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ロットリング600と恩師


中学時代、ロボットを作る部活動に入っていてロボコンを目指していた。顧問の先生が技術の教師で、面白い人だった。ロボット製作だけでなく様々なことを教えてもらった恩師だ。
そんな先生との文房具の記憶を思い出したのでnoteに残しておこうと思う。


部活終わりに「シャーペンに金を使いすぎている」とシャーペンの話を同級生2、3人でしていると、顧問の先生が「シャーペンにそんなにお金使ってるのか?」って話題に入ってきた日があった。
私はそのとき、ポケットにロットリングのラピッドを挿していて、繰り出し消しゴムとダブルノック機構があるラピッドは一本だけ持ち歩くのに最適だった。余談だが、他にぺんてるのタフも繰り出し消しゴムがついていて中学の時はいつもラピッドかタフを持ち歩いてた気がする。一本で「書く」と「消す」が完結したペンが好きだった。ラピッドに関しては、今ではいつのまにか廃番になっていた。「予備の一本を買うべきだった」とまだ後悔してる。
そんなロットリングのラピッドからロットリングの話になって、先生は「ロットリングなら600だ」って言ってたのを覚えている。先生がなかなかシャーペンに詳しいことに驚きと嬉しさを感じた。
「やっぱフルメタルだろ」的なことを言ってたような気がした。今思うと、先生はロボットの話においても剛性についてうるさかったから全金属軸の600を推したのはわかることだ。
中3当時、部活を辞めるときに先生に600を感謝のプレゼントとして贈ったらどうだろうとチラッと思ったことがあったけど、結局送らずじまいで卒業してしまった。

中学の時に俺は600を持ってなくて、なんなら買ったのは高校に入ってからだった。ロットリング600に対して、個人的には「涼宮ハルヒの憂鬱」のイメージが強い。私は中学生時代にハルヒを見て大ハマりしたが、アニメを見てる時でも自分の文具好きぶりが遺憾無く発揮されて、主人公のキョンが使ってたシャーペンがロットリング600のシルバーだと気づいた。「文具もハルヒも好きな自分としてはいつか買わなくては」と常々思ってて、高2の4月にようやく買った。なかなか購入に踏み切れなかったのは他にも欲しいペンがあったからだけど、シャーペンで3000円は高いなと感じていたのもあった。

これだけ色々ロットリング600の話をしているが、実際に使ってみるとガッカリしたペンの一本だ。個人的な感想だがロットリング600は実用的なペンではないと思う。
3000円台の高級製図用でフルメタルというこれ以上ないくらいの高スペックで、尚且つ恩師が選ぶほどのペンという入手前の良いイメージの一方で、その実態は扱いにくい実用に不向きなペン、それがロットリング600だった。
600は全金属軸だけど、その特徴は必ず長所になるものじゃない。確かに剛性があって耐久性には優れているけれども、重量は格段に増加する。600の重さは25gで、シャーペンではかなり重い部類に入り、長時間の筆記は疲れる。さらには、グリップだけでなく後ろの軸も金属だから高重心になって手にかかる負担は大きい。
他にもダメな部分はある。短くて細いローレットグリップは高重心ボディと相性が悪い。鉛筆並みに細いグリップはペンを握って固定するのに強く握り込む力がいる。ただでさえ高重心で疲れるのにグリップはそれを悪化させている。滑りにくいローレットグリップでも、ペンのバランスの悪さからなるこの握りにくさを改善させることはできていない。とにかく持っていて疲れるペンだ。ペンの握る位置を後ろ気味にして重心を少しでも握ってるところに近づけようとすると、グリップが短くてペン先にあるから、それもできない。嫌がらせのような構造をしている。
一言で言ってしまうと600は書きにくいシャーペンだと思う。デザイン性や質感は優れていて有名アニメにも登場するペンだが、結局は道具としては使いにくいものだと考える。
中学時代を通じて、先生やアニメなどから自分に多大な影響を与えたロットリング600は、高校生になって手に入れてみると大したことのないものであった。拍子抜けしたような感じだった。

恩師の話に戻るが、先生はロットリング600を推していた。先生は果たして本当に600が好きだったんだろうかと疑問に思う。先生は技術の教員として、ロボ製品や道具などには実用的であることを求めていたはずだ。授業や部活動でもそれは自分にひしひしと伝わっていた。先生は文具においても同じことだと思う。シャーペンに実用性を求めるのが先生だと信じている。
中学校の3年間で、先生が600を持っているのを自分は見たことがない。
これはあくまで推測だけど、先生はその剛性感やデザインの武骨さに惹かれただけで、使ったことはなかったんじゃないだろうか。そうでなければあのペンをイチオシにはしないだろう。ロボット製作であれだけ「剛性だ剛性だ」と話していたのだからおそらくそうだろう。先生に恩返し出来なかったのは申し訳ないが、卒業のときに600を先生に贈らなかったのは結果的に良かったかもしれない。もしかしたらロットリング600は先生にとっても使いにくいペンかもしれなかったからだ。道具は実際に使ってみなくてはわからないものである。いつか先生に会う機会があれば、600の話をしてみたいと思っている。

ロットリング600。懐かしい思い出やアニメを思い出させてくれるペンだが、書きやすいとは思えない。色々と複雑な思いがこもったペンだ。決して嫌いなペンではなく、ときどきペンケースに入れているペンだ。手に入れたことに後悔はしていない。

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