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日本当局、3日に為替介入は実施せず


日本当局が3日に実施した円買い介入の可能性は低いことが、日銀当座預金の分析から示唆された。

日銀が5日に公表した当座預金残高の数字は、ほぼ民間の事前予想通りだった。昨年の大規模な円買い介入では、日銀の当座預金の数字と政府の資金フローに関する民間短資会社の推計の間に大きな乖離があった。しかし、今回はそうした乖離は見られず、円安が進んだ後も日本当局が介入しなかったことが示唆された。

セントラル短資総合企画部の髙浜陽介課長は「きょうの財政等要因の金額が事前の予想からあまりずれておらず、為替介入は実施されていなかった可能性が高いのではないか」と話した。

3日のニューヨーク市場では、米国の労働需要が引き続き底堅いことを示す8月の米求人件数が発表された後、円が昨年10月以来の安値となる1ドル=150円16銭まで下落。そこから数秒間で約2%上昇し、147円43銭まで急反発するなど、荒い値動きとなった。

一時的な急反発の背景には、市場が神経質になっていた上、節目である150円を割り込んだことに反応した取引アルゴリズムが組み合わさった可能性なども考えられる。

ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎シニアエコノミストによれば、日本銀行がディーラーに相場水準を尋ねる「レートチェック」やオプション絡みの取引で市場が動揺した可能性が有力視される。

財務省高官らは4日、介入を行ったかどうかについて明言を避けた。トレーダーらに当局の行動について臆測を続けさせ、投機筋との心理戦で防衛を強めるためとみられる。

アナリストらは、数カ月にわたる警告の後に当局が行動したとしても驚きではないとしながらも、3日の出来事には昨年の3回の介入によるような効果はなかったとの見方でおおむね一致している。当時の介入総額は600億ドル超だった。

りそなホールディングス市場企画部の石田武為替ストラテジストは「日銀当座預金増減要因については、財政等要因のところで何かしら大きな数字が出てくるはずなので、無かったということは、少なくとも実弾の介入はやってないということだと思う。神田財務官は、それに対してやったともやってないとも言っていないわけで、3日の値動きにうまく便乗した形になった。うまく対応したかなと思う」と述べた。

「介入じゃなかったとしても150円前後でこういう動きがあったということは、逆に言えば市場も疑心暗鬼、150円は怖いというのがあったと思う。市場が勝手に150円が上限だと考えたのだと思う。疑心暗鬼の払拭には時間がかかるだろう」と続けた。

インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、「日本当局はドル高基調が変わり円安を止めるまで時間稼ぎをしたい」と述べ、「足元で世界的に起こっているドル高基調を押し返すのは難しく財務省の当局者には慎重さが求められる」と指摘した。

まとめ

日本当局が3日に円買い介入を実施した可能性は低い。日銀当座預金の分析から、介入による財政等要因による残高の増加は見られなかった。

3日の円安急落は、市場の神経質な反応や、レートチェックやオプション絡みの取引によるものと考えられる。

日本当局は、円安を止めるために時間稼ぎをしたいと考えており、介入を慎重に検討している。

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