哀憐の日々
岩上に立つ鋭い鷹のような目をして
その目は晒し
鼻から下をタオルで覆い
「今度は帰れないかもしれない」と
呟いて
幾度も私を置いて出てった人
ぼさぼさの長髪は、お洒落でもなんでもなくって
単に伸び放題、
執筆するとき、邪魔になると、輪ゴムで髪を結んでた
輪ゴムを取ると、いつだって、ごわごわの硬質の毛がついてきて
その一筋一筋すら、いとおしく
捨てるに躊躇い
残したシャツとジーンズを人型に敷き
その上に突っ伏して、匂いを嗅ぐ
着いて来るか?の最後の問いに
何故、拒んだのだろう
チキンラーメンに卵一個、それだけを
「おぉ、今夜は御馳走だ!」と喜んで食べた人
メットの色は黒
赤と戦い、ぼこぼこにやられた夜も
私の膝に顔うずめ、
泣いてたわね、アナタ
ずるいわよ
鷹の目で、泣かないでよ
時は経ち、
「ふっ、公務員さ、俺」と
自嘲した人
センチメンタルは心地よい
誰かを恨んだり憤るよりは、ずっと良い
哀憐の日々