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詩人の孤独

詩人の孤独は少し変わっていて
全体的にぬるぬるしている
何故って自由を奪われることを頑なに拒み
涙を流しながらでも書き続けるから
それは文字通り掴み所がなく
常人にはその苦しみを捉えられない

ところがある時約束していたように
手慣れたカサカサの巨大な手が
むんずとそのぬるぬるの孤独を捕まえる
片方の手には運、もう片方には命とある

何が興ったのかもわからぬまま
孤独は頭に杭を打たれ
器用に背開きにされる
藻掻くほど痛みは増すとわかっても
どうしても藻掻くことをやめられない
こうして足掻いている自分をさえ
詩にしてしまおうと思っているのか

やがて鋭い串を通され
業火でじっくり炙られる
すっかり観念したかに見えたが
一滴また一滴と
絞り出した最後の涙が業火に爆ぜる
そこから生まれる例え難い魅惑の薫り
それこそがまさに詩と呼ばれるものだが
残念ながらどんなに心惹かれても
所詮は薫りだから値の付けようがない
しかし薫りだから今度こそ
二度と誰にも捕まることもない

詩人の孤独から生まれた詩は
ぬるぬるすることもなく
かと言って乾いてしまうこともなく
自由に人々の孤独の中を
明滅しながらいつまでも泳ぎ続ける

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