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ドライ・フール

5歳の幼女は、酔客の前で、拍手喝采を浴びます。

常日頃、彼女に笑みを見せない父は、
宴席で、ダンスする娘に
否、その娘によって客が喜ぶサマに
満面の笑みを湛えます。

だから、踊りたくないのに、
笑顔が欲しくて
幼い子は、泣かないように
激しく足を上げ顔を振り
道化を演じたのです。


シェークスピア劇に登場する道化の三型
「ビター・フール」「スライ・フール」「ドライ・フール」

辛辣・狡猾・愚鈍

愚鈍に、ただ愛を求めて、道化を演じる幼女は

歳を重ねても、その癖が治らないのでせう。


笑顔が欲しいと思うのです。

その為になら、何度でも
踊りますし、笑いの渦のど真ん中で、えへへと、嬉しそうな
顔を作れるのです。


幼女を踊らせる父
本当に無邪気なんですよ、と微笑む母

そうする事が
生き延びる手段だったのでせうか。