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本を読む本(モーティマー・J・アドラー チャールズ・V・ドーレン)要約

書誌情報


本を読む本
著:モーティマー・J・アドラー
著:チャールズ・V・ドーレン
他訳:外山 滋比古
講談社学術文庫

要約


第一部 読書の意味
1読書技術と積極性
積極的読書
 積極性が高い読書ほど、良い読書である
 書き手の意図を正しく理解するには、読み手の積極性と熟練度で決まる

読書の目的――知識のための読書と理解のための読書
 知識のための読書:情報量を増やしてくれるが、理解を深めるのには役に立たない ex.新聞雑誌
 理解のための読書 :前に読んで完全に理解できなかった本に、今一度挑戦する

「読む」ことは「学ぶ」ことである――「教わること」と「発見すること」との違い
 教わること:話し手の助けをかりた発見すること
 発見すること:自然や外界から直接的に(手助けなしに)発見すること
 読書は教わることだけでなく、発見することという要素を内包している

教師のいる場合、 いない
 教師がいる場合:質問、問い直しができるので、自分の頭で考えなくて済む
 教師がいない場合:読み手自身が問いに答えなくてはいけない

2読書のレベル
①初級読書:一文の意味が把握できること
②点検読書:短い時間内に、できるだけ内容をしっかりと把握すること  構成と主節を理解する 種類を理解する
③分析読書:時間に制約されずに、系統立てて質問しながら内容を把握すること
④シントピカル読書:一つの主題について何冊もの本を相互に関連づけて読むこと

3初級読書─読書の第一レベル
読みかた学習の諸段階
 初歩的な読書教授に重点がおかれ、上級の読書レベルが軽視されている
段階とレベル
 高校生過程まで学ぶ読書は、まだ初級読書のレベルに過ぎない
高等教育と読書
 大学生でも、初級読書のレベルを完了できていない者が多い
 本来、高校では分析読書を、大学ではシントピカル読書を習得しなければならない

4点検読書─読書の第二レベル
点検読書(一段階目)——組織的な拾い読み、または下読み
 まず入念に読む必要のある本かを調べる
 ①表題や序文から主題を、分類を把握する
 ②本の構造を知るために目次を調べる
 ③知識を伝える本ならば、索引を調べる
 ④帯文を読む
 ⑤重要と思われる章(序章と結び)を読む
 ⑥ところどころ拾い読みをする
  特に結びの部分の二、三ページは必ず読む
点検読書(二段階目)―表面読み
 どんなに難解でも、とにかく読み通すことだけを考える
読書の速度
 目標に合わせた読書速度を選択する
目の動き
 速読には、目だけを動かして読む技術が欠かせない
 高速化させた指読によってトレーニングできる
「理解すること」
 速読は、理解することにもつながる

5意欲的な読者になるには
 約束「見返りを期待して努力することが大切である」
積極的読書への四つの質問
 約束「読んでいる間に質問を立て、自分自身で回答するように努力する」
 (点検読書)
 質問①全体としての何に関する本か
 質問②何がどのように詳しく述べられているか
 (分析読書)
 質問③その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か
 質問④それにはどんな意義があるのか
本を自分のものにするには
 書き込みをする
書きこみの方法
 ①構成上の書きこみ(点検読書)
  どんな種類の本か/全体としての主題は何か/どのような構成で、概念や知識を展開しているか
 ②概念に関する書き込み(分析読書)
 その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か
 ③弁証法的書き込み(シントピカル読書)
 一つの主題について、一連の記述や質問を書きまとめること
読書習慣を身につける
 技術を規則通りに働かせる習慣を身に着けるしかない
 知るだけでなく、作業をすること
多くの規則から一つの習慣へ
 各規則を完了できる段階が重なりあることで、一つの活動としてまとまりが生まれる


第二部 分析読書――読書の第三レベル
6本を分類する
分類の重要性
規則①「その本がどんな種類なのを知る。できれば読み始める前に知る方がよい」
書名から何がわかるか
 分類、理論的か実践的かといった基本的な情報
理論的な本と実践的な本
 理論的:事実を伝える
 実践的:方法を伝える
理論的な本の種類
 それぞれの種類に合わせたふさわしいやり方で読む技術を学ぶべき

7本を透視する
構想とプロット―本の統一
 規則②「その本全体の統一を、二、三行か、せいぜい数行の分にあらわしてみること」
 →本の主題と目的を発見する
 導入部をてがかりにしてもよい
アウトラインをつかむ
 規則③「その本の主なる部分を述べ、それらの部分がどのように順序良く統一性をもって配列されて全体を構成しているかを示すこと」
 →各部分を統一性と複合性をもつ小さな全体として捉えて、要約を行う
 遵守するには大変すぎるので、完璧に守れなくてもいい
読む技術と書く技術
 規則②③が遵守できるかは、著者の書く技術に大きく影響される
 →規則②③を実行できるかが、良い本かの判断指標になる
著者の意図を見つける
 規則④「著者の問題としている点は何かを知る」
分析読書の第一段階
 規則①②③④→構成を把握できる

8著者と折り合いをつける
著者の使う言葉に注意する
 規則⑤「重要な単語を見つけ出し、それを手掛かりに著者と折り合いをつけること」
 →重要な単語を見つけること&使われている意味を正確につかむ
キー・ワードを見つける
 キーワード=パラグラフの圧縮単語=意味のつかみにくい言葉
 →パラグラフをつかむことが、キーワードを見つける近道(ただ堂々巡り的 キーワード⇔パラグラフ)
専門用語と特殊な語彙
 「」などの記号、定義、予備知識、他の著者と違った意味で利用している用語
単語の意味をつかむ
 ①単独か、複数の意味かを判断する
 ②複数であれば、前後の文脈から意味を特定する

9著者の伝えたいことは何か
 規則⑥「重要な文を見つけ筆者の主要な命題を把握する」
文および命題
 一つの文に、複数の命題が含まれる場合がある
 一つの命題が、複数の文章で記述されている場合がある
キー・センテンスを見つける
 論文全体の基礎となる判断を示す文
命題を見つける
 キーセンテンスが表す意味をつかむこと
 特に重要単語を解釈すること
論証を見つける
 規則⑦「一連の文の中から論証をみつける。または、複数の文を取り出して論証を組み立てる」 
 重要な論証が含まれるパラグラフを発見する
 なければ、複数のパラグラフから論証を構成する命題が含まれる文章を組み合わせて論証を構築する
著者の解決を検討する
 規則⑧「著者が解決した問題はなにか、また解決できていない問題はないかを見極める。そして、解決できていない問題について自覚しているかを確認する」
 規則⑤⑥⑦⑧→内容を解釈する

10本を正しく批評する
 批評の義務を果たして、積極的読書が完了する
学ぶことの効用
 学び得ることは、自分で判断を下せるようになること
修辞の役割
 相手を納得させ、説得するための技術
判断保留の重要性
 規則⑨「わかったといえるようになるまでは、賛成反対保留の態度表明を控える」
けんか腰はよくない
 規則⑩「反論は筋道を立てて行う。けんか腰はよくない」
 相手から何かを得ることが大切
反論を解消する
 規則⑪「反論は解消できるものだと考える」
 すなわち「いかなる判断についても、必ず根拠を示し、知識と個人的意見を明確に区別する」
11 著者に賛成するか、反論するか
思いこみと判断
 感情性を自覚すること、自身の先入観を自覚すること、党派性に縛られずまず理解に努めることをできる限り目指す
著者の主張は、果たして妥当か
 反論の三類型→著者の知識不足/知識の誤解/論理性の欠如
論証は果たして完全と言えるか 
 上記の三類型を指摘できない限り、反対は認められない
分析読書の第三段階

12 読書の補助手段
「経験」の役割 
 普通経験/特殊経験
他の本から手助けを得る
 より広い文脈の把握
注釈書や抜粋
 利用しすぎてはいけない
 まず自力で分析読書を行いきったあとで、わからない点について参考にするべき
参考図書の使いかた
 参考書を使う時点でも、何を知りたいのかという意図をはっきりさせておく必要がある 検索ワードなど
辞書の使いかた
 使いどころは思っているよりも制限される
 わからない単語はすぐ引くという態度はよろしくない
百科事典の使いかた
 事実を抑えるためだけに使う


第三部 文学の読みかた
13 小説、戯曲、詩の読みかた
文学を読むとき、してはならないこと
 文学書を読むときの態度で文学に向き合わなければいけない
 -文学に命題、名辞、論証を求めてはいけない
 -知識伝達の真実性や一貫性を尺度にして批判をしてはいけない
文学を読むための一般法則
 分析読書の転用
小説の読みかた
 一気に継続し、没頭した状態で読む
戯曲の読みかた 
 具体的な演出を想起して読む
抒情詩の読みかた
 一息に続けて読む
 繰り返し声に出して読む

第四部 読書の最終目標
14シントピカル読書―――読書の第四レベル
 同一主題について、複数の文献を読むこと
 まず主題が定まっている必要性がある
シントピカル読書における点検の役目
 集めた文献の必要可否を判断する
シントピカル読書の五つの段階
 ①関連箇所だけを見つける
 ②著者のキーワードを見つけ出して、使われ方を理解する(著者と折り合いをつける)
 ③命題を質問形式に変換し、回答する
 ④論点を定める(=対立意見ががどのようにあるのか整理分類する )
 ⑤主題について論考を考える(真実性、意義について問う)
客観性はなぜ必要か
 弁証法的客観性:あらゆる側面から公平にみること
シントピカル読書の実例――進歩の観念について
シントピコンとその利用法
 書誌
シントピカル読書の原理について
 翻訳を通じて、書物間を接続することは可能である
シントピカル読書のまとめ
 準備作業
 ①目録、助言、書誌を利用して、主題に関する文献表を作成する
 ②文献表の書物を点検し、主題との関連および主題の観念をつかむ
 本作業
 ①点検し、関連した箇所を発見する
 ②特定著者に偏らない用語の使い方を決め、折り合いをつけさせる
 ③一連の質問をたて、偏らない命題を立てる
 ④さまざまな質問に対する著者の論点を整理して、論点を明確にする
 ⑤主題をできるだけ多角的に理解するために、質問と論点を整理し、論考を分析する

15 読書と精神の成長
良書が与えてくれるもの
 良書は少ないため、積極的読書をすべきかの選択が必要
本のピラミッド
生きることと精神の成長
 優れた読書とは、我々を励まし、どこまでも成長


日本人の読書―訳者あとがきにかえて


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