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我が性のセンチメンタル

かの哀憐の

あのように軽き肩なれど

熱き血潮に漲りし男

躊躇せず我に近寄りて

迂闊な我が隙間を押し包み

否応なく満たし

完膚なきまでに

容赦なく

不信と疑念の19の我を
鷲掴みにせし

その手がまさぐる我が肉体を

男がいとおしむゆえ

我は我が肉体が在ると感ず

如何なる様の形、質感、気付かぬ我の黒子すら

男の目を通し

我は知る

男の手、指の動きが

我をしなやかに伸びやかに

淫靡に軽く溶けてしまえとぞ

肉体の芯の殻を粉々と貫き

我が心をも
無防備なる真の裸にと
開かせるのであった

鷹の目をした痩せた男よ

遠く去りし想ひは

中途で終焉したゆえに

美しい

我が半生のあまたの瓦礫の中

燦然と輝く ああ、恋なりし

その記憶は甘美なる時も

我を急きたてゾワっと産毛逆立てる夜も

不覚に濡らした枕を見出した朝も

ソレらは

無かったよりは断然嬉しいのである

愛されたことよりも

わたしがアノヨウニ

愛せたことが重要なのだ

崖上に胸そらせ孤高なりし男

虚空を睨むではなく

破壊するために鷹は飛び続けた


そを侵すものは

われの浅ましき想いたりし

ああ

薄き軽きその肩震わせ

あの夜

背を向けて

男は泣いていたのだ

雨の夜

男が封印解き、甦る

年月を越え

若い声で

我に微笑む

よぅ!と

唇の口角の

その片側上げて

ニヤリと誘う

我が性のセンチメンタル

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