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案山子

煤けた竹の一本足
老農が描いた不格好な目で
遥か海の向こうを見ていた案山子
山のように繁茂する食べ物が
海を渡って押し寄せてくる

誰一人いなかったのだ
目が潰れた者など
簡単なことだったのだ
残ったらただ捨てればいい
燃えるゴミとして

肩に雀を遊ばせて
背中に夕日を染み込ませ
農夫たちの悲鳴を聞きながら
彼はいったい何を待っていたのか

拾われなかった落ち穂の上に
コンクリートが流し込まれる
気づけば元気な子供たちの
遊ぶ声はなくなっていた

コンクリートの上では立てない
煤けた竹の一本足
表情変えずぐりぐりと
裏切り者の胃袋に
穴ほじくって突っ立っている

ひもじさが結んだへの字口で
もう肩に止まる雀もいないまま

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