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空港での逮捕中止劇

伊藤詩織氏が書類送検されたとの一報が入ってきた。容疑は「名誉棄損」と「虚偽告訴」だ。捜査の過程で色々な謎が解明されることを祈る。また新潮社裁判もこれから動いてくる。

8月に「週刊新潮は初報からインチキだった」をUPしたが、伊藤氏にまつわる数多くの謎のうち、「空港での逮捕中止劇」はビッグイシューだ。週刊新潮の初報2017.5.18号はドラマティックな空港での逮捕中止をこのように報じている。

「そして迎えたこの日、担当者の警部補その上司を含めた複数の警察官は、成田空港で被疑者となる人物を逮捕すべく待ち構えていた。ところがそこへ上層部から連絡が入る。<山口逮捕は取り止め!>入国審査を経た山口氏が通り過ぎて行く――。」

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一般読者の普通の注意と読み方ならば、その場にはA警部補と上司に加えて+1名以上、計3名以上の警官がいると読める。ネット版デイリー新潮(原文)でも記述は同様だ。ところが週刊新潮の5か月後に刊行された『Black Box』はちがう。A捜査員がベルリンにいる伊藤氏に電話で中止を伝える「衝撃の電話」の場面。

逮捕予定の当日に、A氏から連絡が来た。もちろん逮捕の連絡だろうと思い、電話に出ると、A氏はとても暗い声で私の名前を呼んだ。
「伊藤さん、実は、逮捕できませんでした。逮捕の準備はできておりました。私も行く気でした、しかし、その寸前で待ったがかかりました。(P133)
「全然納得がいきません」
と私が繰り返すと、A氏は「私もです」と言った。それでもA氏は、自分の目で山口氏を確認しようと、目の前を通過するところを見届けたという。(P135)

行く気まんまんだったA氏は、予め逮捕取り止めを都内のどこかで聞いた。「それでも」(可哀そうな詩織さんを苦しめた憎っくき山口を一目見てやろうと?)空港に出向いたことになる。そして現場で待機していた他の警官に合流した・・・いやいやヘンでしょう。新潮では上司複数の警官が空港で待機していたことになっている。部下のAには事前に「中止」が通知されたのに上司らはボケーっと空港に居るの?警察という上下関係の極致のような組織で部下に先に通知が?そんなことってある?

もっと細かいことを言えば、新潮の記事では、A捜査員もまた逮捕するためにその場に居た風に書かれている。BBは「中止」を知りつつ「それでも」後から行ったと言ってるよ?BB「衝撃の電話」の章はA氏からの電話による伝言の形式をとっているが、空港での逮捕とりやめの場面はおろか、上司や複数の警官の姿は一切描かれていない。

ただしBBそれ自体もヘンなのだ。最終部のP249では「あの日の出来事で、山口氏も事実として認め、また捜査や証言で明らかになっている客観的事実」として羅列されている8つの項目の中に、こんなものが含まれている。

・逮捕の当日、捜査員が現場の空港で山口氏の到着を待ち受けるさなか、中村格警視庁刑事部長の判断によって、逮捕状の執行が突然止められた。(P249)

映画のようにドラマティックな逮捕キャンセル場面は、その後一人歩きして、これまで無数の媒体で二次・三次利用されてきた。P249の記述は、思うに新潮の先走り記事のフォローではないか。これほど劇的なシーンなら前半のクライマックス、先の「衝撃の電話」の章にドーン!と載せるはずだ。それを最後の方にコチョコチョと申し訳け程度に書いている時点で不自然だ。先に誤情報を喧伝させた新潮への「ごめん許して、一応書いとくから」・・・ではないのか。

BBは、5月頃に大枠のストーリーができて、それが7月の検察審査会向けの友人の陳述書の段階で骨格が完成し、友人たちはBB草稿を見ながら陳述書を記したと思っている。そして5か月後のBB出版の段において最終的な校正がなされた。空港のシーンは、いづれかの段階で「これはマズいよね」「作り込みすぎたな」ということになり、「でも新潮には言わせちゃってるしね」で、目立つ位置から日陰へと移動されたのだと私は思う。

伊藤裁判ではノンフィクション「真実はここにある」と謳う著書BBで「客観的事実」として記載されている内容の根拠を、また新潮社裁判では「空港での逮捕劇」のソースが徹底的に追求されなければならない。無論、刑事捜査ではすでに判明している事柄だったとしても。

新潮の雑誌版には、ご丁寧に逮捕中止後の警官の心情が切々と綴られている(笑)

本来なら即刻現場を退避すべきところ、やり場のない悔しさを抱えて署に戻れるほど図太くはない。ヒラメみたいに生きたかったわけでも、死体ぐらい出なきゃ警察は動かないってことでもないが。

おーおー、サラリーマンの悲哀に訴えてくるじゃないか(大笑)原案は清水さんだろ?逮捕してほしーよ(笑)