自分の席につくことへの罪悪感

1997年12月14日(日)
劇場の一番端に座っていた。席を外して戻ると、そこにタミがいた。タミは席を半分空けて座っていた。空いている2分の1にわたしは座った。
タミは一応2分の1を空けてはいたけど、わたしにどいてほしがっていた。
わたしはどかなかった。
とうとう、タミが去った。
その反動でわたしの左の靴が脱げた。わたしは全身黒ずくめだった。
「でもここはタミの席だったんです」と、悲しい気持ちで隣の男に話していた。それからのみこめなかったものを口から出した。
出てきたのは、白いごはん、オレンジ色の鮭の身、たくさんのホチキスの針。
けがはなかったが、道理で苦しくてのみこめないはずだった。
それは随分たくさんな量だった。紙に包んで捨てたかったが、小さな紙しかなく困っていると、隣の人が面倒くさそうに「これ」と放ってくれたのは、青緑色の円い形の袋だった。吐き出したものを捨てるのは気が引けた。
わたしは子どものことを話した。隣の人は煩そうに遮って、「とにかく、生むなら生むで、早く生むことだ」と言った。
子どもの苦しみについていつまでもしゃべっているより、何か書くことだ、と言うのだった。

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