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よく聴く

1997年7月27日(日)
夜。電話に出た。
向こうの声が、いくら聴こうとしてもきこえない。
ただ、邪悪な思念が渦巻いているのは伝わってくる。
よく聴かないと邪悪な思念に巻き込まれるやも知れぬ。
恐い、恐いから聴こう、聴き逃すまい。

「・・・です。いつも電話してるの知ってる?」
や! 無言電話はあの腐れ根性野郎だったか。無言のくせに、「知ってる?」もないだろう。
邪悪な気を渦巻かせている。おっそろしい。恐いので背を向けられない──電話をこちらから切ることができない。どんなばあいも対応できる態勢でいたい。

男は、自分の母親に電話を代わった。
男の母親は、身にしみない訳のわからないことをしゃべっていた。
嫌な声の背後で皿でも叩き割ったような音が。
ちっ、家庭内暴力かよ。

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