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(54)年金についての一つの考え方 その3

公的年金制度である国民年金や厚生年金保険以外にも高齢期の資金確保のための制度を政府はいろいろと用意しています。国民年金基金、厚生年金基金、確定給付型企業年金、また退職年金や退職一時金制度でもある中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度、小規模企業共済制度などがあります。

 最近では、iDeCo(個人型確定拠出年金/以下、「個人型年金」)への加入がマスコミなどによってアナウンスされていますが、確定拠出年金の制度は平成13年(2001年)の施行された法律により設けられました。この法律により個人型年金は平成13年(2001年)10月から、企業型確定拠出年金(以下、「企業型年金」)は平成14年(2002年)4月から実施されています。

 iDeCo(個人型年金)は自らの意思で加入手続きをして、掛金を拠出しますので、個人型年金に加入していること自体を忘れることはマレであるかと思います。

 しかし、企業型の場合は掛金の拠出は企業(勤務先)が、運用は加入者である従業員が行います。さまざまな理由で自分の勤務先が企業型年金の制度を実施していることに関心がない、または意識していない方もおられるようです。まして過去の勤務先(転職する前の勤務先)が自分の勤務期間中に企業型年金を実施していたことを覚えている方がどれくらいおわれるのか、という点に注意が必要です。

 企業型年金を実施している会社を退職した場合、それまでの個人別管理資産をポータビリティー制度によって、転職先の企業型年金などや自ら選定した個人型年金(iDeCo)の口座に移換することなく、放置することが起きています。

 企業が企業型年金を実施する理由にはいろいろありますが、その1つには退職金制度の見直しがあります。それまでの退職一時金の制度を見直して、会社側が企業型年金の導入をすることが多いのではないでしょうか。

 すべてではありませんが、企業型年金は退職一時金の形態を変えた給付または代わりとなるものともいえます。在職中に積み上げられた個人別管理資産をポータビリティー制度により移換しないということは、退職一時金を放棄しているのに等しいともいえるのです。

 会社を退職後にポータビリティー制度により企業年金などの個人別管理資産を移換しない場合には、全額が現金化されて、月々手数料が引かれ続けることになります。つまり、将来受け取ることができたであろう年金給付の金額が減るのです。さら
に加入者だった方がそのことに気づかずにいれば、老齢給付金の支給の開始が可能な年齢になっても、請求もされずに放置され続けることになります。

 さて、この何十年もの間の公的年金制度の改革は年金額の切り下げの歴史でもあるともいえます。現在の日本の公的年金制度は、大小合わせて改正に次ぐ改正があり、また昭和61年(1986年)以前の公的年金制度の経過措置などもあったりで、本当に複雑(複雑怪奇ともいえます)になっています。近年では少子高齢社会でも公的年金制度が継続できるような改正も行われています。

 昭和であれば受け取っていた老齢年金だけで生活できたかもしれませんが、もうすでにそういう時代は終わっているといえます。「どうせ老齢年金なんてもらえない」と思って諦めている方もおられるようですが、では、老齢年金なしで高齢期の生活資金を確保できるのか、という問題が出てきますが、この問題に対する万人共通の「正解」はないように思います。

 しかし、公的年金制度以外の年金制度の利用も含めて、若年期から高齢期になるまでの期間の加入実績を地道に月々コツコツと積み上げていくイメージを持つことが大事です。

 公的年金制度を含めていろいろな年金制度からの高齢期の老齢年金(退職年金や退職一時金を含む)は、それまでの人生の積み重ねの結果をその時の年金制度(経過措置も含む)に応じて、支給開始年齢から受け取ることになるのです。

 ただ、残念なことにそうして地道に積み上げたとしても、思っているより受け取る老齢年金の年金額は少ないと感じる方も多いようです。だからこそ、もらい忘れまたは年金資産が眠っていることを失念することは避けたいものです。


 今回はここまでです。またよろしければ次回(4月7日予定)もお読みください。次回からは国民年金の第2号被保険者について取り上げていきます。

 なお、条文などを盛り込んでいる分、全体が固い感じになっているかと思ってはいますが、「こういう制度になっている」という根拠を示す必要もあるかと思って書いていますので、ご了解ください。

 そして「年金についての一つの考え方」というタイトルで今後も何か年金などを中心にアップする予定にしておりますので、そちらもよろしければ、お読みください。

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