ODYSSEY感想 朝美絢さんのこと

 梅田芸術劇場で雪組公演『ODYSSEY -The Age of Discovery-』を観てきました。


 Twitterをフォローしてくださっている方々は私が初日から騒ぎ続けているのをよくご存知かと思うのですが、オタクのなけなしの理性を梅田で完全に失くしてしまうくらい超超刺激的な作品でした。最後にODYSSEYを観てから1週間が経過したのですが、毎晩ODYSSEYのことばかり考えていてAM3時くらいまで眠れません。次の日も仕事なのに。どうしよう!?ということで、眠れぬ夜に考え続けたことを文章にしたためようと書き始めた次第です。

 公演全体についての感想を書きたい気持ちも山々ですが、私が応援している朝美絢さんが魅力的で輝きすぎていて私は理性を梅田で失くしてきてしまったのだと思うので、『朝美絢さんが素敵すぎてどうしよう』という話をしようと思います。(ご本人様に迷惑がかかるようでしたらこの記事を消しますので仰ってください。続きはオタクの戯言だと思って生温かい気持ちで読んでください…)

「芸名」と「役名」のはなし

 宝塚OGさんの外部舞台を観に行くと、その人自身の「芸名」の自分を売っているのは在団中の今だけだと強く感じます。完成された素敵なお芝居は退団後も様々な場所で観ることができるけれど、男役「朝美絢」という「芸名」を、その「個性」をセルフプロデュースしてアピールするのって宝塚に在団している今しかないと思いませんか?もちろん、どの男役さん、娘役さんにも言えることだと思います。

 『ODYSSEY』はショー公演でありながら、彩風さんは「ブルーム」、朝月さんは「セレネ」、朝美さんは「アポロン」という役名がついています。基本的にはどの場面にも役として出ているのだけれども、御三方のそれぞれの個性がとめどなく溢れているということが今回の作品における一番の魅力だと思います。朝美さんの個性の出し方が好きで私はこの方のファンをしているのかなと常々思っていましたが、「役:アポロン」と「芸名:朝美絢」のバランスが本当に絶妙で、こういうお役を与えてくださった野口先生には感謝しかありません。

歌のはなし

 朝美さんは毎公演とんでもなく成長して遠くに行ってしまうのですが、今公演のどの場面でも期待以上の歌声を聴かせてくれたことに感動しました。
 情景が思い浮かぶ歌声且つ場面ごとに歌い分ける能力を身につけたこの方は歌手というより、れっきとしたミュージカル俳優でした。オペラ曲もアイドルソングもカンツォーネ、外国語歌詞の曲も何でも歌いこなせるし、客席中に聴かせる力がありますよね。

 みんな大好きメフィストフェレスの場面では、歌をセリフのように歌い、セリフを歌のように言うという難しいことを難なくやってのけ、朝美さんは芝居の人だったということを見せつける余裕すらあります。しかもこの場面、彩風さんとのハモリで高音パートを一瞬担当されている声の美しいこと!!

 カゲソロの「Colors of the Wind」で驚嘆したのは、朝美さんは比較的個性を押し出す強さを持った歌声をお持ちだと思うのですが、ここのカゲソロではもちろん声は紛れもなく「朝美絢」なのだけれども、個性を極力消して彩風さん朝月さんのデュエットダンスに寄り添う歌い方、基本に則った歌い方をされているのが印象的でした。さききわのデュエットダンスはディズニーの世界から抜け出してきたかのような夢とトキメキが詰まっていて、そのおふたりを優しく包み込み、夢のような世界観を作り出す一助を担っている美しく温かい歌声です。


踊りのはなし

 次は踊りの話!ODYSSEYが次から次へと国が変わるものだから、こちらも歌と同じで場面によって踊り方を変えて、「役」として踊る能力をひしと感じました。アイドル場面では下半身に重心を置いた踊り方、ウィーンの場面ではバレエらしい体を引き上げるような踊り方を使い分けているんですよね。

 すごく好きなのは、一幕終わりODYSSEY号が沈没した後にセレネの希和ちゃんと上手で踊るコンテンポラリーダンスみたいな踊り!(筆者はダンスに詳しくありませんが)「セレネ」と「アポロン」という完全に役として、表現力豊かで何かを伝えようという「言語のある」ダンスを踊っていました。

 ダンスにも繋がりますが、朝美さんのお衣装の捌き方が大好物です。アポロンの正装(?)はお袖がひらひらしているのですが、このお袖が意志を持っているかのように美しくはためく!アポロンとセレネの正装には同じ素材の布が使われていて、お二人の魅せ方がシンクロしているのもとても良かったです。

 中国の美男美女の場面でお召しになっている美しい漢服のお袖のコントロール力!「おとぎの国の恋のお話」という世界観を膨らませてくれます。

 一幕冒頭でロケットボーイをされているときは、「右だ〜左だ〜」ってめちゃくちゃやってるけど、白海賊服の裾を掴んでハラリとはためかせるという宝塚の美学は守っているのも好き。


表情と目線のはなし

 「役」としての表情管理が素晴らしいという話をしますね。先述した中国の美男美女では、眞ノ宮くんと幸せすぎる二人を見せつけてくれて、一幕終わりのキャラバンの到着では野々花ひまりちゃんとアンニュイなカップルを、と場面ごとに様々なお顔を見せてくださいます。

 表情の一つとして、アイコンタクトの話もしたい! 
 朝美さんは舞台上で共演者の方々とも客席の我々とも、めちゃくちゃ目を合わせに行きます。その度にドリタイで「楽しくない?舞台」と輝く笑顔で仰っていたことを思い出します。「芸名」としてとかどうとか置いておいて、ご本人がどうしようもなく舞台を楽しんでらっしゃるというのは観ていてとても嬉しいものですね。

 好きなアイコンタクト(共演者同士)を厳選して2つ挙げるならば、一つめは、キャラバンの到着で咲さんと2人で踊る時に目を合わせてニヤって悪い笑いをするところ。もう一つは、ウィーンの場面でセットの上で歌った後に10期以上も離れた下級生娘役ちゃんたちにもにこにこ微笑みかけながら舞台中央へ戻ってくるところ。優しさ溢れたリアルプリンス過ぎる。

 客席へのアイコンタクトで言えば、アイドル場面とリオでしょうか。客席に全力でアピールをして、客席を吊ろうとしている男役としての「朝美絢」さんは今しか見れないんだなぁと一番実感する場面かもしれないです。観劇中は理性を破壊され過ぎて、こういうしみじみとした感慨を抱く余裕なんてないんですけれどもね(笑)

 表情管理という言葉を使ったけれど、朝美さんのそれは「役」として計画されたものもありながら、ご本人がその時に感じたことをそのままに表現されていて、その時一瞬しかない一期一会なんですよね。「宝塚観に行きたいけど敷居が〜」「朝美絢さん生で観てみたいけど…」とか悩んでいる方は一刻も早くチケットを取った方がいいと思います(何様)

黒燕尾のはなし

 ここまで辿り着くのがめちゃくちゃ長かった、、最後に黒燕尾の話をする!

 黒燕尾を着て階段の一番上に立った時、さっきまでのテンションアゲアゲな朝美さんはどこ行っちゃったの!?ってくらい険しい表情をしているんですよね。

 「映えある108年の清き流れ」という歌詞を歌ってらっしゃるんですが、108年の歴史を背負っているかのような覚悟を決めた表情をされています。CH/FFの時のカフェブレで立場が変わった責任というお話をされていて、なんて真面目な方なんだろうと思っていました。

 もうこれも散々言われてきたことでしょうけど、美しすぎるお顔によって正当に実力を評価してくださらない方々も中にはいらっしゃるかと思います。ですが、どんな時でも舞台に立つ時には、宝塚の男役であることを忘れない。私はそんなこの方をずっと応援していきたいと改めて思うのでした。


おわりに

 ここまで読んでくださった方ありがとうございます。舞台の幕が上がり続けることが日常ではない世の中で、どうかタカラジェンヌのみなさまの笑顔が守られますようにと心から祈ってやみません。

 おそらく『蒼穹の昴』を観たら『朝美絢さんが素敵すぎてどうしよう。その2』を書いていることでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?