦争とは、国家意志遂行のための政治手段である。つまり、戦争というのは、政治に左右されると言うこと。そして、その目的は次のどちらか。敵の軍隊を撃滅するか!重要領域を占領するか!。どちらにしろ、敵の意志を屈服させることにある。
❷戦争3つに分けて考える。戦略と戦術と兵站(ロジスティック)。戦略においては、目的に到達するため、この戦闘をどうするか考える。戦術とはこの戦闘をそれ自体で判断し、どう遂行するかを決定するということ。さらに武器弾薬食料などの物資をどう前線に届けるか? (=兵站)も頭に入れておかないばならない。
❸❹戦略においては、何より目的が大事。目的から外れた努力は無駄といえる。戦闘では、敵の殲滅を意図するが、現実には自軍の兵力の損耗を最小限にとどめ、敵の戦闘力や意志を砕くことが重要となる。
❺防御は攻撃より優れた手段。防御とは敵の攻撃に対抗し、その企画を阻止することをいう。攻撃においても防御は大事な観点と言える。防御と攻撃を組み合わせることが肝要と考えるべきだ。
❻戦争計画では、政治と戦略を一致させることが重要といえる。まず戦争の意義をはっきりさせ、目的を確定。そのうえで必要となる手段、方針、力の分量を決めていく。
*クラウゼビッツの言葉より
a)「敵の完全な打倒には、敵の重心撃破が最重要である」。敵の心臓部はどこかを見極める。ⅰ)軍そのものにあるのか?ⅱ)その国の首都にあるのか?ⅲ)敵の同盟国にあるのか?そこをはっきりさせ目標にする。
b)「攻撃力は時間とともに次第に低減していく」。いつまでも戦争を続けることをはできない。またいつまでも今の状態を維持することを難しい。とするならば講和への道をさぐる。
c)「同盟国をあてにならない!」。かりに同盟関係にあったとして、その国が常に援助してくれる保障はないという事。それ自体、あくまでも相手国=同盟国の力量によるものだからだ。
まとめ
クラウゼヴィッツの戦争論、ほとんどの国の軍隊、その教科書には記載されている。という事は、この知識をもとに戦略をたてたり、戦術を検討しているということだ。太平洋戦争において、日本本土は壊滅的被害をうけた。爆撃機による空襲である。これはまさに日本人そのものを殲滅させようという米国政府の狙いが見られる。これはクラウゼウィッツの戦争論なくしては、ありえない話しだった。
ロシアのレニーや、ナチスドイツのヒトラーも、この戦争論を学んでいたという。現代でいえば、ロシア・ウクライナ戦争も戦争論で読み解くことが可能といえる。どちらの国が折れるのか?はまだまだわからない。しかし、戦争というものは大消耗戦である。必ずどこかで決着がつくはずだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?