小説:柴犬の足
我我が家の柴犬の後ろ脚は2本とも切られてしまった。
医者がいうには、両足とも腫瘍がたまりにたまっていて、切るよりほかに仕方ないとのことだ。
父も母もかなりショックを受けていて、我が家はちょっとしたパニック状態だったが、しかし切られた方は案外平気そうな顔をしている。病院から戻ってきた時も、母に抱きかかえられながら、キョトンとした目でとぼけた顔を作っていた。もちろん両足はキレイさっぱりなかった。
足がなくなっても、彼を散歩に連れて行かなければならない。そして彼が四本足だったころから、それは私の担当だった。
足を失くした犬用の台車というのがあって、それをつけて散歩に出かける。台車は可動域が小さいから前にしか進めない。おまけにちょっとした段差も乗り越えられない。それでも犬は前足をぎこちなく、一所懸命に押し込み、その度に台車ごと体をコロコロと進ませていた。
かわいい、と私は思った。しかし誰にも言うことはできない。こんな不謹慎な気持ちを
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