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「主戦場」裁判 傍聴記

2021年9月9日(木)13:10~東京地裁712号法廷にて、主戦場裁判の口頭弁論を傍聴してきた。別名「商業利用?聞いてないよ」裁判です。

先着順の傍聴券ナシ。21席で2~3名があぶれたもよう。原告側は第9準備書面まで、被告側は第4準備書面まで提出済みで、そろそろ結審なのかもしれない。

原告席には山本優美子氏(なでしこアクション)、藤木俊一氏、藤岡信勝氏および弁護団が、被告席は『主戦場』を映画初監督した日系2世、出崎ノーマン幹根氏およ弁護団が占めた。今回は原告側の3名がそれぞれ原告側・被告側の代理人の双方から尋問を受ける。

■ 山本優美子氏

トップバッターは山本優美子氏。長身でスレンダーな躯体にフィットした黒のワンピにパールのネックレスが清楚。髪を綺麗にまとめ、背中をピンと伸ばした凛とした姿勢が印象的で、質問への回答もよく通る声ではっきりと明快。伊藤詩織氏の何を言ってるか分からない録音を読んだ直後だったので余計に対照的でした。

2016年6月11日、撮影は山本氏の母校でもある上智大学四谷キャンパスにて行われた。所要時間は2時間半ほどで、「映像での卒論は珍しいですね」などと会話。撮影クルーは出崎のほか、外国人男性と岡本さんという女性の計3名。山本氏は岡本さんと「なでしこアクション」について少し会話をした。出崎とは計2度面会している。

出崎が主張する「承諾書」については、詳しい説明はなく、写しも受け取っていないとのこと。

藤木氏、藤岡氏も一貫して明確に述べたしたように山本氏も・商業目的とは聞いておらず・卒業プロジェクトで学術的なもので・両論併記で公平に、と聞いていた旨、よく通る声を法廷に響かせた。

甲37号証(山本氏ら作成によるパンフか何かだろうか?)について、山本氏はRevisionistとの呼称がレッテル貼りで、いかに危険なものかを訴えるために作成したと説明。被告代理人は山本氏がアメリカで「反日プロパガンダに対して今日本人は何を~」のタイトルの集会に参加したことを挙げ、「反日プロパガンダ」とはレッテル貼りではないのかと質問したが、山本氏はタイトルは主催者側の決定によるもの・・・と回答。

その他、映画で出崎は「慰安婦20万人説」を主張しているか等の質問が被告人側から出たが、直接の言明はなくとも匂わせは随所にある。

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本作は学術的レベルに達しているかと問われた山本氏は、「まったく達していない」と答えた。「学生だったから(親切に)対応した。学生でなければ同じような対応はしなかった」とも。

山本氏が最後に述べた「こんなことがまかり通れば、学術に対する信頼が崩れてしまう。」との言葉が印象的だった。右派は常々、眼前のイシューだけでなく、日本の未来を遠望しているものですね。それについては筆者のテーマであるノリシオ裁判(伊藤山口裁判)も同様なので殊更心に響いた。ノリシオも一人の男性の「冤罪」にとどまらず「こんなことがまかり通れば、日本社会がおかしくなってしまう」という危機感が原動力になっているから。

この裁判も、日本社会をおかしくするような「悪例を作ってはいけない」という意味で、より普遍的な意義を持つものだと再確認。

■ 藤木俊一氏

開廷前に、なかなか藤木氏の姿が見えずドキドキ不安。4分前になって余裕で現れた藤木氏はTシャツにサッカー生地の清潔そうなボタンダウンを羽織った軽装。私のかつての(ものすごくデキる)上司がそうだったのだが、とにかく時間を無駄にせず常にギリギリ。小心者の私をやきもきさせたものだが、でも常に間に合ってしまうという。特に気負わず平常心で、こういう場に慣れている雰囲気だ。胆力!

藤木氏も、これは修士論文の代わりに制作するドキュメンタリーだと聞かされており、(ありがちな)西側メディアに偏ったものではなく双方の意見を併記するやり方だとの説明を受けていた。

藤木氏は大学生の研究を助けるべく協力を快諾。インタビューのあと、車に乗せてファミレスで食事までご馳走したそうだ。後日、出てきた作品では”Revisionist”のレッテルが貼られていた。

出崎から送付されてきた「承諾書」は、出崎側の便宜を一方的に図るものであったためサインを拒否。代わりに自作のリバイスバージョン(藤木氏による修正版)を送付して合意に至るも、その内容すら結果的に守られなかった。公開前に(作品を)見せるという約束も「情報漏えいの関係で見せられない」と言ってきて藤木氏の出演部分のみの確認を求めてきた。編集内容に異論があればcreditするという約束も反故になった。藤木氏は静かに「だまされた」と述べた。

商業目的なら最初から拒否していた。出崎に許したのは「飽くまで学校に提出する範囲のみ」だ。登場人物の構成は右派が極端に少なく、先に右派の撮影を行って、それに対して左派に反論をさせる作りだ。藤木氏の見解に対して吉見義明氏が反論し、藤木氏に再反論の機会は与えられていない。

「極端なフェミはブスばかり~」の文言に突っ込まれていた(笑)が、切り取らずに全文を開示せよと藤木氏は応酬。

最後の原告側代理人の質問がスマートで、「櫻井さんの植村裁判の結果はどうなりましたか」「性奴隷説が裁判で認められた事例はありますか」の質問に、「ありません」と答えが返るや否や「質問を終わります!」。余韻の残し方にプロフェッショナルを感じた。

■ 藤岡信勝氏

紺色のスーツ姿の藤岡先生は、声に張りがあって動画で拝見するよりも若々しい印象でした。出崎と出会ったのは、自著の出版記念パーティーでのこと。『国連が世界に広めた「慰安婦=性奴隷」の嘘―ジュネーブ国連派遣団報告』は2016年5月29日発売だ。

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会場で、山本優美子さんの口利きで出崎とは会釈した程度。その後しばらく経った同年8月に出崎よりメールあり。メール受信してからも(返信せずに)しばらくは放っておいたところ、今度は「つくる会」経由で再びメールが来た。

その時にも、①卒業制作であり、②共同研究で、③ビデオドキュメンタリーの形式、と聞いていた。出崎は3名で「つくる会」にやってきて、9月9日にインタビューを受けたが、後に「契約」と聞いて内心、立腹して拒否した。

立腹の理由は、その約半年ほど前に英BBCの取材を受けた経緯があり、後に提示された契約書には先方に都合のよい内容しか書かれてなかったので、(受けた取材そのものを)拒否した。結果的に藤岡の部分は番組に使用されなかった。

出崎は、藤岡氏が拒否した数日後に、再度藤岡宛にメールを送信し、やはり藤岡のパートは必要なので何とか署名してくれないかと懇願したが、藤岡は無視していた。次に出崎は別の条件をつけてきたが、それも無視。そこで出崎は「藤木さんとかれこれこういう合意をしたので、これならどうか」と食い下がってきた。

見ると、(藤木氏によるリバイスバージョンには)取材を受ける側の権利も明記されており、藤岡氏は藤木氏の人柄や、海外とのビジネス交渉経歴等の手腕を信頼していたため応じることとした。内容は藤木氏が述べたとおり、作品を事前に見せることや、異論あれば作中にただし書きを入れること等が合意されていた。

東大、拓大でも教授経験を持つ藤岡氏が述べるところによると、そもそも上智大学には修士論文用に指導教授名が最上部に書かれた書式が存在するはずであるのに、出崎は一切示すことはなかったという。藤岡氏は(指導教員であった)中野晃一の名があれば、一切の協力をすることは無かったと明言した。また、上智大学に苦情を申し立てると、出崎の代理人から返信が来る始末。

中野晃一の名は複数回出てきており、最後の〆がこれまた印象的だった。荒木田(?)弁護士、好きw

原告側代理人:中野晃一氏とはどういう方なんですか
藤岡信勝:「赤旗」の元旦版で党首と対談するような人です
原告側代理人:尋問を終わります!

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尚、wikiによれば中野教授の赤旗への寄稿は多数回に及ぶようだ。2020年元旦一面特集の志位和夫委員長との対談タイトルは「文明を壊す安倍政治と決別する「覚醒の年」にする」だった。

藤岡氏の「国家は謝罪しない」という発言を巡って、被告側代理人との間で、一時、ホロコーストや米の戦時日系人収容を含めた学術論争じみた議論が始まる気配だったが、裁判とは趣旨を異にするため藤岡氏により打ち切られた。

■ 雑感

出崎の様子は常時、平常どおり。身長は160cm代くらいだろうか、背の低さに驚いた。出崎は、途中から欲が出たのか?それとも初めから騙す気だったか? 学生だからと親切に協力した方々・・・しかも並いる大御所たち・・・中にはご飯までご馳走した方もいて・・・人の親切に対して約束を破っただけでなく、”Revisionist”のレッテルを貼って晒す。これは慰安婦論争以前に、人としてダメですわ。こういうことしちゃいかんですよ。青少年の育成の意味合いにおいても、模範的な判決を求めたい。

何度も出てきた"Revisionist”の呼称。植村裁判の記者会見で、櫻井よし子さんが"Leading Revisionist"と(不名誉にも)呼ばれたことが過る。藤岡先生の口から出た「超限戦」の言葉もタイムリーだった。まさに!

余談だが、原告側3名の全身からオーラが出てた。やはり日本の名誉を背負って、切った張ったの世界でやってる人は緊張感が違うんだなー。彼らに比べれば私がやってる事(ノリシオ裁判の検証)など子供だましのようなものだけれど、私ごときでも「訴える!」で脅されるんだからね(笑)大先輩たちの暗闘に比べれば脅しの内容が下らなさすぎるけど(笑)

この裁判は特別に追いかけてはいなかったけれど、勝たねばならない裁判には違いない。yngwieさんのツイートでたまたま口頭弁論の日程を知ることができ傍聴できました。藤木さんから著書にサインも頂けました❤ yngwieさん、告知をありがとうございました!

*次回は、9月16日(木)に出崎の尋問が予定されています。