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秘密戦隊カッパジャー 第9話

第9話:ガソリンスタンド

 夜のガソリンスタンドは静まり返っていた。風が吹くたびに、錆びた看板がかすかな音を立てて揺れている。
 ケンタはいつものように深夜シフトに入っていたが、その夜は特に静かだった。薄暗い店内には、古い蛍光灯がチカチカと点滅していた。突然、外から異様な音が聞こえてきた。ケンタは不審に思い、店の外に出てみると、荒廃した姿の男がフラフラとこちらに向かって来ているのが見えた。

 男の衣服はぼろぼろで、顔は泥と傷だらけだった。
「大丈夫ですか?」
 ケンタが声をかけると、その男はいきなり飛びかかってきた。
 男の目は血走り、狂気に満ちた顔で、口からは異様な音を立てていた。
 ケンタは必死に男を振り払い、ガソリンスタンドの店内に逃げ込んだ。
 店内に戻ると、ケンタはすぐにドアを閉め、鍵をかけた。心臓が高鳴り、汗が額に滲む。しかし、外には同じような姿の人々が次々と現れ、ガラス越しにこちらを見つめていた。

「ゾンビだ…」

 ケンタは恐怖で震えた。突然、ドアが激しく叩かれた。そこには皮膚が灰色に変わり、顔色の悪い男が立っていた。男の目は濁り、口からはよだれが垂れていた。
 
 ケンタは足がすくんだが、冷静になり、武器になりそうなものを探し始めた。
 古びた棚には、車の修理の時に使うモンキーレンチやドライバーなどの工具が並んでいた。彼は錆びた鉄パイプを手に取った。

 外のゾンビたちはドアを叩き続けていた。次の瞬間、ドアが破られ、ゾンビたちが店内になだれ込んできた。ゾンビの呻き声が夜の静けさを切り裂く。
 ケンタは錆びた鉄パイプを振り回し、必死にゾンビたちを押し戻そうとした。その時、急いで近づいてくる足音が聞こえた。誰かが来ている。

「ここにいるのは危険だ。一緒に外に出よう!」

 一人の男が現れた。彼は黒いジャケットを着ていて、手には懐中電灯を握っていた。懐中電灯を灯し、一面の闇を払う。照らされたのは、ただの古い倉庫で、地面には古ぼけたロープが風に揺れていた。ポタポタと水滴が落ちる音は、天井からの雨漏りだった。

「このままではラチがあかない。ガソリンスタンドごと焼き払おう」と彼は言った。ケンタは黙ってうなずき、二人はガソリンスタンドの計量器や地下タンクに火をつける準備を始めた。

 ケンタは倉庫のドラム缶を倒して、ガソリンをまき散らした。男はポケットからライターを取り出し、火をつけた。
 月明かりが二人を照らす中、火は計量器や地下タンクまで勢いよく燃え広がっていった。
 ゾンビたちは火の海に包まれ、苦しそうにうめき声を上げながら倒れていった。しかし、火の中で立ち上がるゾンビの姿もあった。

「くそ、もうダメだ!」

 町にはゾンビの群れが広がり、恐怖の夜が幕を開ける。


 そのとき、「トゥー」という叫びとともに、赤カッパが現れた。
赤カッパ:「もう大丈夫だ!」
桃カッパ:「私たちに任せて」
赤カッパ:「流水の壁!」
 水のドームが瞬時に形成され、二人を包んだ。

 そして、他のカッパたちも現れた。
緑カッパ:「くっ、酷いな。彼らはもう人間ではない!」
青カッパ:「氷結の消炎!」
 青カッパが叫び、凍てつく風と共に氷の槍を放ち、炎を鎮火させた。
ゾンビ:「うがっ、うがっ!」

黄カッパ:「光の力で真実を明らかにしよう!」
 眩しい光がゾンビたちを包み、動きを封じた。

緑カッパ:「さぁ、目を覚ますんだ!」
 大地から伸びる蔦がゾンビたちを絡め取り、動きを止めた。

ゾンビ:「ん?うがっ…!」

 最後に、桃カッパが前に出た。
桃カッパ:「あなたたちの心を癒してみせるわ」

 桃カッパが優しく微笑み、癒しの光を放った。それがゾンビたちを包むと、彼らは次々と目を覚ました。

人間:「あれ? 俺たちいったい、こんなところで何してたんだ!」
 彼らは困惑しながら立ち上がった。


ケンタ:「ああ…信じられない…元に戻ったんだ。ありがとう」

桃カッパ:「どういたしまして、ケンタくん。無事で良かったわ」

ケンタ:「でも、どうしてゾンビが急に人間に戻ったんだ?」

赤カッパ:「それは、桃カッパの癒しの力のおかげさ。彼女の力は、体と心を癒して、本来の姿に戻すことができるんだ」

桃カッパ:「私の力は、自然のエネルギーを使っているの。だから、ゾンビの体が本来の健康な状態に戻るように働きかけるの」

ケンタ:「なるほど…桃カッパ。そして赤カッパ、助けてくれて本当にありがとう」

赤カッパ:「どういたしまして、ケンタ。これからも気をつけてな」

桃カッパ:「そうね、でもまた何かあったらいつでも頼ってちょうだい」

ケンタ:「うん、ありがとう。みんなのおかげで助かったよ」

緑カッパ:「これでまた一つ、平和が戻ったね」

黄カッパ:「うん、みんなが安心して暮らせるようになったね」

青カッパ:「みんなの力で、これからも守っていこう!」


 こうして、カッパジャーたちはゾンビたちを人間に戻し、再び平和を取り戻すことができたのだった。

つづく


 

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