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変身譚:川になる

人間をやめようと思い、Rは思案した。兎に角、人間、哺乳類、動物以外が良いのだ。

草・・?

いや、草は犬がおしっこする。厭だ。

猫も毛玉吐きに、

せめて美味しそうな顔すれば我慢も出来ようが、嫌々な態度丸出し、爪をグサリ。

牙、意外に怖いし。。

草の草たる矜持は何処へ。

愚考が停滞すると、先に進まぬ。

さて、作家某氏は、樹木人間なるモノに変身した。

カイワレ脚人間も、甲虫も、悲惨だ。前人未踏でなければ

話にもならないし。

しかし、変身譚のどれもが如何にも男性的ではなかろうか。

私は、仮にも人間、雌なのだ。

雌としての気概、美を保持して、何かに変身するとすれば、

風、水、野の花、発想貧困。。

暫定的に、水を選ぼう。

水なら、池、湖、海、沼、川・・・

うじうじ想像し迷っていても仕方ない。

川だ。川になる。

それも細い川、山間を流れる小川がよい。あの形状、如何にも女性的では無いか。

小川のせせらぎ・・おぉ、音さえも私の感性に合致するではないか。

木の葉が舞い落ちる。

密やかに、川たる私を彩る助演、いい、いいわ、葉っぱさん達!

上流には、人間だった頃、やはり人間の祖父が愛した鮎が棲んでいる。

鮎・・美しい。・・・気持ちが動いたが鮎は止める、串刺しにされた鮎の塩焼きが脳裏をよぎったもの。

そもそも生き物は除外と決めていたではないか、迷ってどうする!

川ーー

太古から女たちは衣服や食器を洗い、幼い子どもたちは、裸ン坊で、泳いだ。

海は騒々しいのだ、特に若い男女、君たちは、海を愛していないだろ!

海は君たちのラブアフェアのスポットか?

"当然っすよ、おばはん。波音、潮風、貝殻、砂、恋の必須アイテムっす”

”やだー。岩陰で愛撫って・相場決まってるジャン!何時代のヒトぉ?

マジ、ウザイんだけどぉ!”

ふむ、そうなのか。

そういう考え方もあるわね。海はやめよう。

ってわけで、川人間を目指す。

念じれば叶うと作家某氏も断言していたもの。

念じる、念じる。

お、身体が何やら透けてきた、気がする

伸びた?足、伸びてる? 

足・・下流なのか?

そりゃそうだ。足が上流という想像のほうが、マイナーであろう。

手が徐々に消える、一本の線、形状を念じるべし。

頭・・そう、この思考し過ぎる頭が邪魔なのだ。

頭、消えろ。川の上流になれ。

・・・・・・・

・・・・・・・!

痛い。痛い。

・・・頭、痛いよ~!!

うゎ・・・同じ水仲間の無残な仕打ち。

アナタ・・あぁ、アナタが居たか。

滝・・滝さん、ちょっと!

勢い、半端じゃないわ。やめてよ。

余程、腹に据えかねる人間生だったのねぇ。。

足の先っぽ、ん?温かいわ、何、この感じ。

癒される。私の音と何気に違うヒーリング音。

ちょろちょろ・・

見上げた。

あぅ・・・坊やが、可愛いおちんちん出してる。

ってことは・・・ヤダぁ。川でもおしっこする輩が居たのか。

川人間・・止め。

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