令和5年2月より介護職員の給料が6,000円上がる? そんなに上がりません
介護施設に勤務している人であればほとんどの人が既にニュース等で知らされていると思いますが、来年2月より介護職員の給料が6,000円上がるというものです。
これ、前回の令和4年2月から9,000円上がるというニュースが出た時もそうでしたが、金額だけ独り歩きし結局その金額をもらえない人が「9,000円なんてもらえてない」「施設のお金になって経営者が横取りしてる」等、仕組みを理解できてない人が大勢いるので、ちょっと説明してみたいと思います。
そもそも、処遇改善手当の類はきちんと国に報告しなければならなく、また、この報告書を作成するには、誰にいくら手当を支給し、いくら賃金が改善できているのかを出し、それをまとめて報告することになっています。
現在は総額の記載だけでいいですが、数年前までは一人一人の給与と手当を記載し提出していまました。
つまり、総額を出すには一人一人の手当の詳細等を計算した書類が必要になりますので、その書類は提出を求められたときに出せるようにしておかなければならなく、どの法人も残っているはずです。
なので、よく言われる施設のお金になっているとか、本来もらえない人に支給されているとかは、ちょっと難しいかなと思います。
では、この6,000円上がると報道されているにもかかわらず、なぜその金額が上がらないか、まずこの金額の根拠について説明したいと思います。
まず、処遇改善手当等は加算の算定をしていない事業所にはお金は入らないので、当たり前ですが手当の支給はできません。
そして、この金額は平均的な介護報酬に交付率(各サービスごとに決められた数字)を乗じて出した数字を、介護職員の人員基準で決められた人数で除した額が一人当たりの金額になるわけです。
例えば特別養護老人ホームの人員基準は3:1であり、これは利用者3人に対し職員1人いればいいということです。29名の特養であれば、介護職員は10名いればいいことになります。
つまり加算額を10人で分けると6,000という数字が出てくるわけです。
しかし、問題はこの人員基準で決められた人数で除すところにあり、実際に国で決められた人員基準で施設運営をしているところなんてほとんどありません。
この10名というのは、実際に勤務している人数ではなく休みの人や夜勤で来る人も含めた在籍している人数の事です。
どう考えても10名じゃやっていけませんので、私の施設では利用者29名に対し介護士の常勤換算が17.2、看護師の常勤換算は2人の合計19.2人いるわけです。
(これは非常に人員配置が厚いですが)
そして、この6,000円上がるという手当は全職員に支給していいことになっていますので、これを介護職と、その他の職種の人にも配分するとなるとさらに金額は少なくなり、また6,000円というのは手取りではなく社会保険料等も含めた金額であり、さらには法定福利費という事業所で負担する社会保険料も含めていいことになってますので、実際は半分程度の手取りになる人も多いのではないかと思います。
国もそういう説明がないのは悪いですが、もらう側ももう少し制度や仕組みを理解し、文句を言う前に学びが必要かと思います。
ちなみに、この6,000円は既存の介護職員等ベースアップ等支援加算に上乗せされるため、この加算も算定していない事業所にはお金は入らないため手当もつきません。
その他の手当も加算自体を算定していないともちろんつきませんので、まずはそこを確認した方がいいと思います。
意外に働いてる人でも、自分の手当が何によってついているのかわかっていない人が大勢います。その辺もきちんと理解していた方が自分のためになると思います。
いずれにせよ、介護職員は給料が低いと言われてきましたが、ここ数年で劇的に上昇しています。
介護保険制度開始以前は毎年公務員並みに昇給していってたようですが、介護保険制度開始以降は確かに介護職員の給料は低かったのは事実です。
しかし現在は他産業並みに並んできている法人も多くありますが、やはりこの法人によって大きく違うというのも問題がありますね。
ただ、他産業は給料が低くても国からの支援はほとんどありません。
ある意味介護業界は恵まれている部分もあります。
その辺も含め働いている人たちの意識ももっとこういうところに向いていくといいなといつも思っています。
それではまた。
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