見出し画像

入院12日目


 トコトコ…ガシャン、ゴロゴロ、ダンッ、ティロリロリン♪

 0時ごろに寝落ちするも、2時には例の物音でパッチリと目覚めてしまう。これまではどんなことがあっても寝続けられる鈍感力を誇っていたのだが、何が影響してこれほど過敏になってしまっているのかは分からない。

 仕方ないので、そのまま廃液交換が終わるまで見届けた。カーテン越しだから何も見えないけれど。

 窓際の爺さんも大変だな。連日、真夜中に起こされて。


 僕のベッドだけ少し通路側に飛び出していて、横切る際に皆ぶつかっていく。それでも当然起きる。まあ、今夜はあの可愛らしい看護師さんが体当たりしてると思えば腹も立たない。朝、元気だったらベッドをちょっとだけ動かせばいいだけの話である。もう倦怠感も抜けたのだから、いつまでも他力ではいけない。


 完全に起きてしまって、5時までゴロゴロしていただろうか。6時の検温でまたシャキッと目覚める。特に眠気もないのでそのまま活動することにした。どうせ昼寝もするし。


 ここからの入院生活は、来週の腎生検まで特に面白いトピックもない(と信じたい)。だいぶ心も身体も元気になってきたので、ベッドの上で本を読んだり、資格の勉強をしたり、ネトフリを観たり、このように文章を書いたりしている。それらすべてを書く義理も需要もないので、ここからはじゃんじゃん割愛して短い記事にしていく。


 ひとつ、特筆すべきこととしては、心電計を外す許可が下りたこと。これでとても大きなストレス要因から解放された。

 最初、ぶっきらぼうな看護師さんから突如外されたときはどこかに連れていかれるのか(外来受診などの際は一旦外してもらえる)と思ったが、ステロイドや抗がん剤の投与から随分と経過したため、主治医の先生がOKを出してくれたらしい。

 心電計のテープが外れたと、夜中に訳も分からず何度も叩き起こされたのを思い出す。なにより嬉しいのは、電話などでエレベータホールに出向く際もいちいちナースステーションに許可を取る必要がない。こっそり売店も行けてしまう、いまのところ行く用事はないけれど。


 …これで晴れて自由の身だ。あとは点滴のルートさえ外れれば、そのまま病院からスキップで抜け出して帰れそうである。

 このあとも早速、意気揚々と肩で風を切ってエレベータホールまで電話しに行く。日本シリーズは神戸の屋外球場に舞台が移り、吐く息も白くとても寒そうだ。僕もエレベータホールから少しだけ窓を開けて、水面の金魚のように外の空気を吸ってこようと思う。


 脈略はないが書いておきたいこととして、とにかく、朝昼晩の飯が美味い。特にお昼の鶏肉のトマト煮みたいなのは心から感動した。

12_昼食

 ガーリックが利いていて、ちゃんとしょっぱいのに、塩分とたんぱく質は制限されているという。退院後の食事制限の参考にしたいから、マジでレシピを知りたい。


 あとは、一番廊下側の爺さん、西村さんと仲良くなった。コロナ対策で患者同士の会話は原則禁止なのだが、昨日は風呂の予約枠が前後だったのもあり「上がったよ~」とか「シャンプー使う?」とか、いろいろと親切にしてもらえた。僕もそういう関わり合いはむしろ好きなのでしばらく話していたら、廊下で会うたびにアイコンタクトを送り合う仲になった。

 右隣も新しい患者で埋まったが、いまこの四人部屋で僕が来たころからいるのは一番廊下側の西村さんだけだ。

 すぐに大事な薬をなくして看護師さんを困らせるし、耳はかなり遠いが、可愛らしい言動で憎めない爺さんである。もし僕が先に退院することがあれば、もちろん挨拶に行かせてもらおうと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?