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令和版 七夕物語


織姫という女の子と、彦星という男の子がおりました。

あるとき、二人は出会い、あっという間に恋に落ちました。

寝ても覚めても、考えるのはお互いのことばかり。

あまりに好きすぎて、お互い嫉妬したり、疑心暗鬼になって不信感をいだくようになってしまいました。

大事な存在のはずなのに、無意識にお互いを傷つけあうようになってしまったのです。

彦星「君は仕事ばっかりして、僕のことなんてどうでもいいんだよね!」

織姫「そんなことないわよ!私のこと信用してないのね!ひどいわ!」

あるとき、二人の前に神さまがあらわれました。

「おふたりさんや。突然だけど、これから二人に課題を与えるよ。大変つらい、過酷なテーマかもしれない」

彦星と織姫「な、なんですか?早く教えてください!」

神さま「別れるのだよ。今すぐ別れなさい。これは究極の課題ですぞ」

彦星と織姫「・・・・」(ショックすぎて言葉にならない)

神さま「なんでかっていうと、お互いを信じてないからです。近すぎてお互いが見えなくなっています。離れることで、みえてくるものがあります。これは強制的にやらないと、できないことなのです。大変過酷な修行ともいえるでしょう。ふたりにとっては地獄のような、のたうち回るような苦しみかもしれない。そしていつまで修業が続くかもわからない。でもね、それをお互いが乗り越えた先には、素晴らしいものが待っているよ。まだ二人とも未知の世界のことだよ。そのときはファンファーレが鳴り響くことでしょう」。

そう告げると、神様の姿は見えなくなってしまいました。

と同時に、織姫と彦星は、強制的に別空間に移動させられました。

一瞬のことだったので、二人は別れを惜しむことすらできませんでした。

織姫と彦星は突然離れ離れになってしまい、毎日泣き暮らしました。

そんなある日のこと。

織姫「泣いてても何も始まらないわ。仕事の依頼がたくさんきてるんだった!さ、仕事仕事!いい布織り上げるわよ!」。

女子は強し。

会えない寂しさや悲しみ、胸をしめつけられるような苦しさを覚えることもありましたが、何気ない日常をすごすことが、彼女を救ってくれました。

一方の彦星。

輝くばかりの勢いはどこへやら。

酒におぼれ、仕事もまったくはかどらなくなりました。

思い出すのは織姫のことばかり。

彼のハート💗をズキューンした、織姫のはにかんだ優しい笑顔。

彦星「バカだな俺は。一番大事なものを失っちまって。そして、なんだよ!この俺のていたらくさは」。

後悔ばかりの毎日。

毎日涙が枯れるほど、悲しくて寂しくて、彦星は泣き続けました。

織姫に会えなくなったことがあまりにショックですぎて、自分が何者であるかさえ、忘れてしまいました。

彦星「俺って、そういえば、名前なんだっけ?思いだせねーや」

彦星は毎日が苦しくてたまりません。

地獄のような苦しみです。

ああ、もっと大事にしてたらな。なんで信じなかったんだろうな。ばかだな、おれは。

月や星を見ては、織姫を思い出していました。

こんなにつらい経験は人生初めてです。

会うことはおろか、顔を見ることも、声を聴くことも、連絡をとることすらできません。

あるのは自分の記憶の中にある織姫の顔と声だけ。

毎日毎日、織姫のことを思って暮らしました。

彦星「こうなったら、修行を早く終わらせるために、どんなことも受けて立ってやる!こんな修行、なんてことないさ!強くなって、器も大きくなって、織姫を迎えにいくぞ!」

どん底まで転げ落ちるように、落ちまくり、風前の灯火状態の彦星でしたが、起死回生を固く誓いました。

酒なんて飲んでる場合じゃねーな。断酒だ、断酒。

部屋中に「断酒」、「復活」、「這い上がってやる!」、「彦星の時代がきた!」、「織姫愛してる💙」と、筆で書いて、貼りまくりました。

月日はたち、1年半が過ぎました。

それぞれの元に神さまがあらわれました。

神さま「君たちのがんばりは、それぞれよーく、みちょるけんねえ」とどこの方言だか、よくわからない話し方の神様。

「ここまでよくぞ過酷な修行に耐え、それぞれの孤独に耐えたことに、ちょっとしたご褒美をあげるぞよ」

彦星・織姫「ほんとですか?!何ですか?ご褒美って」

神さま「まだ道半ばだから、ほんの少しだけど、チラ見させてあげるよ。会いたいだろうから」

彦星・織姫「(うれしすぎて言葉にならない)」

神さま「でも、しゃべれないし、近くにもよれないよ。一瞬だけだからね」

「その前に、中間報告として、それぞれ、今の感想述べてくれる?」

織姫「他人がなんていおうと、私たちお互いがよかったら、それでいいことなんだなって思った。目の前の状況がどであろうと、信じるってことなんだとおもいます。自分を感じたままを信じる。二人のことは、二人にしかわからない」

彦星「出会いは、当たり前じゃなく、たくさんの奇跡が重なってるってこと。大事なのは俺がどうしたいか?どう感じているか?それを素直に表現するだけだってこと。他人からどう思われよーと、俺は俺でいいんだ。怖がる必要はなにもない。思い切ってぶつかれ、俺!」

神さま「いいね、いいね!その調子!ぐんぐん、成長してるね二人とも。さあ、今から七夕タイムだよ。ストロベリーフィールズで会わせてあげるから。ほんの一瞬だからね」

彦星「あれは織姫!」

織姫「あ、彦星だわ!」

2人はすれ違いざま、ほんのちょっとだけ、時間にして、5秒ぐらい、会うことができました。

一瞬の出来事でした。

だから、目を合わせることも、お話することも、できません。

彦星「変わってねーなー、織姫のやつ!」

織姫「気づいてるのかしら?あの人」

それはとってもかけがえのない時間でした。

神さま「二人とも頑張ってるから、おまけでもう1回合わせてあげるよ」

(織姫と彦星、もう1回、すれ違う)

織姫「もう!あの人ちゃんと気づいてるのかしら。まったくツンデレのところは、変わってないわね!まあ、そんなところも、かわいいから、ゆるしてあげるけど」

彦星「まじかよ、まじかよ!10分の間に2回も会わせてくれるなんて、泣けるぜ。これで明日からまた頑張れる!みててくれ、織姫!絶対迎えにいくから!待っててくれよな」

2人にとって、ほんの秒単位の逢瀬でした。

だからこその奇跡なんです。

縁がなかったら、すれ違うことすらありませんから。

真っ暗闇から、ほんのちょっと明かりが見えてきました。

こうして、二人の絆はより深まって、強固になっていったのでした。

彦星「愛してるぜ、織姫💙」

織姫「ダイスキヨ、彦星💗」

(終り)

※別ネームで投稿している物語をこちらにも、投稿いたしました。






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