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月桂樹になったダプネ~ギリシャ神話美少女シリーズ~
今回の美少女はダプネ(ダフネ)。
月桂樹に姿を変えたということで、「変身前後」のイメージで、月桂樹の下に佇む姿です。
![](https://assets.st-note.com/img/1699698492551-r9maV9S2dd.jpg)
事の発端は、アポロン神が愛の神エロス(クピド)を子どもと愚弄したことです。
母のレトをさんざん苦しめた大蛇ピュトンを退治して得意の絶頂だったアポロンは、その弓を自慢し、エロスの使う弓を子どものおもちゃ扱いして小馬鹿にします。
これに気分を害したエロスは、その弓の威力がどんなものであるかを、アポロンに身をもって思い知らせようとします。
曰く「あなたの弓はすべてのものを射貫くでしょう。でもぼくの弓はあなたを射るのですよ」
そう、愛の神エロスの弓矢は、恋心を操る力を持っています。それは人間ばかりでなく、神に対しても有効なのです(ただし『変身物語』の他の部分を読む限り、処女神たる誓いを立てたアテナやアルテミスには通用しないらしい)。
そして恋の火を燃え立たせる金の矢でアポロンを射ます。一方、恋心を失せさせる鉛の矢でいたのが、川の神ペネイオスの娘であるニンフのダプネでした。
ダプネはもともと処女神アルテミスを崇拝し、女神にならって狩りに勤しむような娘。ただでさえ色恋には興味は無いのに、そんな彼女が鉛の矢で射られ、アポロンを毛嫌いする心を吹き込まれます。
こうしてダプネに対する恋の虜になったアポロンでしたが、彼女はひたすら逃げるばかり。
![](https://assets.st-note.com/img/1699698541438-AWHpEpQ18q.jpg)
愛のささやきも口説きも、まるで届きません。人間たちに神託を授ける予言の神でありながら自身の恋の行方は予知できず、医術の神でありながら自分の恋の病は癒せない。この辺の『変身物語』の記述はなかなか皮肉が効いています。
アポロンのやっていることはストーキング以外の何ものでもありません。必死で逃げるも、ついに力尽きようとしたところで、父神の支配するペネイオス川のほとりにさしかかり、父に向けて祈ります。これほどまでに恋い慕われるもとになった私の容姿を、別のものに変えてほしい、と。
こうして彼女のからだは樹皮に包まれ、髪の毛は葉に、腕は枝に変わって、一本の樹木に変わった、というのです。これが月桂樹です。
ということで、イラストにも描きました。
オウィディウス『変身物語』を読むと、この樹木化の様子がリアルに活写されています。絵画にもしばしば描かれてきましたが、このプロセスを現代のCG技術で描写したらどうなるのか、一度見てみたいところです。
ということで、彼女と結ばれる望みを永久に絶たれてしまったアポロンは、叶わぬ恋の思い出にこの樹から冠をつくった、といいます。これがかの「月桂冠」の由来です。
『変身物語』によるとこれがアポロンの初恋だったようですが、以後重ねられる彼の「残念なイケメン伝説」の第一幕でもあります。
ダプネも神々のいさかいのせいでこんな運命を辿った悲哀の少女ですね。
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