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静寂の怖さ

日常において、無音という時は、極めて少ないと思います。


雨音や風、屋根裏を走る猫の音、

遠くから聞えるサイレンや何かしらの音、声。

そう、夜などは、むしろ騒々しいほうが好ましい。


静寂と呼ばれる時間は、私を侵します。

痛いですね、静寂を楽しめないというのは。


本来、モノクロを愛す私は、意識して、色彩の渦に、
それも、疲れてしまう程の
原色の中に潜り込みたくなります。

淡い柔らかい色では駄目なのです。
痛みを消すには、強烈な色が必要なのです。

色と匂いは、赤赤赤、死に直結する血。

静寂が夜明けを迎えると
ようやく平凡な耳慣れた新聞配達の自転車や
早起きのお爺さんの咳が聞える。

音も色も匂いも無い世界、

私にはユートピアめいて
焦がれます。


かつて露店や香具師のオジサンの

胡散臭さと哀愁、


見世物小屋の毒々しい色や絵に、

怖いもの見たさの好奇心を抱いたり


着色料の入った身体に悪いジュースもどきを欲しがった夜。


金魚を3匹すくったのに、一匹しか貰えない時の
口惜しさ。


記憶には、音と色、匂い、全てが在るというのに。


蝋人形の妖しさ、怖さ。
ヒトガタの人形も怖い。


それでも、わたしの愛する人間ほどには
わたしを怯えさせない。

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