【卒業論文(中)】
前回までのあらすじ、とは言いませんが以下に目次をもう一度載せましょうね。
1. はじめに
2. 境界知能とは
3. 境界知能の現状と彼らが直面する課題
3-1.療育手帳を取得する際の自治体による基準の違い
3-2.境界知能の特別支援学校高等部への入学資格の違いについて
3-3.境界知能を有する家庭が特別児童扶養手当を申請する際の障壁について
4. 研究のゴールと社会的意義
5. 先行研究の比較から見る境界知能の現状と課題
5-1.境界知能の定義の変遷、各領域における境界知能の扱いなどのハード面における課題
5-2.実社会において境界知能が直面するソフト面における課題
6. 当事者への聞き取り調査
7. 支援の新たな可能性
8. 結論
前回(上)では、1~3まで載せました。
なので今回は4~6までいきましょうね。それでは以下で本編です。👇👇
4. 研究のゴールおよび研究の社会的意義
これまで境界知能について、どのような存在なのか、置かれている現状について述べてきた。それらの事例からこんにちの社会における境界知能にかかる課題を抽出すると以下のようになる。
・境界知能の定義が曖昧なため、以下のような課題が顕在化している。
① 境界知能に対する行政面での明文化された判定基準がない
② 境界知能に対し供給されているサービスに地域差が大きい
③ 上記2つの影響により境界知能への公正なサービスが供給されていない
これらの問題の根幹にあるもっとも大きな課題は、冒頭から述べているように我が国における境界知能の定義が確定していないことといえる。4章で詳述するが、我が国の境界知能の定義は他国の精神疾患マニュアルなどを参考にしているところが大きい。他国のマニュアルから境界知能の定義および記載が消えると、我が国の公文書から境界知能の記載が消えた例が過去に散見され、制度上非常にあいまいにされてきた歴史がある。研究の蓄積が浅い境界知能だが、彼らの抱える問題は顕在化しており放置することは彼らを社会的に排除することになる。五味ら(21014)が指摘するように、軽度知的障害あるいは境界知能の児童は発達の場面で遅れをとりながら学校や社会生活に参加する場面が多い。その中で周囲とのずれを指摘されたり、目に見える結果で突き付けられたりすると自己効力感の低さや孤立感を感じ、二次的な情緒や行動の問題(無気力、不登校、ひきこもり等)を抱えたりうつ病などの精神科症状が顕著になる。そういったことを防ぐために、我が国における境界知能の定義を定め、そこに準ずる形で諸制度の設置あるいは再調整を行う必要がある。よって本研究のゴールは我が国における境界知能の定義の必要性を当事者の声、先行研究の比較を通じ明らかにすることとする。定義が確立されることにより現行制度の中で境界知能を包括すべき箇所、新たに設定すべき制度が浮かび上がることは明確である。
また本研究の社会的意義は、境界知能の定義を行うことの必要性を裏づけることにあると考える。本研究では実社会で境界知能が直面する課題を先行研究が明らかにしてきた課題と照応する形をとり進める。また当事者への聞き取り調査を通じ、それらの裏付けをより強固なものにしている。よって本研究を通じ学術分野、実社会それぞれで境界知能が抱える課題を示し、課題解決の必要性を印象づけることになるだろう。
5. 先行研究の比較から見る境界知能の現状と課題
本章では先行研究の比較を行う。はじめに我が国における境界知能の定義の必要性を論じた先行研究を取り上げ、次に以下の2つに分けて先行研究の比較・検討を行う。
①境界知能の定義の変遷、各領域における境界知能の扱いなどのハード面における課題
②実社会において境界知能が直面するソフト面における課題
複数の先行研究を横断的に比較し、前章で取り上げた実社会で当事者らが直面している課題との結びつきを明らかにする。
最初に我が国における境界知能の定義の必要性について論じた先行研究を取り上げる。
内山(2020)は我が国と他国の知的障害および知的障害概念についての比較を行った際、知能指数について以下のように述べている。
「フルスケールIQのみを指標にすることが不適切であることは DSM-5、ICD-11、AAIDDの定義でも強調されている。多くの研究者や臨床家がより意味のある指標を使うべきだとしている知能指数(IQ)とのみ説明されており、それが比率IQなのか偏差IQなのかの説明もなく。どのような知能テストを使うのかは全く記載されていないのが問題である。」
以上より様々な指標でIQを用いることは不明瞭な基準をそのまま用いることであり、基準として不適切であるとされていることがわかる。この件に関して内山は私見も交えながら
「知能指数のみで知的障害の診断も、重症度分類は不可能であることは、これまで多くの関係者が指摘しており、それが、DSM-5、ICD-11、AAIDD第12版に反映されてきた。 さらに我が国では偏差IQと比例IQの区別もなく、また肝心の知能指数の信頼性や妥当性にも無頓着なままに IQ を絶対視する傾向がある。信頼性のない数値を盲信する事態が生じている。」
としている。内山の例は知的障害を対象としたものだが、知的障害を対象とする論考は境界知能にも当てはまる。その根拠として境界知能にも知的障害と同様、我が国における明確な定義が無いこと、国際定義において知能指数が用いられていることが挙げられる。境界知能は知的障害の下位分類にされていた歴史もあり、知的障害との関連は深いと言える。よって、知的障害の定義において発生している問題は境界知能にも当てはまると言える。その上で内山は知的障害の定義を定める上で、知能指数だけではなく次の3つの指標も取り入れるべきだと訴える。それは知能水準、適応行動尺度、発症年齢である。適応行動とは概念的、社会的、実用的なスキルの集合体であり、人々が日常生活で学習し実際に行う行動である。これらの標準と知的障害および境界知能とのずれを確認する尺度が適応行動尺度だといえる。また発症年齢についても知的発達障害の発症年齢がおおよそ21歳までとされることから、他の精神病との違いを確認するためにも21歳以下に限定するものといえる[31]。現在の日本では境界知能に対する研究は進んでいるとはいえない。その影響もあり、内山が挙げたような定義に必要なあらゆる尺度も集まっていないといえる。よって今後日本で定義を考案するにあたりまず必要なのは事例収集だと考える。
次に先行研究どうしの比較を行い、前章で取り上げた実社会での境界知能の課題との結びつきを明らかにする。
5-1.境界知能の定義の変遷、各領域における境界知能の扱いなどのハード面における課題
本節では、緒方康介『境界知能に対する福祉分野の懈怠と福祉心理学による貢献の可能性』(2021)、平田正吾、奥住秀之『境界知能についてのノート(2)~境界知能の現在~』(2023)の2つの先行研究を取り上げ、以下の分野で比較・検討を行う。
(1)境界知能の各マニュアルにおける定義の変遷
(2)他の知的発達障害と比較した時の境界知能の分類上の差
(3)公認心理士法に定められた実践領域のうち、教育、福祉、司法、労働分野における境界知能の現状と課題
それぞれを横断し比較検討を行う。
(1)境界知能の各マニュアルにおける定義の変遷
本節では3種類の精神疾患マニュアルを引用し、境界知能の定義の変遷を紹介する。なお今回取り上げるのは従来から知的発達障害の国際的な定義として用いられてきた世界保健機関の「国際疾病分類」(ICD)、米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル」(DSM)、米国知的・発達障害協会(AAIDD)によるマニュアルの最新版とする。
平田、奥住(2023)の分類は下の図の通りである。
(図5[32])
ここでは定義の変遷を確認することができる。
次に緒方(2021)から境界知能をIQによって定義してきたDSM内で、境界知能が他の知的発達障害と比べてどのような位置づけをされてきたかを明らかにする。1952~1968年までの間のDSM-1内において、境界知能は軽度精神薄弱と診断されていた。この時に境界知能とされていたIQはIQ70-85である。次に1968~1980年までのDSM-2内では境界知能は境界精神遅滞として精神遅滞に含まれていた。この時の該当IQはIQ68-83である。しかし1980年のDSM-3以降、境界知能は他の知的発達障害とは違い、正式な疾患として診断分類に搭載されることはなかった。この時の該当はIQはいIQ71-84とされている。なおこのIQ71-84は最新版のDSM-5内における境界知能のIQと定義されている。同様に図5で示したICD-11においても境界知能は知的障害には含まれず「認知機能及び自覚に関するその他及び詳細不明の症状及び兆候症状」の一つとして記載されている。こうした変化の背景には米国知的・発達障害協会の発表するマニュアルにおける境界知能の位置づけの変化、あるいは社会における知的障害概念の変化が挙げられる。
次に緒方(2022[33])を用いて福祉心理学の観点から境界知能が臨床的に困難に直面しやすい5分野の解説を行う。最初に緒方がまとめた公認心理士の実践領域5分野における境界知能の認識と支援に関する図を示し(図6)、その後に特筆すべき分野についての解説を行う。
緒方が示すように、医療・教育の分野では認識、支援がともに必要だという見方が強いことがわかる。一方で司法、労働、福祉の分野では認識はあるものの支援が行われていない、あるいはその逆の状態にあることがわかる。
ここではとくに教育、司法、労働、福祉の分野に関して取り上げる。
はじめに、教育分野における境界知能の位置づけ、認識、支援について紹介を行う。
教育分野における境界知能の課題は境界知能を特別支援教育の対象とするか不明瞭である、という点である。1953年に文部省次官通達「教育上特別な取り扱いを要する児童生徒の判別基準」において、IQ75-85の児童を「境界線児」と分類していた。そこにおいて境界線児は状況に応じて特別支援学校、特別支援学級、通常学級のいずれかを選択する教育的措置が必要とされている。次に1966年の「養護学校商学部・中学部学習指導要領 精神薄弱教育変解説」において境界線児は通常学級での指導、学級編成における特別配慮、状況によって特別支援学級を利用するという形での記載がある。なおいずれの場合も境界線児はIQ75-85の児童とされている。一方2018年の「特別支援学校学習指導要領解説 各教科等編(小学部・中学部)」においては境界線児の規定は記載されておらず、知的障害と発達障害の定義を記載するにとどまっている。
こうした定義の変遷を見ると、教育分野における境界知能の位置づけ及び定義はDSMに依るところが大きいと予想される。根拠として文部科学省からの通達に「軽度精神薄弱」という言葉が使用されていること、DSM内からIQを用いた境界知能の定義や境界知能自体の記載が消えたとたんに、我が国においての定義もされなくなったことが挙げられる。
仮にDSMに依る定義が主流だとしても特別支援学校における知的障害、境界知能の人数の増加から、我が国は境界知能に対する独自の基準を設け定義する必要があるといえる。
次に司法分野における境界知能の位置づけについて述べる。
緒方(2022)の作成した図のように司法の分野における境界知能は認識はなされていないものの、支援の面ではわずかにも理解がされているため△とされていることがわかる。先述した通り、境界知能は併存障害を持つ可能性が高い。中でも素行障害(犯罪との親和性の高い)を持つ場合、境界知能が犯罪に走る可能性は否定できない。その上で、司法の分野で境界知能に対する理解と支援は彼らへの公正な判断を行う上で重要な視点となる。その上で司法の分野で課題となるのが、境界知能が
① 刑法39条に規定される心神喪失・心神耗弱の対象となるか否か
② 刑事施設での処遇において考慮されるか否か
である。①の点において、緒方(2012)の調査をもとに示す。1999年~2012年までの判例を調べた緒方(2012)によると、合併症を伴わずに軽度知的障害だけで心神耗弱となった判例はなく、中等度知的障害でさえ単独であれば完全責任能力を認められた判例がリスト化されている。すなわち、軽度知的障害よりもIQの高い境界知能に関して、判断基準がそれのみとなる場合、そもそも完全責任能力を問われる可能性は十二分にあると言える。以下では、境界知能のみと判断され懲役刑となった事例と、併存障害があったために控訴審で無罪となった事例の2つを取り上げる。
1つ目の事例は被告人が抱える疾患が境界知能のみだったため、完全責任能力を問われ実刑判決を受けた事例である。被告人は羽田空港のトイレで出産したばかりの女児を殺害したなどとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた。この裁判は裁判員裁判で行われ、被告には懲役5年(求刑・懲役7年)の実刑判決が言い渡された[34]。被告は境界知能であることがわかっており、犯行に至った背景は周囲に相談できる相手がいなかったことなどが挙げられている[35]。この例では被告は境界知能の他に目立った障害は認められず、緒方(2012)で述べられているように完全責任能力を問われた結果となった。
一方で、第1審において境界知能の被告人の完全責任能力が認められたものの控訴審において無罪となった事例もある。該当件の被告人は統合失調症、間欠性爆発性障害(DSM-5にも登録されている、無目的で病的な怒りと攻撃性の爆発を特徴とするもの。多くの精神障害および一部の物質使用障害は攻撃性の増加に関連しており、間欠性爆発性障害と併存することが多く、鑑別診断を困難にすることが多い[36])、軽度アルコール使用障害、境界知能という精神障害を有しており器物損壊罪と傷害致死罪で起訴された。第1審は裁判員の参加する刑事裁判となった。判決は被告人の完全責任能力を認め、懲役刑となった。しかし控訴審で改めて鑑定を行い心神耗弱の上傷害致死罪における無罪を主張した結果、傷害致死の点において無罪となった[37]。
これら事例からわかることとして、完全責任能力の有無において境界知能だけでは免れることはないが、併存障害の程度まで考慮し(本件の場合は統合失調症)、鑑定などを行う場合においては完全責任能力の判断を健常者と同様の基準、あるいは境界知能のみの場合と同等の基準で測ることは妥当とは言えないということである。
次に労働分野における境界知能の位置づけと課題について取り上げる。
労働分野において境界知能は「障害者雇用の対象として含めるか否かが曖昧な存在」だといえる。障害者雇用促進法において1997年からは知的障害を含む療育手帳を取得している障害者の雇用が義務化された。しかし本論文で度々取り上げているように、境界知能に対しては療育手帳の交付の地域差が指摘されている。たとえ療育手帳を取得していなくとも公的機関などで「知的障害」と診断されていれば雇用の対象にはなるが、境界知能が知的障害と診断されることはまれである。
また障害者職業総合センターが障害者職業カウンセラーを対象に行った調査では法的助成の対象にならない障害者として「知的ボーダー(31.2%)」が最も多くを占めた。加えて自由回答では「ハローワークでは一般紹介窓口に相談に来られるため困る」「健常者との競争は厳しいため療育手帳の取得を勧める」「本人や家族に自覚が無いため障害者窓口にも引き継げない」という声が上がった。
以上のことから労働分野では境界知能の問題が認識されてはいるものの、法制度上、支援の方法はほとんど無いと言える。
最後に福祉分野における境界知能の位置づけを紹介する。
福祉分野における境界知能の課題は、「境界知能を障害認定するか否か」「境界知能に対し療育手帳を該当させるか否か」である。知的障害の認定となる療育手帳だが、先述してきた通りその基準は自治体によって様々である。IQが75を超え基準から外れる場合も少なくない。しかし東京大学のRe-search on Economy And Disability (READ) が行った調査では、境界知能と銘打って療育手帳を発行している自治体はないものの、IQが75を超える場合に、発達障害と合併していることを条件にしている自治体は存在した。
ここまで、教育、司法、労働、福祉の分野における境界知能の位置づけを確認した。各分野において境界知能への認識、支援のばらつきがあったことは明白である。そうしたばらつきがあるため、境界知能への支援が行き届かず彼らを取りこぼすことになっていると言っても過言ではない。境界知能は我が国においてはそれ自体が「障害」として認定されておらず、制度上も定義上も曖昧な「境界」に立たされているといえる。これらが招くのは境界知能に対する社会的排除の加速である。そういった現状を解消するためにも、国際基準をもとに新たな境界知能の定義を確立し、そこに合わせた法律をはじめとする諸制度を確立する必要があるといえる。
5-2.実社会において境界知能が直面するソフト面における課題
ここで言うソフト面とは境界知能と診断された若者への生活指導や、母子関係など制度が介入しえない部分のことである。本節ではそれらを取り上げるにあたって橋本創一ほか『軽度知的障害・境界知能の支援フレームと課題―医療・福祉・教育から考えるー』(2022)、五味洋一、志賀利一『特別支援学校高等部における中途退学者の実態と障害福祉サービスの連係』(2014)、中村由紀子ほか『発達障害を持つ児における反社会的行動の検討』を参照する。
五味ら(2014)では特別支援学校高等部において在籍する知的障害および境界域にあると考えられる生徒の生活指導面の課題として、不登校、いじめ、喫煙や異性との不健全な交遊などの対応に苦慮している学校が多いことを明らかにしている。また宮口(2019)が明らかにしている通り、非行少年の大多数が境界知能の周辺域であることもわかっており、非行から刑事事件に至る可能性も指摘されている。そうした現状に触れた上で五味らは「思春期から青年期に差し掛かる時期に、学校不適応等の生徒指導面の課題が表面化した場合、教育のみならず障害福祉サービスの活用方法の可能性についても新たに考察する必要がある」と述べている。
一方障害福祉サービスについて橋本ら(2022)は知的発達障害のある子どもと家族の支援において早期発見・早期対応の重要性に触れている。その上で子どもの発達の形が多用であるからこそ「母子保健事業と切れ目のない育児支援のような形で、親子を支えるサービスを検討する必要」を示している。従来の専門機関は母子保健事業と児童福祉機能が分離した形で存在しており、相談数の増加により待機時間の長さや提供できるサービスの限界が指摘されていた。
境界知能をはじめとした知的発達障害の早期発見・早期対応の重要さは中村ら(2016)においても指摘されている。中村らは境界知能などにおいて反社会的行動が見られた場合、保護者との協力をもとに環境改善を行うことが児童の症状改善につながると報告している。こういった面においても、令和4年6月に成立した改正児童福祉法に基づき設置される「こども家庭センター」は、現状の課題を解決することに繋がる可能性を秘めている。こども家庭センターの支援の可能性については後章で詳述する。
次章ではこれまで体験談ブログや先行研究で抽出した課題をもとに境界知能および、その当事者家族へ取材を行った内容の報告を行う。
6. 当事者への聞き取り調査
これまで、体験談ブログや先行研究をもとに事例の分析と課題の抽出を中心に行ってきた。しかし世の中には境界知能の現状を発信している人がまだ多く存在している。加えて5章で取り上げた境界知能に関する先行研究はごく一部であるが、境界知能に関する研究自体も豊富に行われているとはいえない。そこで本章では、境界知能およびその当事者家族に取材を行い、より実際に近い意見を収集した。
目的は境界知能の現状を把握し、より具体的な課題を明らかにすることである。これまで抽出した課題が当事者から離れた実際的ではない課題とならないようにすることが目的である。
以下、取材の詳細である。
インタビュー対象:ポダン様
手法:メール文面でのやりとり
質問内容:ポダン様のブログ内容に基づき設定。
……療育手帳の取得、高等特別支援学校の入学資格、特別児童扶養手当の給付について、学校生活における教員からの支援、私生活でポダン様自身にストレスが原因のような症状は現れたことはあるか、周囲のサポート体制の利用について。
これらをもとに得られた回答を紹介する。
① 長女さんは療育手帳をお持ちですか?
———持っていません。今のところ手帳が必要ではないと判断して取得していません。
② 特別児童扶養手当は受給していますか?
———受給していません
③ 高等特別支援学校には通っていますか。/通う予定ですか。
———通う予定はありません。普通高校を受験予定です。
④中学校内での長女さんへの具体的な支援内容 …「いよいよ三者面談」という記事で担任の先生に障害のことをお伝えされたことが書かれておりました。その後学校においてどのような支援があったのか、また長女さんの反応などお教えいただきたいです。通常級において先生方が境界知能の児童に向け、どのような支援を行っているのか、それを参考にさせていただきたいです。
———学校では、まず市に支援員の手続きをしていただきました。そのため、年度途中では支援はできずに新年度から(中3から)となりました。国語と数学の時間に、他生徒を見ながら娘も見るような形をとっているようです。ブログにも書きましたが、どうやら前々からそのような先生はいたようで、娘の他にも支援を受けていた生徒さんはいたようです。なので、特に気にならず過ごしているようです。学校には診断書も渡し、教師内で共有すると言っていただきましたが、学習面で先生方から特別に何か支援があるわけでもなく。自分で娘に合う塾に通わせ、学校には特に期待はしませんでした。
⑤リベンジ夜更かしについて …「リベンジ夜更かし」という記事の中で、日中に自由にできなかった代わりに夜更かしをすることで自由な時間を得ようとする、という旨の記載がありました。こちらは長女さんの事例だったかと思いますが、高橋様ご自身もストレスを感じ生活習慣や体調に変化があったことはありましたか?
———私本人は特にありません。
⑥ 周囲のサポート体制の利用ついて …高橋様のお父様の記事の中でカサンドラ症候群についての記載がありました。境界知能、発達障害当事者へのサポートが必要なことは間違いありません。しかしその家族にも相談できる環境は用意されているのか。また、境界知能当事者の親として地域コミュニティの中で感じることがあればお伺いしたいです。
———診断を受けた病院は、県で運営しているこども発達障害相談専門の医療機関でした。そのため予約はなかなか取れず(3,4か月後など)診察をうけ、発達障害の診断がでても、特に困っていることがなければ定期的に通うこともできず、突き放された感じがしました。
学校の先生方の負担が大きすぎると問題にもなっていますが、クラスに数人いると言われる境界知能の子供達を見逃さないようにどう救ってあげられるのか、行政で考えて欲しいなと感じます。
以上の回答より、主に教育の現場において、学校側も生徒自身も現行制度によって支援範囲が狭められている現状が明らかになった。内申制度をはじめ、保護者への配慮や子供同士で差を付けないことなどが学校側に求められていることがわかる。それにより、保護者が児童の知能をはじめとした些細な変化に気付くことができない事態も発生しているといえる。こうした学校側の支援の不充分指摘する声は他の体験談ブログにも載せられており、全国を包括した教育上の課題だといえる。
教育の現場で教員が児童のサポートを行う上で、やはり5章で示したように我が国における境界知能の定義を定めることは必要だといえる。定義を定め、知能や行動の面から指標をつくり教員、保護者双方で児童への支援を行える環境づくりが必要だといえる。
また「周囲のサポート体制」に関する質問の回答で得られた、中高生以上の境界知能をはじめとした支援を必要とする児童がどこの専門機関にかかればよいのかという疑問も解決する必要がある。聞き取り調査を行った方が示すように、目に見えて他害を行わない場合でも日常の些細なことで支援を必要としている家庭があるのも確かである。これまで支援を行う専門機関も千差万別であり障害福祉サービスの拡充は必須だといえる。
いよいよ次で最後です。
ぜひ最後までご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?