見出し画像

【詩】微笑みのしるし

羊水から新しい大気に
みずからのゆりかごを
乗り変えようとした時
産道の先に美しい光は
見えたのでしょうか

初めての振動に
暖かい問いかけを知った時
心が動き始めたのを
かぼそい声で答えたのでしょうか

その瞳の数だけ喜びがあったとしても
生まれ出た美しさは
まるで悲しみのような泣き声で
覆われてしまう

いつかきっと
死にゆくために生まれたことを
知る日が来て
記憶の彼方に帰ることになる
その悲しみに耐えるために
人の身体は折れ曲がるように
出来ているのかもしれない

自らの生の中に死を育てること
その先にあるものが
計り知れない無であっても
あなたが求めること
あなたが求められること
あなたが愛されること
あなたが愛すること
生き継がれる想いが
尊いことを心に刻めれば良い

生まれてこなければならならなかった事由と
今、生きている瞬間々々を
名づけ伝えあう言葉があれば
朝露が光の先にこぼれ落ちる
その刹那よりも
人の生が短く儚(はかな)いものであっても
心安らぐ微笑みが
あなたのものとなるのかもしれない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?