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初夏

クダンの森の朝靄の中

ただ走り石や葉を集め

夏休みの自由課題に提出した

兄は蝶々を取り

それはもう見事な腕前で

その後、ピンで刺し、幾つもの

その昆虫達の(殆どが蝶であったが)標本を

提出した

やがて

兄は生き物を殺生した自分を知り

許せず憎み

少しずつ

壊れていったのだ

狂うとはどういうことか

病むとはどういうことなのか

わたしには

何事にも罪の念を抱くことなく

心が健やかだと言える人のほうが

怖いのだ

大人の無垢ほど

怖いものは無い

残酷なる自己肯定の塊たちに

わたしは怯える

初夏