見出し画像

第三回 株について初心者でもわかりやすく講座!

第一回はCB、第二回は空売りと行ってきたが、もちろんここまで読んできた方はお気づきだろう。
スーパーで客の買い物カゴにじゃがいもと人参とカレー粉が入っているのを見たら夜ご飯がカレーであることがわかるように、CBと空売りが買い物カゴに入っている現状を見たらアレしかない。

そう、転換社債アービトラージである。

アービトラージの解説をすっ飛ばして転換社債アービトラージである。
映画で言ったらターミネーター2から見るようなものである。
しかし、2の方が面白かったら2からみてもいいじゃない。
ジョジョを三部から読んだっていいじゃない。

そういうわけで転換社債アービトラージだ。

転換社債アービトラージ

転換社債については第一回で説明した。
社債にも株にもなるお得な債権だ。
だが、アービトラージというよくわからん言葉が付随している。
冒頭ではアービトラージをすっ飛ばすとか言ってるがすっ飛ばさない。
ターミネーターの一作目もきちんと見る。
何故ならアービトラージが分からなければ転換社債アービトラージが分かるわけないからだ。

しかし、アービトラージは簡単に説明もできるが細かく説明しようとすると一気に難易度が高くなる。
そのため本当に簡単に触る程度で解説する。

ちなみに転換社債アービトラージがどんなものかというと“転換社債のように低リスクでありながら、更に大きな利益を得る方法”である。

アービトラージってなんや

日本語だと裁定取引とか言われたりする。
非常に砕いた説明をすると、安いところで買って高いところで売る、である。
当たり前である。
東京の自販機で150円で買ったコーラを富士山の山頂で売ると500円になり、350円の利益が出る。
本当に簡単に砕くとこれがアービトラージの原型である。

が、こんな原始的な方法は基本的には行われておらず、株式市場では現物取引と先物取引の差額を使ってアービトラージが行われることが多い。
さて、上の説明は意味不明だと思うが説明する。

現物取引と先物取引

・現物取引
現物取引については語ることはない。
株を買う、株を売る、この行為が「株という現物を売買している」という現物取引なのだ。
ちなみに株が目に見える現物かと言われると見えない気もする。
しかし2005年までは株は電子化されておらず、全て株券という紙でやり取りしていたため、現物とはその頃の名残である。

・先物取引
問題はこちらである。
ちょっと難しい。
端的に言ってしまえば、ある物の将来の売買と価格を決定しておこう、ということである。
もっと砕こう。

今スマブラは5000円で販売されているとする。
Aは一ヶ月後には世間の人間がスマブラに飽きて売り始め、結果3000円で販売されるようになると考えている。
Bは逆に、一ヶ月後にはさらなる人気に火をつけスマブラは品薄になり、7000円で販売されるようになると考えている。
このときAがBに対して「じゃあ一ヶ月後にスマブラ5000円で売ってあげるよ」と将来の売買と価格について決定するのである。
Aは一ヶ月後には店頭価格が3000円になるスマブラが5000円で売れると考えており、利益の2000円を手にしようとしていた。
一方Bは一ヶ月後には店頭価格7000円のスマブラが5000円で買えるなんて2000円分お得!と思っていた。

こうして訪れた一ヶ月後、価格はこうなった。

スマブラが3000円に値下がりしていた場合
A 3000円のものが5000円で売れてうれしい
B 3000円のものを5000円で買ってかなしい

スマブラが7000円に値上がりしていた場合
A 7000円のものを5000円で売ってかなしい
B 7000円のものを5000円で買えてうれしい

将来その商品の価格が上がるか下がるかなんて断定できないが、だからこそ「上がる!」と思っている人と「下がる!」と思っている人の間で売買が成立するのだ。
互いに「この商品こんなに高く/安くなるけどその価格で売買していいの?」とほくそ笑んでいるのだ。

株でも同じことが起こっていて、将来的にその株が上がるが下がるかの指標は人によって異なる。
その異なった人同士が将来の株価と売買を決め、その差額で損益を受けるのが先物取引である。

そして、株における先物取引はレバレッジと言って、めっちゃ儲かるけどめっちゃ損するかも、というとてつもないギャンブル制度を採用しているため、スマブラの価格が2000円上下しただけで20万儲けたり損失を出したりするのである。
小さい額を掛けて滅茶苦茶儲かるというメリットと滅茶滅茶損失を出すというデメリットが同時に存在する、まさしくギャンブラーの金融商品である。
ちなみにレバレッジをかけなければ大した損失も出ないが大した利益も出ない。
そういう先物取引をしてもいい。

さて、アービトラージや

そしてアービトラージへ戻ってきた。
アービトラージとは、この現物と先物を使って行う取引方法だ。
難しい定義を説明しても意味不明なので実例を出そう。

A社の現物の株価は100円であり、一ヶ月後の先物の株価は120円である。
つまり、一ヶ月後に120円でA社の株を買いたい人間がいるのである。
この人はきっと一ヶ月後にA社の株価が140円とか150円とかになると踏んでいて、一ヶ月後に120円で買える先物取引を行って得をしようと考えているのだ。
さて、この現物と先物の差に、安く買って高く売れというアービトラージの実行余地がある。
A社の現行株を買い、先物を売るのである。
つまり、A社の株を100円分購入して、一ヶ月後に120円で売るよ、という契約も結ぶのである。
そして一ヶ月後に結果が出る。

A社の株価が150円になった場合
100円で買った現行株は150円になっているのでプラス50円の利益が出る
先物取引では150円になった株を120円で売る約束をしていたので、マイナス30円となってしまうが売るしかない
合計プラス20円

A社の株価が50円になった場合
100円で買った現行株は50円になっているのでマイナス50円の損失が出る
先物取引では50円になった株を120円で売る約束をしていたので、プラス70円の利益が出る。
合計プラス20円

そう、アービトラージは株価が上がろうが下がろうが、現物と先物の差額分の利益を得ることができる売買方法である。
東京の自販機で買ったコーラを、滅茶苦茶難解な方法を使って富士山で売っているようなものである。

うれしいね。
元気が出ちゃう。

転換社債アービトラージ

そしてついに本題の転換社債アービトラージだ。
先程までは現物と先物の差額を利用して利益を出していたが、転換社債アービトラージとは転換社債型新株予約権付社債(CB)と空売りの差額を利用して利益を得るのである。

これもまた具体例を見たほうが絶対にわかりやすい。

まず、現在株価100円のA社が存在する。
そしてこのA社の発行している100円分のCBを10個、つまり1000円分購入する(株式転換したときの価格は現在株価と同じ100円。今回は10個買ったので合計1000円分の株になる)。
このCBは社債として持ち続けた場合、1%の利子がついて帰ってくるため、一年後には1010円になる。
しょっぱい。
そして購入と同時にA社の株を空売りするのである。
つまり、証券会社からA者の株を借りて即座に現在株価を100円で売却するのだ。
証券会社にはこのA社の株を一年後に返さなければならない。

そして一年後

株価が150円になっていた場合(上がった)
10個所持しているCBを株式転換することによって1000円の株が発行され、それを1500円で売ることによりプラス500円。
100円で空売りした株を買い戻すために150円かけたので、マイナス50円。
合計プラス450円

株価が100円になっていた場合(変わらず)
1000円分のCBを社債として持ち続け、返済時の利子で1010円が返ってくる。プラス10円。
100円で空売りした株を100円で買い戻すため、±0円。
合計プラス10円。

株価が50円になっていた場合(下がった)
1000円分のCBを社債として持ち続け、返済時の利子で1010円が返ってくる。プラス10円。
100円で空売りした株を50円で買い戻すため、プラス50円。
合計プラス60円。

そう、転換社債アービトラージは株価がどうなろうと必ず利益が出るのだ。
本来のCBは株価が暴落した際には社債として持つことで利子を受け取り、ダメージはない。
しかしここに空売りを加えることで、株価が暴落したら社債の利子と空売りの利益を双方得ることができる。
そして、株価が上がった場合はCBを株式転換することにより利益を出し、CBの損失をカバーすることで利益を出すのだ。

まとめるとこうなる。

株が上がった場合
CBを株式転換し、空売りの損失を相殺して利益を出す。

株価が変わらない場合
CBを社債として持ち、利子を得る。
空売りは±0。

株価が落ちた場合
CBを社債として持ち、利子を得る。
空売りで利益を得る。

こうして、どのように転んでも利益を出すことのできる最強の布陣を築いたのである。

ちゃんと計算しないとだめだよ

この転換社債アービトラージ、ただ適当に買えばいいというわけではない。
空売りの額を大きくしすぎると、株価が下がったときには大きく利益を出せるが、株価が上がったときにCBの株式転換では空売りの損失をカバーしきれなくなる。

空売りは控えめに、CBより少なく、である。
インサイダー取引を行っていて会社の株価が落ちることを予見しているのであればこの方法でも問題ないだろう。

おわり

さて、転換社債アービトラージの解説は終了である。
第一回の転換社債型新株予約権付社債も、第二回の空売りも転換社債アービトラージのためのカリキュラムであった。

世の中には頭のいいこと思いつく人がいるんだなぁと感心するし実に面白い戦法である。

正直転換社債アービトラージやりたいだけの講座だったので次は何も考えていないが、やる気が出たら融通手形とかやろうかな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?