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拡大事実婚制度に関するTwitterのアンケート調査結果

世論調査の結果

令和3年12月に内閣府によって家族の法制に関する世論調査が行われた。
この調査より旧姓の通称使用の法整備導入や選択的夫婦別姓制度導入を支持している割合は図1 のようになることがわかった。

図1 選択的夫婦別姓と旧姓の通称利用に関する回答結果
出典:「家族の法制に関する世論調査」(内閣府) (2022年12月29日にアクセス)

選択的夫婦別姓制度賛成は3割程度と未だ過半数を割る人数となっており、制度実現に向けてさらなる取り組みや議論が求められていると言える。

私が婚姻に望むもの

私も個人的に望む選択的夫婦別姓制度だが、手段として必ずしも現在提唱されている選択的夫婦別姓制度(一戸籍別氏制)だけではないと考えている。

私個人が現状の事実婚以上の婚姻に求めるのは以下の2点である。

  • 税制面などで法律婚と同等の優遇があること

  • 婚姻届を国が受理することで真に国から夫婦であることを認めてもらえること

以上2点が満たされるものであれば、手段を問わず受け入れることが可能であると考えている。

拡大事実婚制度について

現在の事実婚に対し、法律婚と同等の優遇を適用し、婚姻届のようなものを国が受理するような制度を仮に拡大事実婚制度と呼ぶこととする。

この拡大事実婚制度は選択的夫婦別姓制度の賛成派、反対派(維持派と主張する人もいるがここでは維持派は反対派に含めることとする)の両者の妥協点のなり得るのについて興味を感じた。
実際に妥協点となり得るかは具体的な実現方法を提示した上で検証すべき事項ではあるが、簡易的な調査のために実現方法は抜きに拡大事実婚制度に賛成か反対のどちらであるかのアンケートをTwitterで取ることにした。

アンケート結果

アンケートを行った結果が以下である。

ただし、このアンケートにおいて、選択的夫婦別姓制度に対し賛成及び反対となる集団それぞれについて、拡大事実婚制度における賛否の偏りがないことを仮定し論を展開していくこととする。実際にTwitterでこういったアンケートに回答するのは賛成派・反対派ともに強い意思を持っている集団であるという傾向があると考えられるが、今回はそれらを無視して考えるとする。

ベイズの定理を用いることで、世論調査の結果と合わせて実際の割合を推定することが可能である。

$$
\begin{array}{}
&&選択的夫婦別姓制度と拡大事実婚制度に賛成な人の割合 \\
\\
&=& 選択的夫婦別姓制度賛成の割合 \\
&& \times \frac{アンケートにおける選択的夫婦別姓制度賛成かつ拡大事実婚制度賛成の割合}{アンケートにおける選択的夫婦別姓制度賛成の割合} \\
\\
&=& 28.9\% \times 31\% / (31\%+15\%) \\
&=& 19.5\%
\end{array}
$$

この式を適用し、円グラフに調整したものが図2 である

図2 拡大事実婚制度への賛否を選択的夫婦別姓制度の賛否毎に整理したグラフ

図2 からは拡大事実婚制度であれば、全体として過半数が賛成となり得るということがわかる。
一点注意事項としては、Twitterのアンケートでの標本数は187で、世論調査での標本数は5000であるから、このような計算が可能なものなのかどうか、そして、私自身が事前分布を前提とした分布の母比率の統計的な検定を行う術を知らないため、統計的に有意といえるものではなく、たまたまそうなっただけということを否定することはできない。(詳しい人がいたら教えて欲しい)

もしこの結果が正しいとするならば、拡大事実婚制度は選択的夫婦別姓制度と比べ導入に関して国民の理解を得やすい手段と言えるのではないだろうか。今回のアンケートではそういった意味で非常に興味深い結果を得られたと考えている。

拡大事実婚制度の実現可能性について

ここまで拡大事実婚制度の実態や具体的な実現方法などについての言及をあえて一切せずに思考を行ってきた。そこで本章ではそれらについての情報を紹介するとともに、日本において拡大事実婚制度がどういったものになっていくのかを読者の方々と一緒に考えていきたいと思う。

まずは具体的なイメージとしてフランスにおける似たような制度を紹介する。

フランスで導入されている PACS(パックス)について

PACS とは 1999 年にフランスで施行された民法のことで、「異性あるいは同性の自然人たる二人の成人による共同生活を組織するために行われる契約」として定めているものである。

PACS は当初、同性カップルの権利拡大を目的に制定されたものであり、社会保障や税制関係、契約の解消などについて定めている。その後 PACS は同棲以上結婚未満の形として同性カップルに限らず、異性カップルの間でも広く定着していき、現在では婚姻数とPACS締結数は同程度の規模となっている。

もし PACS について興味をもった方がいれば「事実婚 PACS」や「フランス PACS」などで検索すると多くの紹介記事がヒットするので合わせて調べてみて欲しい。

日本版 PACS は実現可能か

フランスには PACS という制度があるが、日本ではそれに相当する制度はまだ存在していない。しかし、自治体単位であれば パートナーシップ制度 を導入している自治体も少なくない。

全国パートナーシップ制度 導入状況
パートナーシップ制度の導入状況(全 1757 自治体)
導入自治体数 242
人口普及率 62.0%

https://minnano-partnership.com/
2023年1月3日時点

2022年11月1日に東京都全体で「東京都パートナーシップ宣誓制度」が導入された。
東京都パートナーシップ宣誓制度では性的マイノリティである2人を同居家族として認定し、公営住宅の入居に関しての親族要件を満たすとするものなどの効果がある。

各自治体毎で実施されているパートナーシップ制度はフランスにおける PACS に限りなく近い性質を持っていると考える。制度の内容や対象は各自自治体毎に異なるものの、それらが均一化していき、やがて日本国の法制度に取り込まれていくのだと考えれば、いずれ日本版 PACS になる可能性は十分にあると考えられる。

 東京都全体で導入された東京都パートナーシップ宣誓制度は性的マイノリティを対象にした制度ではあるが、例えば渋谷区で導入されている「渋谷区パートナーシップ証明書」や神奈川県横浜市で導入されている「横浜市パートナーシップ宣誓制度」では性的マイノリティではない男女であっても利用が可能となっている。
現在のパートナーシップ制度では法的な効力を持たなかったりと、必ずしも十分なものとは言えないが、実際に利用する人が増えていけば、いずれ日本の法律の一部として取り込まれていく日が来るのではないかと考える。

読者の皆さんもご自身が住んでいる地域にパートナーシップ制度が導入されているのかどうか、その内容はどのようなものなのか調べてみて欲しい。
それらは みんなのパートナーシップ制度 というサイトに詳しく掲載されているので、ぜひご覧ください。

まとめ

選択的夫婦別姓に関して様々な懸念事項や周辺の法整備が必要なものが多く存在する。そう言った意味で言えば、パートナーシップ制度は自治体が率先して事例を作っていき、それら事例をもとに法整備をすることになるので、幾分か導入もしやすいのではと考える。

個人的な考えを申し上げると、国の法整備について自治体が先導し、国側が後手に回るという形は少々情けないのではと思う部分もあるが、背に腹は変えられない。

私自身もパートナーシップ制度を利用して、一つの事例作りに貢献していきたいと考えています。この記事を読まれていて事実婚をされている方で、住んでいる自治体が男女でのパートナーシップ制度を認めているのであれば、ぜひ事例作りに貢献していただきたいと考えます。

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