aiko 夏恋のライフ

aiko『今の二人をお互いが見てる』より
12.夏恋のライフ

大変に大変に体調が悪く寝込むこと数日。
4日ぶりにaiko聞いてもやっぱ「aikoおおおお」となるのは凄くないですか?
毎日2時間以上このアルバムを聞いてたんですが、数日休ませただけで耳がまた新しい魅力を拾って来るので、さらにさらに燃えるような思いです。

今回の「夏恋のライフ」は、aikoが19歳の頃に作った曲だそうです(Apple Musicのアルバム紹介のとこに書いてました)。今まで公表されてなかった理由はなんでなんでしょう。そこのところについては、私は公式aikoとは別で、私が聞いて感じたaikoがいると思ってるので調べない派です。

そういうことで、どんな事情があったかは知らないですが、自分がしんどい恋愛をしたとき、思いを書き殴った日記や完成させられなかった歌から、未来の自分がバチコリ最強の曲を作ってくれてると思えば、泣き濡れた19歳のaikoも報われるんじゃないかなと思いました。aikoすげえよ……。



 さよならさよなら 早くそっぽを向いてよ
 さよならさよなら 悔しいから泣かないように


入りよ!!!!!!aikoの今回のアルバム、初っ端の歌い出しがめちゃくちゃ良い曲ばっかりなんですよね!!!!掴みが強い!!!!!

最初から「ハイ!失恋の曲です!」感満載ですが、それにしても""早くそっぽを向いてよ""って良い歌詞だなあと思うんですよ。曲を通しで聞いてるからこそ思うことでもあるんですが、恋ってやっぱ、「こっちを見て!私を見て!」が主成分になるじゃないですか。特に片思いや、付き合ってるにしても互いの熱量に差があるときなんかも。

そっぽを向いてと願うということは、もう修復のしようがないくらいこの恋がぶっ壊れてしまったってことなんですね。そこに更に""悔しいから泣かないように""。aikoは、aikoが悪かったわけじゃないと思ってる。けれど、早く目を逸らしてどこかへ行ってくれないと、泣いてる顔を見られてしまうとなんとか耐えている場面です。


  初めて人を愛したと思うくらい
  初めて愛されてると実感したくらい
  人目気にせず本気で喧嘩したくらい
  これが本当の恋だと感心したくらい


どんな恋だったかを私たちに教えてくれています。aikoにとって、初めて人を愛したな、愛されてるなと感じたのは19歳だったんですねえ。「本当の恋」という、目に見えないもので、また「本当」って何があれば本当なのか、本当の恋をしたことがない人間にはわかりません。ですがaikoは、""これが本当の恋だと感心したくらい""と歌います。

歌詞自体は19歳のaikoが書いたものかもしれませんが、今のaikoも本当の恋だったと認められるからこそ歌っている。ハーーーーー。いいですねえ。いい展開です。


  嫌いになるわけないよ
  言ってくれたあの時は
  嘘ついてなかったよね

  夏が終わりを告げる
  涼しい風が吹き始める
  半袖長袖 迷う日には
  昔ならあなたが決めてくれた


ここ!!!!!ここ!!!切ねえーーーー!!!
「嫌いになるわけないよ」を言ってくれたあの時、彼が本気だったのはaikoもわかってるんです!!!あーーー!!時の流れよ!!きつい!!
たとえいつか別れたり離れたりすることがあっても、彼がaikoを嫌ったりしないということは、2人にとって絶対変わることのない本当のことだったと。切ねえ。切ねえよ。そしてこの歌、「本当」がかなりテーマになってると思うんですよね。後でも出てきますので要チェックです。

ここの""半袖長袖迷う日には、昔ならあなたが決めてくれた""ってところ、歌詞もメロディも好きすぎる。aikoはきっと、夏が終わって日が落ちるのも早くなり、風が冷たくなると、毎年毎年「あなた」を思い出すんでしょうね……。



  自分らしくない毎日を
  無理やり忙しく過ごしている
  頑張って新しい恋をしなきゃね
  あなたより素敵な人を


ここよ!!!ここ!!ここ、イイ!!!!
aikoは先程、半袖長袖どちらを着るか自分では悩んでしまい、昔だったら「あなた」が決めてくれていたと歌いました。つまりaikoは、優柔不断で、「今日は半袖でいいや!」とかってエイヤッと決めることができず、うーんうーんと立ち止まって悩んでしまう人間なわけです。どちらかと言うとマイペースというか。そんなaikoが、毎日を無理やり忙しく過ごしていないと、この季節はつらいんだと歌う曲なんですね。

歌詞で""昔ならあなたが決めてくれた""とあるように、決して最近の恋でないけれど、本当に愛したな、本当に愛されてるなと実感したかつての恋は今でも鮮明で。未だに「新しい恋をしなきゃ」と、忙しく過ごす日々の中、自分を奮い立たせようとしています。



そしてそしてそして、ここの歌詞でめちゃくちゃポイントだと思うのが、""あなたより素敵な人を""の部分です。「あなたより素敵な人と」ではないんですよ!!!!カーーーッ!!!これがaikoの絶妙な心の機微なんですよ!!!!


なぜaikoが、夏の終わりを感じるとつらいか。それは「本当の恋をした昔の彼を忘れられないから」ですが、aikoは今も恋しく思っており愛しているので、今の状況を抜け出すために必要なのは忙しい生活でも、「あなたより素敵な人との新しい恋」でもなく、「あなたより素敵な人を愛さなきゃ」と自分から愛することが必要だと思ってる。新しい誰かを自分から能動的に愛することで、思い出の彼を真実思い出にできるというか。私が言いたいことちゃんと伝わってますか。すんげえんですよaikoは。

けれどこの""あなたより素敵な人を(愛さなきゃ)""という歌詞は、めちゃくちゃ皮肉なことに、aikoが彼との恋で感じた「本当の恋」とは全くかけ離れたものです。そもそも、「あなたより素敵な人」ってどんな人でしょうか。昔の彼よりおしゃれで、顔が格好よくて、連絡がまめで、優しくて…と、はたから見た際、「まあより素敵な人でしょう」となるとして、その人と一緒に過ごしたとしても、愛さなきゃいけないと思ってしまったら、それは本当の恋なのでしょうか。

aikoは""新しい恋をしなきゃ""と言い聞かせています。本当の恋はもうできないかもしれないから、それでも自分が納得できるような、自分からそれなりに愛せるような、そんなただの新しいってだけの恋をしなきゃいけないと思ってしまう。とんでもねえ歌詞なんですよこれは!!!


  朝の光に起こされて今日も寝不足ね
  寝ぼけ眼に涙が たくさんたくさん
  流れる流れる 愛してたんだ

  夏が終わりを告げる
  涼しい風が吹き始める
  半袖長袖迷う日には
  昔ならあなたが決めてくれた

  自分らしくない毎日を
  無理やり忙しく過ごしている
  頑張って新しい恋をしなきゃね
  あなたより

  さよならさよなら
  もう逢わない


ラストです。ここでの最大のポイントはやはり、""頑張って新しい恋をしなきゃね、あなたより""と切ってるところです。なぜ切ったんでしょうか。

aikoは、夜通し考え込んで寝不足になりながら、朝になってもまだ涙が流れるくらい「あなた」のことが大好きです。忙しい日々を過ごしながら、aikoは自分自身が前を進むために本当に必要なことは、「昔の恋人より条件の良い"素敵な人"を愛すること」ではなく、「忘れられない思い出よりも素敵な恋をすること」だと気づいたんだと思います。
この気づき、えれぇんですよ。この最後の部分で、aikoは最初に歌ってたようにこれが「本当の恋」だったと心から認めます。本当の恋は、ちょっと条件の良い人や、始めようとして始めた新しい恋で上書きすることはできないからこそ本当の恋なんだ、と理解してるし、納得してる。


その上で、""さよならさよなら、もう逢わない""です。私も最初聞いたときすっかり頭から抜けてたんですが、aiko、この昔の恋人である「あなた」と最近も会ってるんですね。

冒頭でも""さよならさよなら、早くそっぽを向いてよ""、""さよならさよなら、悔しいから泣かないように""と歌っています。この冒頭の歌詞からわかるように、この曲は、もう逢わないと決意したaikoが、「本当の恋」を改めて振り返り決別するために書いた曲です。

今、現在の「あなた」と一緒にいても幸せになれなかったことが伺えます。""悔しいから泣かないように""から、aikoは昔の本当の恋を忘れられずに「あなた」と会っていたけれど、「今のあなた」はたぶん、まああんまり良い人じゃないんでしょうね。それでaikoは、かつての思い出までめちゃくちゃにされたように感じて、「新しい恋をしなきゃ、あなたより素敵な人を愛さなきゃ」と思う。

シンプルに「今のあなた」を忘れるだけだったなら、適当な新しい恋でも十分足りたのかもしれません。でも、当時付き合ってたころの時間は絶対に本当の恋だったと確信していて、そっちは、「今のあなた」といても、適当な恋しようとしても到底敵わない。だからaikoは思い出は思い出として本当の本物の恋だったと認めて抱え、今の彼とはもう逢わないこと、そして「かつてのあなた」との恋よりもっと素敵な恋をするぞと決意しました。


以上です!!!ギャーー!!!天才すぎる!!

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