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(53)年金についての一つの考え方 その2

 話は横道にそれますが、公的年金制度には老齢基礎年金・老齢厚生年金のためだけに加入するわけではありません。何らかの理由で重い障害を負った場合には障害基礎年金・障害厚生年金が、亡くなった場合には一定の範囲の親族に遺族基礎年金・遺族厚生年金が支給されます。

 障害基礎年金・障害厚生年金の場合には、何らかの理由で負った障害の初診日の前々月までの期間に、遺族基礎年金・遺族厚生年金の場合には、亡くなった日の前々月までの期間に、一定以上の公的年金制度の保険料の未納(滞納)期間がある場合には、それぞれの年金を受け取ることができません。これを「保険料納付要件」(原則)ということもあります。「保険料納付要件」には特例もありますが省略します。

 これらの年金給付の他にも、国民年金には死亡一時金や寡婦年金、厚生年金保険には障害手当金の給付が用意されています。日本の国籍のない方が日本を出国する場合には脱退一時金があります。

 各種の年金給付などをまかなうために、公的年金制度の保険料を負担しているわけです。

 さて過去に海外勤務などの期間がある場合には、日本と社会保障協定を結んでいる国(「社会保障協定済み国」)か「社会保障協定未締結国」に派遣されていたのかどうかによって取り扱いが異なります。その国(「相手国」)に赴任していた時期は「社会保障協定未締結国」であったとしても、日本の公的年金制度からの老齢年金を受け取るような年齢になる頃には「社会保障協定済み国」であることもあります。

 海外赴任期間中は、相手国の公的年金制度に加入していたのか、日本の公的年金制度に加入していたのか、あるいは両国の公的年金制度に加入していた(二重加入)のかなどを記録しておく必要があります。

 赴任期間の長さ(相手国の公的年金制度の加入期間)によっては、相手国から老齢年金を受け取ることができる場合もあります。その場合の請求方法は各国によって異なりますので、その国の公式ホームページなどで事前に確認し、忘れずに相手国の実施機関に対して老齢年金の支給申請をします。

 余談ですが、国によって時効の考え方が異なります。日本の公的年金制度であれば、たいてい年金給付の時効は5年です。支給要件を満たしてから5年以内であれば、年金給付の支給の請求が遅れても支給が開始可能な時点まで遡って受け取ることができます。

 しかし、国によっては老齢年金は6ヶ月しか遡れない国があったり、請求時からの支給しか認めていない国もあります。相手国の公的年金制度の老齢年金の支給開始年齢は何歳なのか(支給開始年齢が引き上げられている国があります)、その何ヶ月前から支給申請を受け付けてくれるのか、支給の繰上げや繰下げは可能なのか(可能であれば申請方法)などは、事前に調べておく必要があるかと思います。

 さらに、人によっては、国民年金基金、厚生年金基金や確定給付型企業年金、確定拠出年金の加入履歴がある場合もあります。それらの年金制度からの老齢給付金の支給要件を満たしていれば、それぞれの個人別管理資産を管理している機関に支給申請を行って、支給開始年齢以降にそれらの老齢給付金を受け取ることができます。

 また、過去に公務員が加入する共済年金に加入していた履歴があれば、職域加算または年金払いの退職給付が老齢厚生年金(または退職共済年金)に上乗せされて、受け取ることになります。

 今回はここまでです。またよろしければ次回(3月31日予定)もお読みください。

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