その思いを継いで

※今日は少しだけ毛色の違う話をします。お許しください。

12年前の今日、敬愛する経営者が亡くなりました。

初めてお会いしたのは、渋谷の「麗郷」。
相席がきっかけで、以後仲良くさせて頂きました。

彼は、生意気だった当時の僕に多くを指南して下さいました。
経営を始め、音楽やギャンブル、銀座遊びに至るまで。
社員1,000人を超える企業の会長だと知ったのは、大分あとのことです。

生前、彼は「植物状態」が長く続いていました。
病室に置かれたメッセージノートには、
彼に向けた「励ましの言葉」が溢れていましたが、眼前に広がる現実を前に、そんな綺麗事を書く気にはとてもなれませんでした。

怒られるのを承知で、ノートにはこうしたためました。
「今のうちに残されたご家族で終いの準備を始めて下さい。きっと彼もそれを望んでいるはずです」と。

没後数年して、奥様と再会する機会がありました。
「あなたのノートの言葉でとても冷静になれたの。あの時は本当にありがとう。」
若気の至りとはいえ言葉が過ぎたのではと、ずっと負い目を感じていた自分は、彼女の一言で救われた気がしました。
葬儀でも出なかった涙が、堰を切ったように溢れ出たのもこの瞬間です。

その人を大切に思うならば、批判を覚悟で「かけるべき言葉」をかける。
この経験を通じ、そう強く心がけるようになりました。
以来、辛辣な言葉を若手にかける時こそ、心を鬼にしています。
きっと当時の彼もそんな思いで、僕に接してくれていたのでしょう。

13回忌となる今夜、久しぶりに麗郷へ足を運び、あのビーフンをまた一緒に食べたいと思います。


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