十六羅漢岩と冬の海
十六羅漢岩というものをご存知ですか?
山形県飽海郡遊佐町の海岸の岩(鳥海山の噴火によって流れた溶岩が固まったものだそうです)に彫られた磨崖仏(まがいぶつ:石仏の一種で、自然の岩壁や露岩、あるいは転石に造立された仏像)の事で、16の羅漢に釈迦牟尼仏、文殊菩薩、普賢菩薩、観音菩薩、舎利弗、目蓮の6体を合わせて22体あります。それと、仏像ではないですが獅子の像も一体あります。
民衆の福や徳、除災、海難者の供養と海上安全を祈願し作られた物で、1868年に完成しました。
ということをいろいろ調べて書き写しましたが、実際のところ、私は仏様の名前など聞いても、どの方がどのようにありがたいのか分からないのですが、ただ、祈りの心により作られたということは何も調べずとも感じていました。形は違えど、仏像とはそういうものですからね。
それはともかく、十六羅漢岩は完成してから現在まで150年以上も経っているわけです。いくら硬い岩でも、長年日本海の荒波を受けて風化しないわけはありません。
冬の日本海は荒れ狂い、激しい波によってできた波の花と呼ばれる泡が道路にまで飛ばされてくることもあるのです。
あまり鮮明ではない私の記憶の中で、前に見たのは確か四十数年前の小学生の頃。修学旅行で来た時のことで、それも実際に見た記憶があるのではなく、写真があるから分かるだけのこと。その写真の十六羅漢岩も風化していましたが、今よりはもっとはっきりと分かる状態でした。
その頃の状態を保っていないことはもちろん想像していましたが、これ程とは思っていなかったので驚きました。
この辺りの冬の空は鉛色のことが多く、体温を全て奪われるほどの強風とともに雪が吹き付ける日もあるのですが、この日は1月とは思えないほどの晴天で、空は青く、風はあるもののさほど強くもなくて暖かく、行楽日和、撮影日和でした。
本当は十六羅漢岩を見るつもりで行ったのではなく、たまたま寄った駐車場から見えた海が綺麗でもっと先まで見たくなって、吸い寄せられるように十六羅漢岩の所まで行ったのでした。それでこんな美しい景色を見ることができたのだから、ラッキーですよね。
人々の祈りを形にした十六羅漢岩とその風化にかかった時間の流れに思いを巡らせ、今日の美しい風景に出会えた幸運に浸りながら、撮影してきました。(いつも通りスマホのカメラですが)
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