When The Storm Is Over
大きな玄関のドアを合鍵で開け中に入ると、月明かりが差し込むだけの暗いリビングに、蓮は居た。
ソファに深く腰掛け、背もたれに頭を預けて眠る彼の足元に跪き、その太腿に頭を乗せた。
あまりに疲れているのか、まるで起きる気配がない。
床には荷物とコートが散らばっていた。帰宅してすぐ座り、俺に一言だけメッセージを送って、そのまま眠ってしまったのだろう。
「来たよ、蓮。…大丈夫か」
返事は無いが、右手がゆるゆると動いて、俺の頭をゆっくり撫でた。
その声は掠れて小さい。
「ありがとう、…来てくれて」
俺は敢えてゆっくりと、静かに話した。
「何かして欲しいこと、ある?飯は?とにかく横になって休めよ」
「動けそうにねぇな…毛布、持ってきてくれるか」
俺は蓮のベッドルームから、柔らかいふかふかとした毛布を持ってきて、彼に渡した。
彼は俺の手を引き寄せ、そのままソファに倒れ込むと、俺の身体をすっぽりと抱き込み、毛布の中で1つの塊の様になった。
「俺達、嵐の中にいるんだ。今」
彼はそう、呟く。
「そうだな。…お前は、特にキツそうだ」
「嵐が止む時が“本当の始まり“だ、と、思う。大介…俺の、」
そのまま、小さく寝息を立て始めた彼の、次の言葉を聞くために。
夜が明けるのを、俺は彼の腕の中で待ち続けた。
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