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入院6日目


 昨日は消灯後も煌々とテレビを光らせながら、引き続き日本シリーズを観ていた。右隣のカーテンからもテレビの光が漏れる。結局皆みているから部屋全体がぼんやりと明るい。結果的に吉田正尚のサヨナラ弾でオリックスの劇的勝利。最後まで観れてよかったと思う。

 11時ごろに一度寝落ちするも、3時にパッチリと目を覚ましてしまう。尿の量を計測し、逡巡を繰り返した結果、清水の舞台から飛び降りる覚悟で”自慰行為”をすることにした。数日前はエロ動画を観ていただけで、実はこれまでの入院生活で一度も手淫をしてこなかったのだ。これでも真面目に頑張ってきたのである。

 そろそろ夢精が怖くなってきたし、これからもし尿道カテーテルが入るとなった場合、カテーテルオナニーというのもオツなのかもしれないが、そこまでアブノーマルに開拓していくつもりもいまのところない。ならば、24時間蓄尿も実施していないこのタイミングしかないのではないか、と考えた。

 こっそりトイレで果てたあと、これが不思議なほどぐっすり眠れた。6時半まで一度も周りの物音に起こされることなく、まるで実家のような安心感だった。


6_朝食

 今日からステロイドが服薬になり、朝食時にプレドニン5mg 6錠、昼食時に4錠飲んだ。ステロイド投薬中は副腎のステロイドホルモンをつくる力が弱まっており、投薬を急にやめてしまうと身体中のステロイドホルモンが不足状態になり最悪の場合は死に至ったりと大変なので、こうやって徐々に減らしていくとのこと。この錠剤がとても苦く、昼食時は少しゼリーを残しておいてお薬飲めたね的な工夫をしたら幾分よかった。

 今日の日中の看護師は島田珠代を大人しくした感じで、自身も最近まで腎臓の病気を患っていたとのことから、患者への心遣いがとても行き届いていた。お背中を拭きましょうかと出血大サービスの提案もあったがそれは丁寧にお断りしておいた。身体拭きの間だけ心電計を一時的に外してもらえて、じゃあ昨日も一瞬外してもらえばよかったなと思った。


 ふと机の引き出しを開けてみるとQRコードが出てきた。洗濯機の現在の使用状況がわかるアプリへのリンクだった。

6_洗濯機使用状況確認アプリ

 確かに、これだけの患者がいて洗濯機が一個しかないのであればこのようなアプリはあって然りだろう。なぜこの存在にもっと早く気づかなかったのだろうか。

 日々、遅々として進まない脱出ゲームのような生活。「使用可能」との表示になっても、向かってみると先客がいる。何度かトライして、念願叶ったのはもう夕方の15時ごろだった。


 窓際の爺さんは、昼食までのんびり食べていたが、息子が迎えにきたと夕方には退院した。窓際に移れないか確認してみたところ、ベッドコントロールは看護師の範囲外だから明日確認してみるとのこと。

 家族からの差し入れ(将棋セット)と、溜まりに溜まった洗濯ができたことと、片方だけでも病床が空いたからか、それとも薬の副作用か、これは興奮して熱が出るだろうなと思っていたら案の定37度6分だった。小学生かよ。寝る前にも熱があったらもう一回PCRやるぞと脅されたので、大人しくアイスノンで頭を冷やしている。


 情緒が安定しない。昨日はイライラしていたが、今日は高揚している。あとは尿の量が比較的少なくて、焦ってお茶をたくさん飲んでいる。

 明日は抗がん剤の投与。

 もともと自覚症状がないため、何が作用して何の影響を受けているのかが全くわからない。わからないから、考えることもない。いまは何か変化があればこと細かく伝えて、ひたすら身を委ねるだけである。

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