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(52)年金についての一つの考え方 その1

 前回までで国民年金の第1号被保険者については終わりました。新年度からは国民年金の第2号被保険者・厚生年金保険の被保険者と第3号被保険者について、順番に(気長に)取り上げていく予定です。

 今回から3回に分けて、「年金についての一つの考え方」というタイトルで、高齢期の生活費の確保の一つのツールである「年金制度」について1つの考え方を提示できればと思っています。

 高齢期の前になって「自分の年金はどうなっているのか」と不安になって気にされる方も多いかと思います。簡単にいえば、高齢期に受け取ることになる老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、多くの方は20歳から、もしくは10代で就職された方は厚生年金保険の被保険者になって以降、高齢期になるまでに公的年金制度の加入実績の積み重ねが高齢期の老齢年金の年金額に反映されます。

 原則としては、支給開始年齢になった時点(支給の繰上げをしなければ65歳)で老齢基礎年金の支給要件を満たしていれば、老齢基礎年金を受け取ることになりますが、過去に厚生年金保険の被保険者であった期間があれば、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされるイメージです。

 老齢基礎年金を受け取るのに必要な最低期間が平成29年(2017年)8月1日から10年(120月)以上となっています。国民年金や厚生年金保険の保険料を納めた月数は、いずれも保険料納付済み期間としてカウントします。第3号被保険者だった期間もこの保険料納付済み期間に含まれます。

 国民年金のいろいろある免除制度の適用を受けた月数については、保険料の全額免除期間の期間はそのまま免除期間としてカウントしますが、一部免除の場合は、国民年金の保険料が免除されていない保険料を納付した場合に免除期間としてカウントします。もし免除されていない保険料を納めなかった場合は、未納(滞納)期間となります。

 学生納付特例や若年者の猶予制度により猶予された期間については、後日国民年金の保険料を追納した月は保険料納付済み期間としてカウントし、追納しなかった期間は老齢基礎年金の受給資格の有無を判断する材料としては、「未納(滞納)期間」としての扱いは受けません。

 こうして積み上げた結果、保険料納付済み期間、保険料免除期間、学生納付特例制度や若年者の猶予制度の期間(いずれも実期間)で10年(120月)以上あれば、老齢基礎年金の支給要件を満たしたことになります。こうして老齢基礎年金の支給要件を満たした場合に、次の段階として老齢基礎年金の年金額の計算に移っていきます。

 保険料納付済み期間はそのまま保険料納付済み期間として老齢基礎年金の年金額に反映されます。各種の免除期間は老齢基礎年金の年金額を計算するうえでは、保険料納付済み期間よりは低くなりますが、いくらかは反映されることになっています。
具体的にどれくらい低くなるのかについては、(37)(令和5年〔2023年〕12月10日の回)~(44)(令和6年〔2024年〕1月28日の回)を御覧ください。

 学生納付特例制度や若年者の猶予制度の期間は、老齢基礎年金の年金額には一切反映されません。この「保険料の免除」と「学生納付特例制度や若年者の猶予制度」の取扱いの違いに注意してください。

 このように支給開始年齢(多くの場合は65歳)になった時点ですべての過去の被保険者期間の保険料の納付状況などを集計して、老齢基礎年金の受給資格の有無を判断します。そして、老齢基礎年金の受給資格を満たしている場合には、老齢基礎年金の年金額の計算がなされるのです。

 老齢厚生年金についても、その支給要件を満たしていれば、支給開始年齢以降に老齢厚生年金を受け取ることになっています。厚生年金保険の被保険者期間中の標準報酬月額と標準賞与額をもとに平均標準報酬額が計算され、その平均標準報酬額と厚生年金保険の被保険者期間を元にして、老齢厚生年金の年金額が計算されます。

 今回はここまでです。またよろしければ次回(3月24日予定)もお読みください。

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