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最寄りが渋谷の人

いつかの昼休憩、蕎麦屋にて、向かいに座る2人の会話。

「休みの日とか、何してるん」
「ジム行ったりとか、ですかね」
「ええなぁ、ジム。他にはなんかあるん」
「色々、忙しくしてますよ」
「どんな」
「いやぁ、何があるって訳じゃないですけど、色々です」

関西訛りの先輩と、どうやら関東出身の後輩だ。
注文していた蕎麦が席に届く。
私のもとにも続々と届き、七味をたっぷりかける。
私は辛いものが好きだ。特に唐辛子の辛さが好きだ。
唐辛子にハマったのにはきっかけがあるのだが、それはまた今度。

「先生は、お休みとかないですよね」
「無いなぁ休みは」
「そうですよね」

ですよね、休みってないですよね。
ゴロゴロしてると終わっちゃうもん。
あ、でも彼女はジムに行ったり色々とやることがあるタイプなのか。そして彼は本当に休みがないの、無いだ。

「出身どこなん」
「東京です」
「そうなんや、どの辺に住んでるん」
「渋谷です」
「渋谷?」

ん?渋谷?

「はい、渋谷です」
「あ、なんか、代官山とか?」
「同級生には代官山に住んでる人とかいますね」

え、どんな地区で生まれ育ったの?
絶対に高級住宅街の人じゃん。

「え、タワマン?」
「いやぁ、タワマンでは無いですけど」

本当の金持ちは地に足がついてるとスーみかさんが話してたな、そういえば。金持ち=タワマンは間違えてないが間違えている!ということを私は知っている。
地面に足がめり込んでるそうだ。

「へぇ、俺、大阪出身やから。すげぇな」
「大阪なんですね!私、あべのハルカス好きです」
「えぇよな、ハルカス」

あべのハルカスって、建物だよね?
好きっていう概念あるのか。
あ、でも私も寺社好きだし同じ感覚なのかもしれない。

「はい!キャラクターが可愛いんですよ!!」
「なんの?」
「あべのハルカスのキャラクターです!!」
「あ、そこなん?ほら渋谷のヒカリエとかなんとかの方がええんちゃうん」
「ヒカリエにはキャラクターいないですから」
「わからんなぁ」

うん、わからん。
ずっとわからん。
そもそもヒカリエも建物で、そのキャラクターがいるかどうかで好き嫌いが決められるのか。それなら飲食店も会社も食べ物にもキャラクターをもっとつくるべきだ。
人の価値感というものはつくづくわからない。

「でさ、最寄りどこなん」
「あ、渋谷です」
「ほんまの渋谷?」
「はい、渋谷です」

今時は最寄りを聞くのはあまり良くないと聞くが、渋谷が最寄りと言われるならば聞いてみたい気もする。
渋谷だなんて、相当なお金持ちなんだろうなと上京して9年も経つとわかる。きっとあの辺りなのだなと目処がつくようになってしまった。

そんなこんなで他人の会話をを聞いている間に蕎麦を食べ終えてしまった。混んできたしと席を立ち、また仕事に戻るのだ。

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