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かけっこ3

 
 兎と亀が再びレースをすることになった。今回はただのレースではない。乗り物でゴールを目指すレースという、ちょっと変わったルールで競うことになった。
 兎は、「速さこそ正義!」と信じて疑わないタイプ。彼女はロケット型のスケートボードを選んだ。

 一方の亀は、「確実性が大事!」という哲学を持っていて、一見すると遅そうな、非常に安定した乗り心地の、カタツムリ型自動車を選択した。

「よーい、どん!」

 スタートの合図と共に、兎は爆速で飛び出した。しかし、彼女が見落としていたのは、そのスケートボードが非常に操縦しにくいという点だった。加速するたびに方向を見失い、思わぬ方向に飛んでいく。

「ビューン、ビューン!」

 一方、亀はのんびりとしたペースでカタツムリ型自動車を走らせていた。

 彼は途中で花畑を見つけ、思わず立ち寄ってしまう。

「レースより、この美しい景色を楽しむ方が大切だよな」
 亀は心からそう思った。

 結局、兎はスケートボードを操れず、木にぶつかってしまった。

「へにゃへにゃへにゃ!」


 一方の亀は、花畑でのんびり過ごした後、ゆっくりとゴールに向かった。

 ゴールに最初に到達したのは亀で、待っている間に、兎はやっとゴールにたどり着いた。兎は息を切らしながら亀に言った。

「どうしてまた負けたんだろう」

 亀は微笑みながら答えた。

「大事なのは速さじゃない。道中で何を見つけ、何を感じるかだよ。それに、勝ち負けが全てじゃない。お互い笑える経験をできたら、それが最高の勝利だと思うよ」

 兎は亀の言葉を聞いて、少し恥ずかしくなったが、同時に心から笑うことができた。
「君の言う通りだね。今日は本当に楽しかったよ」

 二人は次回の乗り物レースでの再戦を誓い合った。

つづく

 

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